ポケモンと私   作:祐。

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自衛手段

「ぎゃッ!!!!」

 

 頭上の窓に頭をぶつけたアタシ。大きな音を立てたそれにタイチさんが我に返ると共に、アタシは何かしらによる攻撃を受けて吹き飛んでいたことを理解する。

 

 次に、アタシはこちらへと飛んでくる“それ”を見た。

 “それ”は小さな身体をしておりながら、この形はなんとも形容し難い。強いて言えば、浮遊感のある液体とも呼べるものだが、“それ”の名前も知らないアタシは慌ててこの場からの逃走を試みる。

 

 だが、“それ”は再びアタシへ攻撃を仕掛けてきたのだ。“それ”は身体を光らせると共に眩い輝きを放ち始め、次に質量をもった光の粒を飛ばして、アタシの周囲にぶつけてくる。

 ショウホン城の中に響き出した戦闘音。ドタドタと駆けるアタシの足元も相まってそれは大事であることを示唆したのか、階段を駆け上ってくる音が聞こえてくると、そこから警備員が四名ほど姿を現した。その四名は手に網を持っていたり、網を発出することができる銃を携帯している。

 

「だ、誰か!! お願い、たす、助けてーーーーッ!!!!」

 

 叫ぶアタシ。頭を抱えながら必死に逃げるその逃走経路は、むしろ警備員から離れていってしまう上の階への階段が見えてくる。しかも、今も足元に散らばる質量をもった光の粒がアタシを余計に焦らせて、あれこれ考えることもできずにその階段へと向かっていってしまった。

 

 走らせるその足を騒がしくと動かしていく間にも、現場に合流したタイチさんは冷静ながらもこの状況を分析し始める。

 

「あれは……『マホミル』! クリームポケモンのマホミルが、なぜこのショウホン城に? それも、なんだかいつもと様子がおかしい。普段は温厚で甘い香りのする場所を好むポケモンが、どうして城に現れて、ヒイロちゃんを襲っているんだ? ――興味深いな。いや、それどころじゃない。ヒイロちゃん! どうにか上の階でぐるっと一周してきて、この階に戻ってきてくれ! 俺と警備員がこの階でマホミルを待ち伏せするから!」

 

「そ、そんなぁー!! ……いや、サイホーン! サイホーンがいるから大丈夫――」

 

「ヒイロちゃん! この城内ではポケモンバトルを禁じられている! 今は一大事ではあるが、警備員の前で違反を起こしてしまったら、後が面倒だ!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょこれーーーッ!!!!」

 

 とかなんとかやり取りをしている間にアタシは階段に到着。それをズダズダと荒々しく踏みながら駆け上がっていき、アタシについてくる『マホミル』というポケモンも、光の粒を放ち続けながらこちらを追って次の階へと進入してくるのだ。

 

 いやいやいや!! 普段は温厚って、このどこが温厚なポケモンなの!? 少し振り返ってみると、そこには真剣な顔……のようなものを液状の身体に浮かべながら、こちらへと集中的に攻撃を浴びせてくるマホミルの姿。

 液状から繰り出されているそのわざも、おそらくはマジカルシャインというフェアリータイプのわざだ。以前にもサイホーンを鍛えている際に見たことがあり、この光の粒は広範囲に広がるもんだから厄介だなと思っていたものだが……!!

 

「なんで!! なんでアタシ自身がこのわざを受けなきゃいけないのッ!!」

 

 マホミルがこうして襲い掛かってくる理由も、まるで分からない!! アタシが何かしたのだろうかと記憶を振り返ってみるものの、心当たりはまるで無い。ただアタシはあの窓から覗いた時に、たまたま下の方に居て目があっただけ。

 

 ……普段は温厚なポケモンが、目があったからというだけでこうして襲ってくるものなのか?

 今もドタドタと騒がしく走るアタシ。周囲の足元に散らばるマジカルシャインの光の粒を蹴り飛ばしながら、感覚で走り続けて先ほどの階段を目指していく。

 

 だが、一方で気持ちに余裕は持っていたアタシ。相変わらずマジカルシャインの猛攻は収まらないものだが、奇跡的にもアタシはこの攻撃を避け続けている。なんとか無事である身体から考える余裕も少しずつ生まれ始めて、アタシはアタシなりに、今の状況から脱する手段をなんとか考えていた。

 

 サイホーンは繰り出せない。ラルトスは下の階に置いてきてしまった。今のアタシにできることは、こうして逃げることだけ。持っているどうぐは? キズぐすりをマホミルの目に浴びせてみる? ポフィンで意識を逸らしてみる? いっそのこと、松明で応戦してみる?

 

 色々なアイデアを考えてみた。中には物騒な発想も混じっていたものだったが、その中で一番恐れていたのは、この歴史あるショウホン城を傷付けて弁償させられるという事態になることだった。

 だから、荒々しいことはできない。幸い、城には技エネルギーが張り巡らされているということで、マホミルの攻撃を吸収して無事を保てている。

 

 しかし、ここで無理はできない。ドタドタと忙しなく動かしていく足で走りながら、バッグに手を突っ込んだアタシ。次にもその手に当たった感触で直感的に解決への糸口を見つけたアタシは、それを手に持つなりこの身体をマホミルへと振り向かせ、アタシは狙いをつけながら精いっぱいの掛け声を振り絞っていった。

 

「モンスターボールッッ!!!!」

 

 これが一番、穏便に済ませられる!!

 

 勢いよく投げたモンスターボールは、マホミルに命中。ぶつかると同時に開いたそれは、マホミルを吸い込んで強引に中へと閉じ込めた。

 今の内だ! アタシはここから逃げ出すべく走り出す。……のだが、ここに来てアタシは、自分が行った行為について気付くことになる。

 

 あれ、でもこれって、もし――

 

 ――静まり返るモンスターボール。捕まるまでの緊張感がまた醍醐味でもあるこの一連の行為。アタシは予期せぬ展開に唖然としながらも、動くことすらなくなったモンスターボールを、ただただ見遣っていた。

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