ポケモンと私   作:祐。

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障壁

 アタシは今、魂が抜けたかのような顔をしながらコップを掴んでいた。

 

 陽が暮れた夜の時間帯。宿泊施設のすぐ近くにあった焼き鳥専門店のカウンター席で、アタシは一人、この日にも体験してきた悔しさと受け入れ難い現実に、今にも泣きそうになりながら静かに夕食をとっていた。

 

 今日、二つ目のジム、ショウホンシティのジムリーダーであるラ・テュリプさんに勝負を挑んだ。しかしその結果は、敗北で終わったのだ。それも、二体目までは引き摺り出せたものの、その直後の展開からほぼ一方的にいたぶられて、負けた。

 

 まず、一体目のバクガメスというポケモンに相当手こずった。サイホーンはバクガメスに対して相性は良かったものの、さすがはジムリーダー、こちらのロックブラストやすてみタックルといった攻撃を、トラップシェルというわざで真正面から受け止めつつ、ドリルライナーの機動力を以てしても、バクガメスの強固なガードを破るのがかなり大変だった。

 

 バクガメスをようやく倒したものの、既にサイホーンは息を切らして苦しそうにしていた。しかも、やけど状態になっていたために体力を消耗し続けていた。

 そこで繰り出された二体目のポケモン。モンスターボールから現れたのは、ギャロップという馬のポケモンだった。

 

 ギャロップは巧みな立ち回りでサイホーンの攻撃を受け流しながら、にほんばれによって天候を変えていく。続けて行ってきたのは、ほのおのうずだった。ほのおのうずによってサイホーンは逃げ場を失うと、ギャロップは恐ろしいことに、ほのおのうずの上を駆け出してきたのだ。

 

 その様はまるで、星空を駆けるユニコーンを見ているかのようだった。しかもにほんばれという天候は、ほのおタイプのわざの威力を上げるという。そこから繰り出されるだいもんじによる猛攻と、サイホーンの隙へと叩き込んできた、ソーラービーム。

 

 これにより、サイホーンは撃沈してしまったのだ。正々堂々と立ち向かって返り討ちに遭い、それどころか、アタシは一匹だけという手持ちから観戦者に嘲笑われ、写真も撮られてこの無様な姿を広められてしまった。

 

「ねえマスター……。アタシ、やっぱりポケモンバトル向いてないのかな……」

 

 涙声で、うるうるしながらお店のマスターに話し掛けていく。こちらの話にマスターも「元気出しなお嬢ちゃん」と言ってくれて、焼き鳥を三本オマケしてくれた。

 アタシはお礼を言いながらそれを食べていくのだが、出くわした挫折が思った以上に堪えていたものだから、食べていた焼き鳥の味もよく分からなかった。

 

 店を出て、フラフラっとそこら辺を歩くことにしたアタシ。ラルトスを抱えたその状態でショウホンシティの古き良き街の中を軽く観光していく。

 今でも脳裏には、ラ・テュリプさんに敗北した瞬間の衝撃と、周囲からの冷めた視線に面白がる光景。シナノ地方の高貴なる伝統を継ぐ者に対して、一匹だけで挑むというなめた態度を観客は気に食わないと思ったらしい。その後も控え室でラ・テュリプさんに声を掛けられ、優しく接してくれたものだったが、彼女に何て言葉を掛けてもらったのか、正直全く覚えていない。

 

 ……悔しい。……恥ずかしい。いや、何よりも……サイホーンに申し訳が立たない。

 

「サイホーンは一人で誰よりも頑張ってくれたのに、アタシのせいで笑われないといけないのが……。うぅ……ごめんなさい、アタシが無力なばっかりに……」

 

 五重になった塔が見える公園の高台。提灯の光が照らす街中の夜景を前にして、アタシはラルトスをぎゅっと抱きしめながら、堪え続けていた涙をボロボロと零していった。

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