今、アタシは最高に興奮している。ガラスケースに展示された十八種類のジュエルが今、アタシの目の前に並んでその姿を輝かせていたのだ。
翌日になり、アタシは穴掘りおじさんの案内でナガノシティ博物館にお邪魔していた。それも、こんな若い女の子がどうぐとしてのジュエルに魅力を感じている、とのことでおじさんは機嫌を良くしていたからか、コネを使ってアタシをタダで博物館に入れてくれたのだ。
幸先の良い旅だ! そんなことで従業員に案内してもらい、アタシは念願のジュエルを拝むことができた。その姿はダイヤモンドの如く光り輝く宝石で、その色合いは様々かつそれぞれが未知の力を宿していると思わせる。大きさは手のひらサイズであり、頑丈な鉱物という外見でありながらも非常に脆いという性質から、その宝石の希少価値と輝きからなる儚さを感じさせた。
アクセサリーに使われたジュエルも、その取扱いは慎重にならなければならない。保管も厳重に行わなければいけなく、地震の震動が長く続いた場合でもその揺れでヒビが入るほどという。どうして、ジュエルはそんなに脆いのか。アタシはそれを訊ねると、従業員は慣れた調子でそれを説明してくれたのだ。
どうやら、ジュエルという宝石自体が、そういう性質を以てして生まれた鉱物とのこと。鉱物と言えば、頑丈でとにかく固い石の塊。そんな印象をアタシは持っていた。
しかし、ジュエルは厳密に言えば、宝石どころか鉱石にもあたらないと言う。じゃあ、ジュエルって結局なんなのか。それを訊ねると、従業員は自信満々な様子で、その真実を明かしてくれたのだ。
ジュエルとは、ポケモンの技エネルギーの結晶でございます。それを聞いて、アタシは余計にワケが分からなくなった。尤も、このワケが分からないという未知と触れ合う感覚こそが、楽しいと思える要素なのだが。
まず、技エネルギーの説明から入らなければならないだろう。
ポケモンという生物は、技を繰り出すための専用のエネルギーを宿しているという。例えるならば、ピカチュウが使う10まんボルトには、でんきタイプの技エネルギーが含まれていて、アタシのラルトスが使うテレポートには、エスパータイプの技エネルギーが含まれている、というもの。技エネルギーというものは、あるタイプの技が発生した時に生じる、その事象を技として成り立たせるための力。というのがざっとした技エネルギーの説明。
その技エネルギーという力がポケモンの中に存在しているからこそ、ポケモンは10まんボルトやテレポートという技を発生させることができる。ポケモンという生物は、この世界において唯一、技エネルギーを体内に宿し、それを力に変換して事象という形で発生させることができる特異的な体質を持つ生物なのだ。
……難しい。でも、何となく理解はできた。では、その技エネルギーの結晶とは一体なんなのか。それをアタシは訊ねると、従業員が続きを説明してくれる。
技エネルギーの結晶とは、ポケモンの内部に宿る技エネルギーが、結晶という固体となって形を成したもの。という。詳しく説明すると、本来であればエネルギーという目に見えない形で存在するその力が、何らかの働きかけによって凝固してしまったものが、技エネルギーの結晶と呼ばれるらしい。それは固体となるため、物体となり、質量が存在する。
で、その技エネルギーが結晶という質量のある塊となったものが、ジュエル。ということだそう。
今もジュエルの内部で輝きを放つこの光は、技エネルギーが活性することで生じる作用だそう。つまりジュエルという代物は、ポケモンの技エネルギーを閉じ込めた箱のようなもの、という認識でいいのかもしれない。
じゃあ、どうして宝石と呼ばれるのだろう。それを訊ねると、それはジュエルという代物が鉱山といった鉱石の中に紛れているから、という答えが返ってきた。なぜ鉱石にジュエルというポケモンの技エネルギーがまぎれているのかは謎だそうで、解明のために研究者が今も頑張っているとのこと。
それにしても、どうして脆いんだろう。というアタシの疑問に対しては、どうやらこのジュエル、砕けること前提でのつくりになっているというのだ。このジュエルは、砕けると周囲に大量の技エネルギーを放出するらしく、その放出された技エネルギーを浴びたポケモンは、そのジュエルの技エネルギーと一致するタイプの技の威力がグンと増すのだそう。
これは自然界でも用いられることがあるらしい。代表的な事例として、野生のボスゴドラがライバルのバンギラスと争い合っている最中、いわのジュエルを砕いて自身のストーンエッジの威力を上げながら戦っているところが目撃された。ボスゴドラはそれをいわのジュエルと理解しており、しかもそのジュエルと同じタイプであるストーンエッジを使用していたのだ。これには多くの学者が興味を示したらしく、野生のポケモンは、自然の知恵でジュエルという技エネルギーの概念を上手く利用している、という証拠にもなったそう。
ポケモン博士の娘ということもあるのか、アタシはその話をとても興味深く感じられた。ジュエルという代物にはまだまだ謎が多いことから、アタシが明かす分の未知もまだまだ残されているということでもあるし!
ということで、ジュエルについての話は以上となる。半分くらいしか理解していないけど、中々に面白い話だったことは分かる。そして、従業員はついでとして、技エネルギーの結晶におけるちょっとした話もしてくれた。これは日常における話でもあった。
その内容としては、技エネルギーの結晶は、ポケモンの体内にもできてしまうというものだった。何らかの力が働いて、体内に巡る技エネルギーが塊となってポケモンに害を為すという。これはれっきとした病気として扱われており、処置が遅れてしまうと、最悪死に至るとのこと。
その際にポケモンの体内にできてしまった技エネルギーの結晶も、実はジュエルだったりするという。その性質は鉱山で採れたものとは異なっているらしく、ポケモンの体内でできてしまったジュエルは、非常に硬い、というのだ。
なぜ鉱山で採れるジュエルは脆くて、ポケモンの体内でできてしまうジュエルは硬いのか。ここら辺も謎に満ちているというのだが、今のところは仮として、ポケモンの生態系における循環の、その種族の数といった生物の均衡を保つための選別……という話で世間に知れ渡っているらしい。
ジュエルを入手することはできなかった上に、自分の苦労でそういった事実を知りたかった身としては色々と聞きすぎてしまったと後悔。しかし、これでジュエルに詳しくなったものだから、なんだか得した気分にもなれたものだ。
……てか、これ上手くいけば、自分でジュエルを作れそうな気がする。
自転車を走らせるナガノシティの街中。カゴにラルトスを入れてペダルをこぎながら、アタシはそんなことを考えていた。
大満足に終わったこの日の夜、アタシはポケモンセンターの宿泊施設を利用した。
そこで、周囲のポケモントレーナーがこんな話をしていたのだ。それは、近日にも『ジムチャレンジ』というシナノ地方全域が注目する大きな催しが開かれる、というもの。
これはトレーナーズスクールで習ってあった。ポケモントレーナーの多くがそれへの参加に憧れ、高みを目指していく、と。ジムという施設で待ち受けるジムリーダーを倒し、バッジを集めていくその催し。そのバッジを八つ集めると、ポケモンリーグのトーナメントへの出場をかけた、トーナメントのトーナメントに参加することができるのだ。
そのトーナメントの上位に入ることで、ポケモンリーグのトーナメントに出場できる。で、そのポケモンリーグのトーナメントで優勝することで、チャンピオンへの挑戦権を得ることができる。
……ジムチャレンジ、か。その言葉をボソボソと呟きながら個室へ移動したアタシは、すぐにもスマートフォンを取り出してパパにそのことを話してみた――