ポケモンと私   作:祐。

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ゲットチャンス

「ラルトス、見える? あの木にいるの……もしかして、ヘラクロスじゃない……?」

 

 茂みから目を凝らす、アタシとラルトス。物陰から隠れて様子をうかがうアタシ達は、湖畔の一部に密集していたむしポケモンの集団を遠くから眺めていた。

 

 『オウロウビレッジ』に到着したアタシ御一行は、本来の目的であるアタシのジムチャレンジのために、しばらくこの村に宿泊することとなった。

 ユノさんとランヴェールさんという心強いお二方に支えられて、オンタケ山という試練の地も難なく乗り越えてきたアタシ。内心では「ラッキー!」なんて思いながらも余裕ぶって一人でオンタケ山に訪れたところ、そう言えば、数日前にランヴェールさんがあまいミツを塗っていたな……ということを思い出して、そのポイントへ直行する。

 

 すると、そこにはアタシの苦手なむしタイプのポケモンが、数日経過した今でもゾロゾロと姿を現して群がっていたものだ。

 おぉ、あまいミツの効果ってすごい。そう思うと共に、おぉ、むしタイプがあんなにもたくさんと……なんて、この背中をゾワゾワと寒気を走らせながらも、その光景についつい釘付けとなってしまう。

 

 遠目から見ただけでも、いろんな種類のポケモンがそこに集っていることが確認できた。主に、モルフォンやヤンヤンマをはじめとする、アメモースやツチミンといった様々な種類のポケモン達。さらには、なんだか音楽家のようなヒゲを持つ赤色のポケモンがいたり、雄っぽい雰囲気を放つ蛾のポケモンが見受けられたりと、その多種多様なむしタイプのポケモンをここまで惹き付けるあまいミツというどうぐの効果に、アタシはそれを見直す事になる。

 

 また、そんなむしタイプのポケモンを捕食しようとしているのか、周囲の木々で様子を見ているピジョンやハトーボー、冒険に出る前に図鑑で見たスワンナといった鳥ポケモン達が姿を見せていた。しかも、狙いをつけているのは上空の捕食者だけでなく、大きな大きな湖から顔を出すニョロトノやガマガルといった、水棲のポケモン達もこのむしタイプの集団に狙いを定めていたものだ。

 

 すごい。アタシはむしタイプが苦手でありながらも、あまいミツというどうぐが生み出したこの光景に、弱肉強食でありながらも食物連鎖によって成り立つ自然の摂理を目撃した気がして、思わず感動してしまった。こういったものに感動するような人間じゃないと思っていたからこそ、アタシは多種多様のポケモンが展開する、食うものと食われるものの循環を形として目にしたことに、なんだか特別な念を抱けてしまったのだ。

 

 感動~……! 前までなら目も背けてしまっていただろうその光景をしばらくと眺めていると、アタシはふと、その青色の身体をしたむしタイプのポケモンが目についた。

 立派なツノを持つ、カブトムシのようなそのポケモン。がっちりとした体格で周囲のむしポケモンを力ずくで退けていくと、それはあまいミツを独り占めするように堪能し始めていく。

 

 あれは確か……ヘラクロス。詳しく描写していない時にも、サイホーンを鍛えるためにショウホンシティでいろんなトレーナーと戦っていた際に、アタシはそのポケモンに意外と苦戦を強いられたことがあったことを思い出す。

 むしタイプのポケモンは、サイホーンのロックブラストでコテンパンだ! そう思って繰り出したロックブラストを、あのヘラクロスは容易く打ち砕きながらこちらへと接近してくると、インファイトという強力なかくとうタイプのわざでサイホーンを返り討ちにしてしまったのだ。

 

 自慢じゃないけど、試合の結果で言えばアタシの勝ちで終わったこの戦い。だが、むしタイプと侮ったアタシに、むしタイプも強いんだぞと思い知らせてきたポケモンが、あのヘラクロスだった。

 あれから調べたら、ヘラクロスはむしタイプと、かくとうタイプの複合タイプであることが判明した。へー、そんな組み合わせのポケモンもいるんだなーとその時はすごく勉強になったものだけど、ここに来てその知識が、まさか活かされることになるとは思いもしていなかったものだ。

 

 オウロウビレッジのジムリーダーは、こおりタイプの使い手。こおりタイプの弱点には確か、かくとうタイプがあったはず……!

 

「よし、ヘラクロスを捕まえよう! ――いくよ、マホミル!!」

 

 ガサッ! 茂みから飛び出したアタシは、モンスターボールを投げてマホミルを繰り出した。

 突然出てきたアタシらに、驚いたむしタイプのポケモン達が退散していく。そうして標的が去っていくその姿を追い、鳥ポケモンや水棲のポケモンも一斉に動き出していく展開の中で、あまいミツを独り占めしていたヘラクロスのみはこちらへと振り返り、堂々と佇んで勝負に受けて立ってきた。

 

「マジカルシャイン!!」

 

 血気盛んなマホミルは、この時を待っていた!! と言わんばかりにフェアリータイプの技エネルギーを一気に放出。今まで溜まっていた分のストレスなのだろうか、それは暴発するように弾けていくと、いつも以上の広範囲攻撃となってヘラクロスを吹っ飛ばしていったのだ。

 

 というか、なんかマホミル強くなってる? テュリプさんとの戦いで激闘を繰り広げたマホミルは、さらに成長していたみたいだ。そこから繰り出すマジカルシャインはヘラクロスを一方的に押していくのだが、ヘラクロスもただではやられない。

 

 つばめがえし。そのツノに空を切るひこうタイプの技エネルギーを宿すと、ノーマルタイプのわざでも特に凶暴な力を持つ、あばれる、というわざと組み合わせることで、周囲を薙ぎ倒す強烈なコンボをマホミルに叩き付けてきたのだ。

 アタシさえも吹き飛ばされる、強力な一撃。抱えていたラルトスがすぐさまテレポートを行うことで安全地帯へと瞬間移動したアタシだが、茂みの奥へと移されたその身をすぐに二匹の下へ駆けつけさせると、そこではマホミルがアタシの命令を無視した暴走状態で、ヘラクロスと殴り合っている。

 

 いや、手が無いマホミルなのに、言葉通りに殴り合っていた。マジカルシャインやアシストパワーを覚えているというのに、あろうことかマホミルは液状の身体で拳をつくってヘラクロスを殴りつけているのだ。

 いやいやいや!! なにやってるの!? せっかくタイプ相性的に有利をとれているのに、どうしてどのタイプにも属さない体術でヘラクロスを攻撃してるの!? アタシは「マジカルシャイン!! マジカルシャインやって!!」と指示を出していくのだが、興奮していたマホミルはこちらの言う事を聞かず、挙句にはメガホーンの一撃で吹っ飛ばされてKOされてしまう始末。

 

「マホミルーー!!! あー、もう! でも、戦ってくれてありがと! 戻って!!」

 

 なら、サイホーンで!! アタシはマホミルをモンスターボールに戻してから、急いでバッグからサイホーンのボールを取り出して投げつけていく。

 と、その間にも、羽を広げ始めたヘラクロス。そして、その場から飛び立つと、ヘラクロスは独特な音を鳴らしながら上空へと飛んでいってしまったのだ。

 

「あ、あーーーーー!!! 待って待って!!」

 

 悲痛の叫びをあげていくアタシ。モンスターボールから出てきたサイホーンが、クールに佇んで周囲を警戒してくれていたその間にも、アタシは飛んでいってしまったヘラクロスを追いかけるように、飛べない身体でその場をピョンピョンと跳ねていたものだ……。

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