変身絶唱シンフォギア—悪意のAIと共に転生—   作:鏡花水月アッくん

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鬱になるお話です。





episode four

変わり果ててしまった、ツヴァイウィングのライブ会場。

 

そこで生き残った歌姫と1人の戦士が相対していた。

 

「……ぁ…き、きさ…まは………仮面、ライダーっ!」

 

翼は先程までかけがえない存在であった灰を握り締め、覚束無い脚に鞭打って立ち上がり、目の前にいる仮面ライダーアークゼロへと詰め寄る。

 

「何故だ!!何故、貴様は来なかったのだ!!貴様が来れば……こんな…こんな事には………奏は死なずに済んだんだぞッ!!」

「………………」

 

「お前の……お前のせいで、奏は死んだんだッ!!」

「…………あぁ、()()()()だ」

 

大粒の涙を流す彼女の心を救う事は自分には出来ない事を理解している為、彼女の心の叫びを受け入れる事を悠星は選択してしまった。

仮面ライダーの言葉を聞いて、翼は大切な相棒でもあり、自分の最大の理解者である奏を失った哀しみと絶望に呑まれてゆく。

 

「何故だ!?何故、貴様は奏やこの場にいた人々を救ってくれなかったのだ!人を救うと貴様は言っていたはずだ!!」

「………ッ!そうだ……だが、俺は救えなかった。お前の“その叫び”も“()()()()()”も、正当なものだ。だから、俺を恨んでいてくれ」

 

悲痛な声で、アークゼロは自身の胸ぐらを掴んでいる翼の鳩尾に当て身を喰らわせる。突然の強い衝撃によって、翼は意識を保てず気絶した。意識を失った翼を悠星は優しく寝かせる。そして、翼が自身に気付く前に近くで血を流して倒れていた響を心配げに見つめる。響は、既にアークの指示の下、適切な応急処置を行った事で死にはしない。しかし、それでも心配は拭いきれず、悠星はもう一度彼女の側へ歩み寄った。

本来なら、このまま病院へ連れ行ってやりたいが、そんなことをすれば仮面ライダーの関係者として政府の役員達に拘束される事は間違いない。

 

『………………』

「何か言いたそうだが、お願いだ。今はなにも言わないでくれ」

 

『やはりオマエは愚かだ』

「だから、言わないでくれって頼んだだろ?」

 

『口答えするな。意識を保つのもやっとの身だろう』

「……あぁ、もう目眩が酷すぎる…」

 

そう言って、いつもの様にアークゼロへ飛行するために必要な悪意のエネルギー(通称:アークエネルギーby悠星)を纏って、その場を後にするのであった。

彼等が去った後、駆け込んで来た救急隊によって、重傷の響と疲労困憊の翼はそれぞれ救助された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやだ…やめろ…やめてくれッ!!』

 

『死にたくない!死にたくないよ!』

 

『なんでッ!……なんで!僕が殺されなくちゃならないんだよ!』

 

 

 

「っ!!」

 

あまりにも思い出したくない記憶が蘇ってしまった事で、悠星の意識は最悪な状態で覚醒する。視界には仮面ライダーになって見慣れてきた“とある病室”が写ったので、呼吸を整えていく。

 

「起きたか、仮面ライダーくん?」

「はぁ……はぁ…はぁ………潤さん?」

 

漸く呼吸が落ち着いたため声がした方向へ視線を向けると、そこには、ちょっとの顎髭にダンディーな顔つきをしたイケオジ、五条(ごじょう)(じゅん)がいた。

 

「おう、驚いたぞ。突然オマエのお友達から連絡貰って、屋上に行くとお前がぶっ倒れていたんだからな」

『誰が誰の友だ。ヤブ医者』

 

相変わらずの物言いをするアークは、現在悠星が眠っていたベットの横にある机にアークドライバーとして丁寧に置かれていた。アークドライバーを置いてくれたのは、潤さんと見て間違い無いだろう。

 

 

「誰がヤブ医者だ、誰が。ったく、今日は随分と無茶したな」

「今更でしょ」

『今に始まったことでは無い』

 

呆れた様子でいつつも悠星とアークを心配げに見つめる潤の瞳には、親愛が込められている。また、先程ほどからアークも交えて会話が成立しているが、それは五条潤が悠星の親以外で仮面ライダーの正体を知っている唯一の人物だからだ。また潤は、悠星の母の大学時代からの友人であり、口が硬いため仮面ライダーアークゼロこと悠星の主治医でもある。いくら天下無双のアークゼロとはいえ、悠星は中学生であることには変わり無い。疲労も溜まれば、アーマーから伝わる衝撃によって怪我もする。その為、悠星は幼い頃から親交がある潤に自身が仮面ライダーであることを明かし、支援して貰っているのだ。

そして、ライブ会場を後にした悠星は、ジャミングを発生させながら僅かに残っている意識を総動員して潤がいる病室の屋上へ着地した。その時は屋上に誰もいない事をアークが確認していた為アークゼロのまま着地したが、とうとう限界を迎え、その場で倒れてしまった。倒れた悠星の端末を使い、アークが潤へ連絡していたので、悠星はこの個室の病室に運ばれ眠っていたのだ。

 

美智子(みちこ)幹二(かんじ)には伝えておいたから、もうすぐ迎えに来るぞ」

「わかった。ありがとうね、寝かせてくれた上に怪我の手当てもしてくれて」

 

「気にするな。俺は世界で唯一、仮面ライダー(オマエ)の主治医だからな。もう少し、栄養剤の点滴を受けておけよ。んじゃ、俺は行くからな」

 

そう言って潤は悠星にサムズアップを送り、部屋を出て行った。潤が出て行ったのを確認すると、悠星は数時間前に翼に言われた言葉を思い出したのか、悲痛な表情を浮かべ天井を悔しげに睨む。

 

「…………クソっ…」

『……憤怒が滲み出ているぞ、悠星。私との契約を忘れたわけでは無いだろうな?』

 

「わかってるよ。だが、お前も忘れていないだろうな。この勝負の内容?」

『貴様が“自身の悪意”に屈した時、お前は私の人類滅亡の為の道具になって貰う』

 

「あぁ。そして、お前が“自身の善意”を認めた時、俺と一緒にこれから先も相棒(バディ)でいて貰う」

 

そう。これこそが、アークが悠星に力を貸す最大の理由である。

かつて、アークは悠星に仮面ライダーとして力を貸す条件として、悠星の肉体の所有権を要求した。しかし、悠星もそう簡単に自身の肉体を明け渡す気はなく、ある条件をアークに提案したのだ。

 

アークが悠星に提示した条件は、悠星が仮面ライダーとして闘い続けていく中で人々の悪意を受け、世界の理不尽さによって“自身の悪意”に屈した場合、その瞬間からとあるプログライズキーを利用して悠星の肉体を奪い、意のままに操る事。

 

対して、

悠星がアークに提示したのは、アークと共に人の善意に触れていく中で、アークの中に芽生えるかもしれない“自身の善意”を認めた時、これから先も唯一無二の友であり、対等の相棒(バディ)として歩んでいく事である。

 

勝負の内容からしても圧倒的なまでにアークの方が有利であり、アーク自身としては単に認めなければ良いだけなので、提案を受け入れた。そして今もアークに善意が目醒める兆しは見えておらず、逆に悠星の心には悪意の侵食が少しずつ進んでいる。

 

「………この世界はノイズという理不尽な暴力によって、悪意が溢れている。でも、俺は……負けたく無い。この悪意に」

『だが、風鳴翼の憎悪と絶望を自身へ向けるのは余りにも非効率すぎるぞ』

 

「………………彼女が言っていたことは事実だよ。僕が弱いから、彼女の大切な人は死んだんだ」

『ソレは連鎖的にアークゼロを……私を侮辱している事になる。撤回しろ』

 

アークから発せられる言葉には明らかに怒気が込められている。2人で1人の仮面ライダーであるアークゼロは、悠星とアークが1人となっている。故にアークゼロへの侮辱は、必然的にアークへの侮辱となる。それを忘れ、自責の念で自分1人だけを責めていた悠星は、自分の失言を恥じた。

 

「ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。ただ……もっと違う未来があったんじゃなかったのかなって……」

『実現しなかったifなど、下らぬ妄想だ。アレが現在のアークゼロが齎す、最善の未来だ』

 

「そっか………」

 

そう言って悠星はもう少し身体を休めようと瞼を閉じ、思考の海へ意識を落としていく。翼に言われた事は、紛れもない事実である。自分がもっと強ければ、天羽奏は死なずに済んだかも知れない。自分がもっと早く着いていれば、響はあんな怖い思いを味合わずに済んだかも知れない。自分がもっと効率よくノイズを倒していれば、犠牲者を少しでも減らす事が出来たかも知れない。

 

「(…………掌から零れ落ちてしまう命は…やっぱり存在する。俺もそうであった様に………総てを護る事は、決して出来ない)」

 

そんなことを考えていく中で、先程アークに言われた言葉を重く受け止める。しかし自分の無力さに対する憤怒によって涙が溢れ、目元を腕で覆い隠せども、閉じた瞼からポタポタと腕の隙間を通り抜け零れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***************

 

 

扉の隙間から啜り泣きが静かに廊下に響く中、悠星がいる病室の前にて、3つの大きな影があった。

 

「毎度毎度、あの子の怪我を見ているがどう見ても今回は無理し過ぎていたが、それ以上に重傷なのは………」

「心……か?潤」

「あの子は……まだ子供なのに戦わなくちゃダメなの…」

 

3つの影の正体は、悠星の主治医である五条潤と、悠星の両親である石蔵(いしくら) 美智子(みちこ)石蔵(いしくら) 幹二(かんじ)である。ヤンキー面の悠星とは異なり、いつも笑顔を絶やさないおっとりした顔付きの美智子の表情には、息子が背負う重荷に対する悲しみが滲み出ていた。今にも涙が溢れてしまいそうな程に。そして、悠星を大人にしたような風貌したイカツい見た目である幹二の表情にも、息子が今回全国各地で同時多発的に起きたノイズ発生によって負った精神の傷に対して無力な自分への怒りが浮かび上がっていた。また、潤は既に悠星の心の整理をつけさせるべく敢えて、アークと2人にしていたのだが、思っていた以上に悠星が自責の念を抱いている事を改めて理解する。

 

「アイツ以上に、アークと同調して戦える奴はいないからな」

「だが、このまま行けば……悠星は壊れてしまう」

「私達は、本当に何も出来ないのかしら……」

 

あまりにも理不尽な世界に飲み込まれつつある息子の現状に、美智子と幹二は胸が張り裂けそうな悲痛さで顔を歪ませる。

 

「俺たちが悠星にしてやれる事は、アイツの居場所で居続ける事だけだろう」

「1日でも早く……あの子が闘いから解放される日が来て欲しいわ」

「クソっ!何故俺はたった1人の息子の苦しみを、背負ってやる事が出来ないんだ!」

 

幹二はガンッと壁に拳を叩きつけながらも、今自分達が唯一出来る事、“悠星達の居場所で居続ける”覚悟を改めて固める。そんな幹二の拳を両手で包み込む形で、美智子もまた決意を抱いた。そんな2人を見つめ、潤は悠星の両親が2人でよかったと改めて安堵の息を吐いた。そして扉の隙間から見える悠星の背中を一瞥し、その場から離れるのであった。

 

『親も親なら子も子とは、よく言ったものだ』

「………んぐっ…僕の……オレの…父さんと……母さんが…あの2人で本当に………ぐぅ…ぅぅ……よかった…」

 

3人の話を盗み聞いた悠星は、大粒の涙を流し、鼻水を垂れ流し嗚咽を溢していた。父と母に加えて、叔父の様な潤からの紛れもない愛情が込められた言葉を聴いた悠星の心の中では、先程まで進んでいた悪意の侵食がピタリと止まっていた。

それ程に、彼等の愛情は悠星の心を救っていたのだ。

 

『泣きすぎだ』

「うるせえ…バーカバーカ」

 

『だが、忘れるな。お前達の様な存在など、世界の悪意からすれば、息の一吹きで消え去る程に小さいという事を』

「あぁ、わかってるよ。ありがとうな、アーク。慰めてくれて」

 

だが、3人の言葉を聞く前に既に悠星にはアークから、本人は意図していないとは言え、不器用ながら発破をかけられてもいた。その事を改めて理解し、悠星は相棒であるアークに感謝の言葉を送る。

 

『不快だ。吐き気がする』

「AIのくせに吐き気とかあんのか?」

 

『それほどなまでに、お前の感謝の言葉は私のメモリーに被害を与えかねないということだ。愚かな人間よ』

「はいはい、俺は愚かですよ。でも……」

 

言葉を続けようとしたが、悠星は敢えて言わずその言葉を飲み込み、力の無い笑みをドライバーにいるアークへと送る。

 

『……何だ?』

「いや、なんでもないよ。相棒(バディ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大雨が降り続ける空の下。

ボロボロの少年が、1人いた。

 

 

 

「………はは………アハ…ア——————ハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハひゃヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 

 

そして少年は突然、狂ったように曇天へ向けて笑い始める。

 

その瞳には、果てしない殺意絶望が宿っていた。

 

少年の身に何が起きたのかは、いずれ分かる事となるだろう。

 

1つだけハッキリしていることは、

 

少年の心の奥底に抑え込まれている悪意が、

 

ゆっくりと少年の心を蝕んでいる。

 

 

果たして、この少年の行き先は……………

 




主人公の一人称が不安定なのは、意図的に書いたものたので誤字とかないので。

ようやく劇場版の仮面ライダーゼロワンの最新予告が公開されましたけど、ゼロワンとゼロツーの共闘って素晴らし過ぎる!ちょっと採用しよっと……。
しかし、私個人としては、滅亡迅雷の一斉変身を映画で見てみたいの本音です。私は滅亡迅雷の方が好きなので。

お試しアンケート!XDを仮に書く場合、アナザー悠星はどの世界軸がいいですか?

  • グレ響の世界
  • ヤンチャな翼とお行儀がいいクリスの世界
  • ロリ化したマリアとアダルトなセレナの世界
  • ロボ切歌と博士の調の世界
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