昨日にも54話『裏側』を投稿しましたが、話の内容や文章の形に作者自身が納得することができなかったため、削除いたしました。
その関係上、最新話である54話『裏側』にしおりを設定なされていた読者の方々には、お手数をおかけいたしますが、外れてしまったしおりの再度の設定をお願いしたく存じます。
次にも話を削除する際には、その話の代わりにあたる次話を投稿した後に、前書きや後書きで該当する話を削除する旨をお伝えさせていただきます。
――肉まんたんこぶ――
ショウホンシティの昼の時間帯。紅葉のような紅の花を咲かせた木が特徴的である、和風テイストの公園に移動していたアタシとポケモン達。今日一日はジムチャレンジのことを考えないと決めたアタシは、省エネモードの完全オフデーということで、この日は自分のポケモン達と触れ合いまくることに決めていた。
そうして朝からショウホンシティを観光で巡り、アタシとラルトス、それと、ポケモンセンターから引き取ってきたサイホーンとマホミルはこの日、美味しいものをたくさん食べて過ごしていた。
まぁ、こうして美味しいものをたくさん食べているのも、昨日頑張ってくれたサイホーンとマホミルへの感謝のためだし? 手に持つポケモン用のクレープをサイホーンに食べさせていく中でそんなことを考えながら、アタシはアタシでショウホンせんべいをバリボリ食べてショウホンシティの味を堪能していく。
尤も、この完全オフデーに一番喜んでいたのはラルトスだった。今も公園のベンチに座るアタシの膝の上で、オボンのみをふんだんに使ったアイスクリームをものすごく味わいながら満足げに食べているその様子を、アタシは親バカのように眺めてはスマートフォンの撮影機能を浴びせるように写真を撮っていき、それをパパに送って自分達なりのオフの日を楽しんでいたものだ。
……とは言っても、マホミルは相変わらず落ち着きが無く、目を離すとすぐに他人のポケモンに勝負を仕掛けてしまうものだから困らされていた。今日もショウホンシティ巡りの最中にも、トレーナーのポケモンや野生ポケモンに勝負を仕掛けてはマジカルシャインを浴びせてしまうマホミル。アタシはそれに対して鬼のように怒鳴るのだが、これがマホミルの性分なのだろう、本当に普段は穏やかな性格なのかと疑問に思うほどの、とにかく血気盛んなその活力はまるで止まることを知らない。
そして今は、こちらの事情に了承を得てくれたポケモントレーナーの男性が、そんなマホミルの相手をしてくれていた。例に漏れずマホミルが不意打ちを仕掛けてしまったにも関わらず、彼は物腰の柔らかさでマホミルの性格を把握。そして、こうしてマホミルの相手をしてくれているのだから、なんとも心優しい接待にただただ感謝するばかり……。
公園に設けられたポケモンバトル用のコートで、男性トレーナーのウツドンがアタシのマホミルと戦っている。その様子をチラチラと確認しては手に持つせんべいに食らいつき、そして、アタシの足元で表情ひとつ変えずに寄り添ってくれているサイホーンが、そんなアタシ達を守るかのようにじっとしているのだ。
ポケモンバトルが終わったのだろう。マホミルがすごく勝気な顔でこちらへと飛び掛かってきた。あぁ、勝った喜びを伝えたかったのかな。そんなことが直感で分かってしまえるほどのタックルをかまされて、ベンチに押し倒されるアタシ。
スカートという服装で豪快に倒れ込んだものだから、中にはラッキーな男性諸君も居たかもしれない。とにかく、「ぶふぉッ!?」と低い声を出しながら倒れるアタシへと向かってきていた、ウツドン使いのトレーナーさん。物腰の柔らかい彼に微笑されてしまいながらもアタシはお礼を言い、この場を後にした彼の背を見送って、アタシはマホミルを抱えながらスマートフォンをいじっていく。
ポケモンバトルの疲れで、ようやくじっとしてくれたマホミル。ホントに昨日、真っ黒焦げになるほどの重傷を負っていたのだろうか。あまりにも元気すぎて、いつになっても血の気が多すぎるマホミルが静かにアタシに抱えられているのも珍しいため、そんな様子もカメラでパシャリ。膝の上のラルトスもマホミルに場所を譲り、アタシの隣に移ってバッグの中を漁って、アタシ用の大きなキャンディを取り出して食べていくのだ。
サイホーンも、まるで動じない。ほんと、マホミルとは対照的。内心で比べながらもアタシはスマートフォンをいじっていくのだが、ふと目についたとある記事を読むなり、アタシは背筋に走った寒気に恐怖を覚えることとなる――
「……シナノ地方に、大量のポケモンの――」
口に出したくもなかった。今までのポケモンに無頓着なアタシだったなら、その内容を抵抗なく言葉として言い表せたことだろう。
しかし、ポケモンに愛着が湧いてしまった今だからこそ、この記事にひどいショックを覚えてしまった。……その記事に記された原因不明の不可解な現象と、それによってもたらされた不慮の事故が、荒廃した大地にたくさんのポケモンの亡骸が転がることになったという。
現地の写真付きで掲載されていたそのニュース。そこには、小さな身体から、大きな身体のポケモン達が転がっており、アタシは、死というものと遠くかけ離れた世界で生きていたことから、その写真に思わず一瞬だけ目を背けてしまう。
……だが、彼らの変わり果てた姿はまだまだ綺麗なものを写されているらしい。中には見るに堪えないほどの損傷を被った個体もいるらしく、ひどいものでは、種族の判別もできないほどの被害を受けているポケモンも混じっていたとのこと。
――そんな、あまりにもひどい現象が、このシナノ地方で……?
「こういった事例は、過去にも何度かあったハズなの。でも、地方を管理するお偉いさんや守護隊、それとその関係者が、この事実をなるべく公に出さないように手を回していた。こうした無関係の人々に深刻な影響を与えてしまうだろうと懸念され、この日まで、こういった事実はごく一部の人間とポケモン達だけで処理されていた。――でも、今回ばかりはメディアがいち早くと見つけてしまったみたいね」
肩越しから聞こえてきた女性の声。とても聞き慣れた神出鬼没のそれへと振り向いていくと、そこにはベンチの後ろで、その背もたれに両腕をかけながらこちらを覗き込むユノさんが存在していた。
……目の下にクマをつくった、色白の肌とは不釣り合いのとても不健康そうな顔をしながら。
「ユノさん……」
「安心して。少なくとも、私が傍にいる限りは貴女達に悲しい思いはさせないから。――ほんの少しだけ明かすとね、その件に関わる関係者の立ち位置に、私はいるの。だからこそ言えることがあって、少なくともヒイロちゃんの周囲では、このようなことは決して起こらない。いえ、私が起こさせないから」
アタシの肩に手を置いて、安心させるべく優しく肩もみを行ってくるユノさん。
……てか、ユノさんが、この件の関係者?
「ユノさん。まさかとは思うけど。いや、絶対に違うとは思うけど――」
「えぇ、違うわ。私は、その虐殺を食い止めるべく奔走する側の人間。その行為を働いた団体の正体も知っていて、私はそれを追いかけるために、こうして時々、姿を消していた……」
「……行為を働いた団体? それって、どういうこと? これって、なにかの自然現象とかの事故じゃなくて……?」
アタシの疑問に、ユノさんは肩を揉む手を止めた。
――しまった。そんな顔を見せてきたユノさん。若干と曇らせた表情を浮かべては何かを考えるように視線を他に遣り、それからアタシの隣まで移動してきてその腰を下ろしてくる。
「忘れてちょうだい。これは、貴女が関わっていい案件じゃないから。貴女にはこれからも、至って普通の日常を送っていってもらいたいの。だから、これが人災であるということは……」
「うん。言わないようにする。だって、それでユノさんとか、その案件に関わっている関係者が困るんなら、アタシは絶対にみんなの邪魔になるようなことなんかしたくないし」
「……ありがと、ヒイロちゃん」
力無く笑んでくるユノさん。そして、何かがプツりと切れたかのように、彼女は意識を失うようにアタシへ寄り掛かってきたのだ。
ぐでっ、とこちらに身を預けるユノさん。完全に力を抜いているのだろう体重が掛かるこの重みにアタシは一瞬と押されてしまうのだが、目の下につくっていたクマから察するに、その案件とやらで相当寝ていない様子だったことは容易に想像できる。
アタシとユノさんに挟まれたラルトスが、サンドイッチのようになって角だけを出していく。そこから脱出したい反面、二人分の身体に挟まれて温かいのだろうか落ち着いた様子も見せていて、アタシはあまり気にしないことにした。
……寝息。アタシは、自身の肩にかけられたユノさんの顔を見遣る。
目を閉じて、完全に眠りについていた。――いつも、あんなにクールに佇んでいながらも、その美貌を台無しにするような変に活発な調子を見せていたあのユノさんが、こんなにも疲れ切って……。
「……ラルトス、マホミル、サイホーン。ごめんね、もうしばらくだけここに居てもいいかな」
口元に人差し指を立てて、「シーッ」とするアタシ。こちらの意図にポケモン達も分かっていた様子で頷いたりしていて、皆で静かにしていたものだ。
どうやら、省エネモードの完全オフデーはアタシ達だけではなかったみたい。それからというもの、アタシらは最小限の音だけで何かを食べたり動いたりして、ユノさんが目覚めるまで暫し、この公園で過ごしていたものだ。