ポケモンと私   作:祐。

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此処

 大きな池が特徴であるその一帯を抜けると、その先にもアタシを待ち構えていたのは、二つの姿でそれぞれ異なる発展をしてきたのだろう二つのショウホンシティが現れた。

 

 一つは、シナノシティ並みにビルや建物が建ち並ぶ、大都市に近しい発展途上の姿。見渡すと仕事に勤める服装の人々が多く行き来しており、生息するポケモンも、マルマインやバリヤード、エリキテルやギアルなどの、街という雰囲気に適合したポケモンが多く見られたものだ。

 

 一方で、その街並みと隣接する形で存在していたのは、和風とも呼べる大きな城を中心とした、古くからの伝承を引き継いできた古き良き街並みという姿。和服を身に纏う人々は他の地方からやってきた観光客であったりと、遥々からシナノ地方へと訪れた新鮮味に溢れる人達が多く見受けられる。生息しているポケモンも、マッギョやヌオー、ハリテヤマやオドリドリといった、ひと昔前という印象に当て嵌まるようなポケモンが多く見られた。

 

 そして、アタシが目指すショウホンシティのジムは、この古き良き姿にあった。今も熱気が巻き起こる大歓声の波は、ようやくと建物が見えてきたという距離から聞こえてくる。今も多くのジムバッジを入手し、数多の試練を乗り越えてきた熟練の者達による白熱のポケモンバトルが繰り広げられているのだろう。アタシはやっと二つ目という遅れを取りながらも、順番の予約をするためにその手続きを行ってきた。

 

 アタシがラルトスを抱えながらショウホンシティジムから出てくると、入り口でクールに佇んでいたユノさん。腹部ら辺で軽く組んだ腕組みでこちらを見遣ると、軽く手を振ってアタシへと歩み寄ってくる。

 

「ジム、挑めそうかしら」

 

「ううん、二日は待たないといけないっぽい。でもね、ジムチャレンジが始まってそれなりに経ったから、リタイアした人達もそれなりにいるし、最初の頃よりもだいぶ待たずに済みそう」

 

「そう。それじゃあ、今の内に万全な準備をしておかなきゃね」

 

「アタシ、ユノさんにも手伝ってもらうつもりでいるから」

 

「うんうん。じゃあ、訓練の前にまずは腹ごしらえかしら。――あっちの方に、とても美味しそうなおにぎり専門店があったの。具材にフィラのみを使ったおにぎりもあるみたいで、その辛味とお米を組み合わせるだなんて、すごく珍しいなって思っていたところなのよ」

 

「なんだ、結局アタシにそこへ向かわせたいだけなんじゃん」

 

「お腹が減っていては、満足のいくポケモンバトルもできないわよ?」

 

「はいはい、行きますよーだ」

 

 ユノさんを連れておにぎり専門店へと向かっていくアタシ。後ろからついてくる彼女の存在も、この旅においてはだいぶ馴染んできていたものだ。

 未だに不思議が多い人物ではあるけれど、一方で傍に居てくれると、すごく安心する。何だかんだで心を開いていたのだろうアタシは、気付けばユノさんに自由な行動も許していた。

 

 ……だからこそ、アタシはこの時にも知ることがなかった。ユノさんという人物が、アタシを含めた誰の目にも留まらないよう密かに行動していた、彼女が暗躍するに至るその理由を――

 

 

 

「ユノさん、行ってくるね!! アタシのサイホーンで、二つ目のジムバッジをもぎ取ってくるんだから!!」

 

 朝早くに張り切るチャレンジャーは、旅を共にする仲間へとそれを言って、堂々とした足取りでジムの中へと入っていく。

 

 軽く手を振って見送る彼女も、「えぇ、行ってらっしゃい」と微笑みながら少女の背を見遣っていた。しばらくそこに佇んで少女が視界から消えるのを待ち、それからにもすぐに踵を返し、足早に歩き出したその彼女。

 

「ゾロアーク、状況は?」

 

 彼女の呼び掛けと共に、どこからともなく降り立った人型のポケモン。歩を進めていく彼女と歩調を合わせながら小声で何かを伝えていくと、彼女は黒いモンスターボールを取り出しながら、自身らが向かうべき広場の方向へと向き直る。

 

「――不思議に思っていたの。“此処”は今までに無い時間の流れで発展している。これまでと比べてイレギュラーな要素があまりにも多いものだったから、どうやら手こずっていたのは私だけじゃなかったみたいね。……ゾロアークがジムで聞いた話が本当なら、“此処”では既に、タイチくんが一度“マサクル団”を壊滅させているわ。この時点で想定外の時空であることは確かであるけれど、最近になって“マサクル団”が復活したというのであれば、まだまだ“彼”に追い付ける可能性は見込める! “マサクル団”は、“彼”を因子とすることで結成される団体。すでに壊滅していたという点が不可解ではあるけれど、復活したばかりということは、“彼”が、“此処”に現れたばかりとも取れる」

 

 黒いモンスターボールを投げると共に、そこから姿を現した一匹の鳥ポケモン。その姿が陽の光の逆光となってシルエットに塗り潰されながらも、大きな翼で勇猛に羽ばたくそれへと手を伸ばしながら、彼女は見据えた大空へと向かって、そのセリフを口にした。

 

「急ぐわよ! イレギュラーだらけの場所だけど、もし今がこれまでと同じなのであれば、この日にもきっと、“マサクル団”はショウホンシティの『ショウホン城』で、ポケモンを狙った殺戮ショーを披露する! でも、向こうから現れてくれることが分かっていれば、逆に彼らを待ち伏せして、力ずくで捻じ伏せてから、“ルイナーズ”の存在を吐き出させてやるんだから……!!」

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