ポケモンと私   作:祐。

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次の一歩

 アタシは、自分の性格や性質が嫌いだ。怠惰と完璧主義の両方を併せ持っており、中途半端な感情の波に気持ちが左右されるのだ。これらを兼ね揃えたことで発揮する個性が、天邪鬼。アタシはそれをよく知っていた。だって、自分がそうであるから。

 

 アタシが、周囲の環境に馴染めない要素の一部分。その上に変なところで研究熱心で、その熱い思いは空回りしてばかりだ。

 

 嫌に思っていた。自分自身のことが。何度もこの世界に絶望した。アタシだけが損しているような気分になるから。

 だけど、そんなアタシにはいつの間にか、仲間ができていた。とても不思議に思った。なぜ、アタシについてくるんだろう。どうしてアタシに寄り添ってくれるんだろう。相手の考えていることなんて全く分からなかったけれども、一つだけ、たった一つだけ、このアタシからでも言えることがあった。

 

 それは、相手のことを変だと思わないから。変わってる、おかしな人、非常識。周囲から掛けられてきた言葉を理解することができる、どこか似通ったものを感じられる同調からなる仲間意識。

 アタシは、それに救われてきた。そして、アタシもみんなのためになることをしていきたい。だからこそ言わせてほしい。何もできないアタシだけれども、この言葉を伝えることだけならば、アタシにもできるから……。

 

 ……ありがとう。いつも、傍にいてくれて――

 

 

 

「サイホーン! ドリルライナー!!」

 

 自由に出入りできる、ポケモンバトル用の広大なコート。真昼の太陽が燦々と輝くハクバビレッジの中で、アタシは自分らしくもなく闘争の地に佇んでいた。

 

 相手のワンリキーによる、からてチョップ。それをサイホーンのドリルライナーで強引に突破すると、吹っ飛んだ相手へと続けざまにロックブラストを放つことで追撃をかましていく。

 かなりの痛手となっただろう。ワンリキーがボロボロになりながらも体勢を立て直していくその様子。あともう一息だ。アタシはサイホーンにすてみタックルを命じて、この好機を逃すまいと一気に攻め立てた。

 

 サイホーンが迫るその光景。相手にしたワンリキーはみきりですてみタックルを回避すると、その隙をついて再びからてチョップで攻撃。

 サイホーンに直撃する。それを悟ったアタシは、この最後の最後まで隠してきた切り札をサイホーンへと命じていった。

 

「メタルバースト!!」

 

 直撃するからてチョップ。頭部にめり込むワンリキーの手を受けてダメージを受けたサイホーンは、この攻撃に表情ひとつ変えずに鋼の光を放ち始める。

 勝負あり。この試合で初めて見る技にお相手が驚きを見せた時には既に、ワンリキーは宙を舞ってド派手な砂埃を巻き上げていった。

 

 倒れるワンリキー。ひんしとなったパートナーをモンスターボールへと戻していったお相手は、勉強になる勝負だったと言ってアタシと握手を交わしていった。

 

「やったねサイホーン! この調子でガンガンいこ!」

 

 バトルコートの隅っこで、アタシが機嫌よく声を掛けていく。手にはリンゴを持ってご褒美のそれを目の前でチラつかせるのだが、サイホーンはそれにも表情ひとつ変えずにクールにリンゴを食していく。そんなサイホーンの上にはラルトスが乗っており、自分にもちょうだいと手を伸ばしていた。

 

 アタシは、「ラルトスも応援ありがと」と言ってリンゴを渡す。それを受け取ったラルトスもご機嫌な様子でもしゃもしゃ食べていくのだが、アタシの思考は既にサイホーンのより良い立ち回りの仕方に没頭していて周囲が見えていなかった。

 

 いや、それにしてもこのサイホーン、めちゃめちゃ強い。リンゴ畑でアタシらに同調したこの子は、見せたモンスターボールに対しても動じることなく仁王立ち。それをぶつけてボールが捕獲のために揺れ動いていたのだが、抵抗することなくサイホーンをゲット。それから一通りの技を調べて、翌日には試しにと思って軽い気持ちでバトルをしてみた。

 

 その結果、六戦中、六連勝。たまたますこぶる相性の悪いみずタイプやくさタイプが来なかったからというのもあるんだろうけれど、それにしてもたった一匹で数匹の相手に大健闘するこの子の戦闘力は、きっと相当なものなのだろう。

 

 アタシは、サイホーンを撫でた。サイホーンは撫でられても特段アクションを起こさず、ただアタシの行動をうかがうように佇んでいるのだ。

 次はどこに行くんだ? オレもそれに黙ってついていく。言葉にすると、こんな感じの雰囲気。鳴き声も出さないその性格は、もはやクールを通り越したなにかだろう……。

 

「戦いばかりで疲れちゃったよね。今日はこの辺にしよっか。この後はどうしようかな。サイホーンが来てくれたから、そろそろレミトリさんに挑みたい気持ちはあるけれど……」

 

 と、アタシはチラッとラルトスを見遣っていく。

 

「ラルトスも、新しい技の練習してみる?」

 

 試すように訊ねてみたその言葉に対して、ラルトスは『えー』といった顔を見せていく。

 冗談だよ冗談。笑ってそう言ってからアタシはラルトスの頭を撫でて、ラルトスを抱き抱えて、サイホーンはボールにも入れずそのままという何ともフリーダムな連れ歩き方をしながら、アタシはハクバビレッジの中を歩き始めていった。

 

 そして、夜の宿屋。ラルトスがサイホーンに乗って楽しんでいる様子を眺めながら、アタシはテーブルに頬杖をついて色々と考えていた。

 

 まず、ポケモンが覚える技の数についてだ。技エネルギーを消耗することで効果を発揮する『わざ』という特技は、一匹につき四つ覚えると言われている。

 だが、シナノ地方に生息するポケモンは、その常識から外れた生き方をしているらしい。どうやらこの地方のポケモンは、わざを六つまで覚えることができるというのだ。これには他地方も驚きだろう。

 

 覚えるわざが増えるということは、それだけ技のレパートリーが増え、戦略性も増していく。今サイホーンが覚えている技は四つであり、それぞれ、ドリルライナー、ロックブラスト、すてみタックル、メタルバースト。特にすてみタックルが中々強く感じられるものだが、このわざには反動というものがあって、強力な攻撃である分その反動が自分にも返ってくるという諸刃の剣。

 

 ただ、この子の特性がいしあたまというもので、すてみタックルといった反動が返ってくる攻撃を繰り出しても、その反動ダメージを食らわないという優れた頭を持っていることが分かった。これによって高威力が期待できるすてみタックルを、存分に指示することができるというもの。

 

 他には、メタルバースト。このわざはどうやら、自分がダメージを受けた直後に繰り出すことで、その受けた痛みを更に増した威力で相手に反撃するというもの。多少クセはあるもののその威力は絶大で、多くのお相手さんをこれで制してきた。攻撃すると、反撃される。そんなプレッシャーがお相手さんにもかかるという点では、心理戦や読み合いのような場面が見られる戦いになり、アタシがその読み合いに意外と強かったこともこの日に判明した。いやまさか、自分はこんなこともできたんだと、久しぶりに自信を持てた一日だった。

 

 他のわざは、ドリルライナーとロックブラスト。この二つは、アタシをゴーストから守ってくれた英雄たちだ。絶対的な信頼を寄せたこの二つのわざはどちらも強くて、誰かを守れるだけの心強さを兼ね揃えている。

 

 アタシは、だいぶ心に余裕を持ち始めていた。もはや絶望とも思われていたジムチャレンジに、希望の光を見出していたからだ。別にラルトスがダメだったとかそういう話ではなく、こうして捕まえたポケモンが、たまたま戦闘向きだったというだけ。そしてたまたま、自衛も兼ねてと戦闘ができるポケモンを仲間に加えたいと思っていただけだから、これは別に何が良くて何が悪いという話ではないのだ。

 

 アタシは、次のことを考えていた。こうして一歩前進したのだ。であるからには、そろそろ次の一歩のことを考える時期だろう。

 そんなことを、この夜はずっと考えていた。皆が寝静まるその時間になってもなお、この思考は巡り続けてアタシは眠ることも忘れていたものだから。

 

 ――朝日が出始めていた。ラルトスとサイホーンが眠る姿を捉えたこの視界に、朝日が射し込んでくる。アタシは次第と明るくなっていくこの世界の中で、ある一つの決心を固めると共にひとり立ち上がった。

 

「立ち止まっていられない。今日中にジムの予約を取って、数日後にはレミトリさんに勝負を挑む……!」

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