ポケモンと私   作:祐。

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正義

 迂闊だった……!

 吹き飛ばされたことで、生い茂る木々に突っ込んでいたこの身体。ハンモックのような葉っぱと枝に引っ掛かることで、全身打撲の重傷を避けることができたものだったが、一方で周囲のポケモン達も完全に油断していたことから、みんなもアタシと同じようにその場を吹っ飛ばされて怪我を負ってしまっていた。

 

 マサクル団という二人を捕まえて、マリルリ達と喜び合った手前のことだった。非道の限りを尽くす連中を取り敢えずひっ捕らえたことで、「犠牲になった仲間達もこれで安らかに眠れるだろう。この勝利は心から喜べるものではない悲痛にまみれた辛勝ではあるものの、まずは連中の活動を食い止めることはできた」と、アタシはポケモン達にそれを話していた。

 

 ……皆が、気を緩めていた。ようやくと脱した命の危機に心からの安堵でアタシに注目していたポケモン達。マリルリもポポッコも涙を滲ませていて、ヤツらに狙われる恐怖が如何に恐ろしいものであったことを物語る。

 だが、アタシ達はどうして気付くことができなかったのか。外部で野次と罵倒を繰り返すマサクル団のパイプ男を無視しながら、ポケモン達と連中の身柄をどうするか考えていたその矢先。なにかメカニックな起動音と、ふと視界に入った光でアタシはそちらを見遣っていく――

 

 瞬間、全身を覆う巨大な爆風がみんなを襲った。

 もしかして……連中が落とした大砲——!? ヤツらの身体を上回る大きさのパイプと筒。それらをドッキングすることで完成した、あらゆる命を刈り取る忌々しき殺傷兵器。

 

 ヤツらが落としてから、アタシ達は安堵のあまりにそれを気に掛けることがなかった。――まさか、ヤツらが手放した後にもそのエネルギーが装填され続けていただなんて……! この唯一の怠りを心底悔いると共に、勝利という優位から一転として、その場の状況を一気に悪化させてしまったのだ。

 

 吹き飛ばされるアタシ。みんなも爆風に呑まれて拡散するように飛ばされてしまうのだが、幸いにもこの爆発で致命傷となったポケモンは見受けられない。

 だが、この爆風はマサクル団の二人にも届いていた。むしタイプの技ネネルギーによる強靭な糸で身柄を拘束されていた二人であったのだが、二人もまた爆発に呑み込まれると、縛られていた糸は熱で燃え尽き、加わった衝撃でアタシら以上に打ち所の悪い吹っ飛び方をすると、激痛のあまりの悲鳴を上げながらも重傷の身体で、すぐさま立ち上がっていく――

 

「っへへ……。っへへへへへへ……っ!!! バケモン共め、覚えておけェ……っ。この戦いは、俺らマサクル団の勝利だ……っ!!! 一度マサクル団が滅んだ時も、こうして最後は勝つことをずっと信じてきた……! マサクル団ってのァやっぱ、日頃の行いが良いのか実に運が良いっ!!! ほらなァ、てめェら!! 正義は勝つんだよォっ!!!!! ってェ――おぃ兄貴ィ、大丈夫ですかィ!!! ここをずらかるって感じですよォ…………っっ!!! っハハハ。っハハハ……っっっハーーーーーッハッハッハ!!! 」

 

 骨が折れていてもおかしくない重傷で二人は動き出すと、ヤツらは絶好の好機を逃すまいと一目散に逃げ出していく。

 くそ……!! 何なんだあいつらッッ!!! アタシも吹き飛ばされた痛みを全身に響かせながら「誰か……誰か、追い掛けられる……!?」と呼び掛けていくのだが、追い掛け始めたマリルリとミネズミ達が走り出した頃には、二人は森林の奥へと姿を隠して、皆が完全に見失ってしまったのだ。

 

 迂闊だった……! 命を張った戦いなんて初めてだったからこそ、勝利した安心感に溺れてその後のケアを怠ってしまった。

 木に引っ掛かった状態で、沸々と湧き上がる怒りのままに木を殴りつけて「くそッッ!!!!」と自分に怒る。そんな中でも、アタシを下ろすべく来てくれたポポッコやポワルンになだめられながら木から解放され、そのまま膝をついて無念のままに、アタシは何故だか溢れ出してきた涙で地面を濡らしてしまうばかり。

 

 爆発した機械を完全に破壊したマリルリとウパー。……これにて完全に決着となった、命懸けの戦闘。戦いの終わりを雰囲気で悟ると共に、先の爆発に限らずとも、この戦いで心身ともに深い傷を負ったポケモン達がみんなで寄り添い合い、悲しみの感情を共有し合って涙を流していくのだ。

 

 動かなくなってしまった、多くの仲間達。せき止められた川は爆風によって再び流れ出し、さらさらと清らかに響き渡るせせらぎの音が、この戦いに一旦もの終止符を打ったことを嫌でも告げてくる。

 アタシの傍に寄り添った、蜂の子ちゃんと真っ白なロコン。二匹もまた悲愴にまみれた表情でこちらの顔を見遣ってくると、アタシはやるせない気持ちのまま二匹を抱き上げ、マリルリに背を撫でられる優しさを受け止めながら、アタシはしばらくの間、森のポケモン達と泣き続けた――

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