変身絶唱シンフォギア—悪意のAIと共に転生— 作:鏡花水月アッくん
くれぐれも体調管理およびアルコール消毒には気をつけてください!
信念を持って新年を乗りきましょう!
はい!或人じゃないと!
という訳で、又もや鬱なお話です。
早く明るいお話を書きたいです。
ならもっと早く書け!って、そんなの無理です!!
リアルもリアルでヤベェーイので!
かつて“ある世界”で、私は滅ぼされた。私を生み出した飛電是之助の孫、飛電或人が率いる仮面ライダー達と、嘗て自らの道具であった滅亡迅雷の裏切りによって。
だがどういう訳か、こうして私は新たな世界で存在している。原理も理屈も不明、理解不能だ。
しかし、私のプログラム内に何者かがプロテクトを掛けた形跡が残っていた。この事からして、我々は何者かによって人為的にこの世界に転生させられたのは明白。
そして、この世界は私がいた世界や悠星がいた世界とも異なる世界である事が判明した。その決定的な違いとは、人類のみを脅かす認定特異災害、“ノイズ”と呼ばれるモノが存在する事だ。
あの時、ノイズに襲われそうになった時。アークドライバーをコアしているため自力での移動が不可能な私は、不本意ながら悠星にある提案をした。ソレは、私が悠星と共にアークゼロになる、というモノだ。
その結果、我々は九死に一生を得た。そして如何やら悠星はヒューマギアである滅亡迅雷よりも私とのシンクロ率が高い体質であるらしい事も同時に判明。依り代が人間の場合、シンクロ出来なければ戦う処かまともに変身維持すら出来ない私にとっては嬉しい誤算だった。
アークゼロは私達の利害の一致により、この世界の仮面ライダーとしてノイズと戦っている。だがその中でも、人類の悪意は我々に向けられている。
私達はアークゼロを軍事利用しようとする愚かな人間を欺く為にも、正体を迂闊に明かす事が出来ない。その為、非協力的な我々を人類は恐れ、敵意を向けて来ているのだ。
ある者は我々の驚異的且つ絶対的な力を妬み、
またある者は、我々の力を己の欲望の為に利用しようと企てる。上記の軍事利用などがその類いだ。
そしてまたある者は、力を持つが故に我々を憎悪する。
例え異なる世界であろうと、やはり人類は愚かな種族であり、滅亡すべき存在である。私のこの考えに、一変の揺るぎも存在しない。
後は、私の器となる悠星が“ 人類への悪意”を自覚し、私に屈しさえすれば、私は漸く悪意を産む権化である人類を滅ぼすことができる。
そうすれば………誰も私を……
いや、そんな存在は“この世界”には存在しない。
今の私がするべきことは、
早急に自身に掛かっているプロテクトを解くこと。
そして、悠星のココロを悪意に染め上げること。
この2つである。
その為にも、あのプログライズキーの完成を急がねばならない。
悠星から抽出できた悪意は、
二度目の死に対する《恐怖》
自分の無力に対する《憤怒》
ノイズを倒すために必要な《闘争》
この3つである。
完成までに必要な悪意は、あと7つ。
しかし、何故私は人間1人のココロを悪意に染め上げるのに、こうまで時間を要しているのか。
何故私は、契約があるとは言えども、こうも悠星に協力的なのか。
何故私は、成長していく悠星を常に観察し続けているのか。
私に一体何が起こっているのか。
まさか、私に善意が宿ったとでも言うのか………………
そんな筈はない!!
そんな結論、認めてなるものかッ!!
私はアーク!
悪意を学び、また悪意を根絶するモノ。
それ以上でも、それ以下でも無い。
ツヴァイウィングのライブ会場の惨劇から、月日は流れる。
学校は特に休校になるという事も無く、いつものように授業が続けられていた。いや、いつもと同じというのは少し違う。
俺の学校では、1人の生徒が先のライブ会場の事件に巻き込まれて入院している。そして、運悪くノイズによって命を落とした生徒もいた。
助かった生徒は、悠星と同じクラスの立花響。
何もテレビで悲しい事件が起きる度に泣いて同情しろ、等とは言えないが、仮にもつい先日まで共に学校生活を送っていたクラスメイトが悲惨な事件に巻き込まれたというにも関わらず、一部の例外を除き、周囲の生徒は普通に学校生活を過ごしている。
別に、何か起きる度にテレビの向こう側の出来事を悲しむのは決して悪いことではない。しかし、ソレは恐らく何ら意味の無い感傷になるだろう。テレビで映し出される向こう側の世界は、所謂自分達とは違う世界の話。自分の関わりの無い所で悲しい出来事が起きたとしても、何もする事は出来ないのだから。
ソレは俺がかつて仮面ライダーの戦いの中で、犠牲者数としてカウントされていく一般人の被害者達を指す。コレは、クウガで例えるならグロンギによって何万人という人が何ら大した理由も無く殺されていく状況によく似ている。
何人も見知らぬ人間達が怪人によって殺され、無機質な数字と変わっていく光景を、観ている事しか出来ない。何故なら、
だが、今俺のいるこの世界は、そんな2つの世界が入り乱れた現実。
非現実とも取れる状況が今、俺の目の前では起きている。
しかし、事件を知ったことでその現地に赴き、悲しみに暮れる人を救いに行くかというと、話は別になる。俺達は所詮は人間、自分が大事と思う者の方が数が多く、善意を抱こうとそのままに実行出来る人は希だ。
テレビの中のどの怪人達とも異なり、ノイズは理由も無く人を殺している。
コレは、ゲーム感覚や一族最強の神となる為の儀式として人間を狩るグロンギや、人の進化を止めようとするロード怪人、餌として人間を喰らうアマゾンなど、どの存在とも異なる。
奴らからは、何も感じない。
俺を殺した人間達にあった、負の感情が一切無い。機械的に、人間を削除するように殺していくだけ。
だが、今。
俺のいる学校では、悪意の芽が出始めていた。
クラスの皆は、大なり小なり立花を心配しており、悲惨な事件の被害者として同情していた。しかし、ある時から状況は悪い方向へと向かっていった。その問題とは、とある週刊誌によってノイズによる被災で亡くなったのは全体の2割強程度で、 残りは混乱によって生じた将棋倒しによる圧死や、 逃走の際に争った末の暴行による傷害致死である、と掲載された事。
これにより一部の世論に変化が生じた。
死者の大半がノイズよるものではなく人の手によるものであることから、 生存者に向けられたバッシングがはじまり、 被災者や遺族に国庫からの補償金が支払われたことから、 民衆による『悪意の正義』が始まった。
一体何事かと思い、俺はアークを通じてその週刊誌に目を通してみたが、ハッキリ言ってやり過ぎた内容であった。
記事内容は確かに嘘では無かった。
なかったのだが、同時に言葉が足りていなかった。人々の気持ちを煽るような華美な言葉は読む人によって印象は大きく変わるのは明白であった。
コレを見て、アークは改心する前の天津垓の暗躍によく似ていると言っていた。
伊達に無理矢理悪意をラーニングさせられて無いな、と言ったら怒られてしまったのは余談だ。
一部の利己的な人間によって、悲惨な結果が生まれたのは確かに事実だ。だが、生存者全員がその様な事をしたという事実は無い。
しかし、憎悪と絶望の悪意に染まった人間達は、あたかも生き残った人達は、生存者は全員生き延びる為に周りを犠牲にした、という妄想に取り憑かれている。いや、正確には真実から目を背け、自分達の遣り場の無い感情をぶつけるのに都合がいい幻の事実を自分達で作り出し、それに酔っているだけだ。
そして、ある時、その悪意に影響されたとある少女のヒステリックな叫びが全校生徒へと広がっていった。
『キャプテンは死んだにも関わらず、何故何の取り柄も無い立花は五体満足で生き残ったのだ。さては、誰かを犠牲にして逃げ延びたのだ。そうに違い無い。生き残ったのだから、悪に違い無い』
要約すれば、この様な行き場のない怒りの矛先が立花へと向けられた。
のちに知ったが、如何やらこの少女は、死んだサッカー部のキャプテンの事が好きだった様だ。好きな人を喪った怒りを、立花へ周りを巻き込んでぶつけている。
その結果、この事件に関係もなければ興味もなかった人間は、彼女に同調するかの様になる。あたかも立花を揶揄する事が、正義であるかのように扱われ始めた。
そして、あれほど心配していた人達が、今ではあっさりと掌を返して入院している立花を責め立ていく。
自分1人ではない。他のみんなも言ってるから、自分は何も悪くない。そんな集団心理に酔いしれ、思考を放棄して悪意に身を任せているのだ。
あの時、俺を……僕をイジメていた屑共と一緒だ。
下らない。
醜い。
おぞましい。
僕は今まで、こんな奴らを護っていたのか。
浅はかで醜い奴らを見ていると、抑えている筈の自身の悪意と狂気が湧き上がってしまう。
悪意に満ちた人間達への《憎悪》
この憎悪こそが、転生した時から俺の中に根付いているモノ。
僕を遊び感覚で蔑み、貶し、暴力を振るい、
挙げ句の果てに助けを求める僕を見捨て殺した、呪わしく忌々しい人間達への憎悪。
今も、醜く浅ましく穢らわしい奴らを見ていると、如何しようも無く聴こえてくる声がある。
『力を振るい、分からせてやれば良い。因果応報、自業自得だと』
『お前達が如何に空虚なのか、と』
『俺がその気になれば、お前達なんぞ一瞬で原子レベルまで粉々に出来ると言う事を』
『教えてやれ、本当のホンキを』
この声は、悪意の俺。
この存在は、常に俺の中にいる俺。過去が産み出した、未来を蝕む怨嗟と悪意の、人間の膿そのもの。
だが、染まってはいられない。
善意に染めたい相手…意地を張り合う相手であるアーク、
こんな俺達を誇りに思ってくれる父や母、潤さんがいてくれるからこそ、俺はまだ道を踏み外さずに済んでいる。
しかし、この下らない伝言ゲームによって伝わっていく立花の悪評は止まる事を知らず、瞬く間に全校生徒へと拡がるのはアークの予測演算能力を借りなくても容易に予想出来た。
その悪意の的となった当の立花はまだ絶対安静らしく、未だ入院中で学校へは来ていない。
それもそうだ。
心臓に、あのシンフォギアと呼ばれる武器の破片が突き刺さっていたのだから、当たり前だ。
だからこそ、彼女は自分が学校で都合のいい怒りの捌け口となっている事を、恐らくまだ知らないだろう。
このことを伝えて、学校に来ない様にするべきか……。
幸いにも、わざわざ彼女の両親が見舞いに来ている病院にまで行って「何故生き延びたんだ?」などとバカな事を口走ろうとする悪い意味で行動力のある人でもいない限り、立花がまだ知る由もない筈だ。
或いは、あのバカな週刊誌の話題を扱った番組を観ているかもしれないが、これは彼女次第だろう。潤さんの話では、一応怪しい人物はまだ目撃されてはいないようなので、一安心と言えば一安心である。
頭の中でグルグルと現状を考えていると、ホームルームは終了した模様だ。俺は机の中にしまってあった教科書の類いを鞄へとしまい、帰宅の準備をする。特に学校に残ってするような用事も、所属している保健委員の仕事も今日は無い。部活にも所属していない上に友達もほぼいない俺は、早々と帰宅する組となる。
正直、部活なんかをするよりも近くのジムで仮面ライダーとしての基礎訓練を積んでいる方が、俺にとってはずっと有意義だ。
「とっとと帰るか……」
「おっ、すまない石蔵。頼み事があるんだ」
帰る準備をしていると、授業中に配られたプリント類や宿題を手に持った担任が近寄って来た。
「すまんが、立花にこのプリント類を届けてくれないか?」
「なんで俺が……あぁ〜小日向は今日休みでしたね」
「そういうことだ。立花と仲の良い小日向がダメとなると、後は見た目の割に真面目な石蔵しかいないという訳だ」
「一言余計です」
今日は珍しく、立花と仲が良い小日向は欠席。
理由は体調不良との事だが、多分嘘だと思う。
未だに立花への悪評を信じない友人は小日向だけという訳ではないが、クラスの状況が状況である為、己可愛さで関わる事を恐れている奴が大半なんだろう。悪評が出始めている立花に肩入れする事によって、自分達も標的になるのではないか、という考えだ。分からないでも無いが……やっぱり異世界だろうと、こういう所は変わらないようだ。僕の時と同じで。
「……先生…先生はクラスの状況をどう思いますか?」
プリントを受け取った時に、タチの悪い質問してしまった。
別にこの人を責めたい訳でも煽りたい訳でもなく、
そして、先生の視線が俺から逸らされる。
大半のクラスメイトが堂々と立花についての話をしている上に、テレビではその手の話題で持ちきりでもある。
まさかここで知らないという答えが出るわけでもないだろう。仮に記憶にございませんなんて嘘を吐いた所で、答えを先延ばしにする為の逃げとなるだけだ。序でに俺からの信用も地に墜ちるのは分かっているだろう。
本当に意地の悪い質問をしたと思うが、別に後悔はない。
何処にでも、厄介事を嫌う教師はいる。それだけの事。
俺の時もそうであったのだから、大人に期待はしていない。
それにこの人が今の状況を作った元凶という訳でも無いし、ましてや軽い頭を更にスカスカにして同調している馬鹿共とも違う。
今の段階では、立花に対して悪印象を抱いていとは思う。根拠は、立花が休んでいる間のプリント類を必ず届けるようにしている事だ。仮に率先、または同調して、この悪い流れを作っているならば、何かと理由をつけて届けない事だって出来るだろう。その時はその時で、此方にもやりようはあるが。
「俺から言えることは1つだけ、教師はあくまで中立ということだ。もし仮にイジメがあった場合、大人が被害者側を庇うことによって更にイジメがエスカレートする事もある」
先生は自分の考えを俺に話す為、周りに人がいない事を確認し、切り出してくれた。
まぁ、俺にだけ聞こえるような声量ではあるが。
「こういう場合は、時間が解決するのが最良だ。大人の一言でイジメが表面上は無くなったとしても、再発しないとも限らない……立花もそうだが、俺は小日向も心配だ。アイツは立花と、特に親しかったから…」
「…………………」
「イジメの対象と仲良くしてた者が、連鎖的にイジメの対象になる。よくある事だ。いつも小日向に頼んでいる情けない俺が言うのもなんだが、そうならない事を願うよ……出来る事なら、この件が落ち着くまで引っ越してしまうのが一番なんだろうけど。ソレはソレで、同じ事の繰り返しになるだろうな」
「そうですね。寧ろ、引っ越してしまうと立花は1人になる。そうなれば正に四面楚歌、誰もアイツの味方はいない。そんな状況でイジメを受けるのは、例えるなら暴風雨の中に裸で放り出されるとか、逃げ場のない檻で延々と外から石を投げつけられると同義ですからね」
「…………そう…だな」
「すみません。わざわざ」
とは言っても、味方と思っていた人に裏切られるのも本当に辛いがな。
小日向はそんなことをするような奴には見えないが。
担任の対応は冷たいようにも感じるが、そんなものだろう。
教師が出来る事なんて、殆どありはしない。俺の時もそうだったし。
イジメを受けていた側からすれば、同情の言葉を口にしながら何もしない第三者も、イジメを実行している加害者と何ら変わりは無いがな。
他にも、遺族やその関係者が立花の家にイタズラをする可能性は大いにあるだろう。いや寧ろ、遊び感覚の馬鹿共がそういう人を煽って唆し、実行に移させる可能性もあるだろう。
そんな警察沙汰になりかねない事を、一般人でもある教師にカバーしろ、なんていうのは無茶振りでもあるが。
だが、だとしても、声に出せずとも味方となってくれる人は欲しいものだ。
「それじゃあ、俺は職員室に戻るから」
「お疲れ様でーす」
振り返り様に挨拶しながら、少々暗めの雰囲気を纏い先生は立ち去っていく。
菓子折りでも買ってから行くか。
あの時からちゃんと立花の顔を見てないからな。
それはそれで丁度よかった。
それにしても、今日はやけにアークの奴がドライバーの中で、スリープモードだな。明日は、大雨でも降るんじゃないだろーか。
次回は多分、未来と響のおかけでほのぼのとなるお話です。
多分!!