ポケモンと私   作:祐。

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関係者

「ラルトス!!! サイホーンとマホミルも!! 良かったぁ……!! ――あの、この子達を保護していたジムチャレンジのスタッフさんですよね!? あそこにあるブーツとかバッグとか帽子とかもアタシので……そう! 今もアタシ、靴を履いていないこの状況で何となく察してくれてると思うけど! オンタケ山の向こう側で、大変なことが起きていて……!!! と、とにかく、助けに来て!!」

 

 マリルリの案内の下、靴を履いていないトレーナーが息を切らしながら、ただならぬ気配でオウロウジムに駆け込んできたこの光景。向けられた周囲の目にアタシは、こんなの既に慣れっことでも言わんばかりに浴びせられた視線を無視していくと、目についたオウロウジムのカウンターで保護されていたのだろうラルトスとサイホーン、マホミルのパートナー達が、こちらを発見するなり駆け寄ってきてくれたのだ。

 

 アタシは再開に喜んで三匹を撫でていくのだが、事態が事態なだけにここで立ち止まってはいられなかった。三匹の懐き具合からトレーナーであることを察してくれたジムスタッフさんが駆け寄ってくるなり、アタシはオンタケ山の一部で惨劇が繰り広げられたことを伝えていく。

 

 突然そんなことを言われたスタッフは、困惑するばかりだった。だが、駆け付けてくれた複数のスタッフがアタシから話をうかがいながら連絡を取り始めていき、そう遅くならない内にも、オンタケ山の一部にて、大量のポケモンが変わり果てた姿で倒れている一帯が見つかったという連絡が入ってきたものだ。

 

 

 

 大事となったこの事態も含め、これで数件目ともなるポケモンへの無差別的な行為が、世間に浸透するようになってきた。

 

 あの件から一日が経過し、アタシはユノさんとランヴェールさんの二人と合流する。

 どうやら、アタシが湖の激流に呑まれた後、ひとり残されたラルトスは助けを求めるべくバッグからモンスターボールを取り出して、サイホーンとマホミルを解放。そこからブーツやバッグ、キャップを回収するなり周囲を捜索してくれたようで、それでもアタシの姿が見つからなかったことから急ぎでオウロウビレッジへ帰還したようだ。

 

 そこでユノさんとランヴェールさんに由々しき事態であることを雰囲気で伝えたとのこと。これを察してくれた二人はすぐさま飛び出していき、前日までずっと、オンタケ山を捜索してくれていたとのことだった。

 

 オウロウジムで合流してからというもの、アタシを見たユノさんはすっ飛ぶように飛び付いてきて、まるで我が子のように抱きしめてくれながらアタシの帰還を喜んでくれた。

 その後ろからランヴェールさんもホッとした様子で歩いてきて、アタシの無事に胸をなでおろしたようだ。二人ともつい先ほどまで捜索してくれていたのだろう、服に付着した大量の葉っぱが見受けられて、うわー、本当にごめんなさいなんて思いながら、アタシは内心でひたすら謝ってしまったものだ。

 

「ヒイロちゃん……! 無事で良かったわ……! 貴女になにかあったら、私どうしようかと……!!」

 

「心配してくれてありがと、ユノさん。でも、ちょっと――苦しいッ」

 

「あぁ、ボクの可憐なるか弱きプリンセス。ヴァルキリーとナイトが常に在りながらも心細い思いをさせてしまうだなんて、ボクらはなんて重罪を犯してしまったことなのだろう。まずは無事で良かったよ、ヒイロちゃん。よく戻ってきてくれた……」

 

「ランヴェールさんもユノさんも悪くないって! 悪いのは、勝手にオンタケ山に行ったアタシ。――も、そうなんだけど……」

 

 もはや、ユノさんからは絞められるくらいのハグをされていたアタシ。息苦しいそれに圧迫させた声で淡々と喋っていくのだが、次にもその言葉を口にするなり、この空気は一変することとなる……。

 

「本当に悪いのは、マサクル団って名乗ってた男共だよ!! もー、ホント。何なのあいつら!! 担いでた変な兵器でポケモンをボコボコと殴ったり撃ったりして、あいつらの言動とか存在とか、もうあらゆるもの全てにすごくムカついた!!! アタシ、あいつら絶対に許さない!! 今度出会ったらキンタマに蹴り入れてやる!!!」

 

 思い出すだけで沸々と湧き上がってくる怒り。そのままアタシは興奮して、相手の股間を狙うような蹴り上げる動きをしていくのだが、ふと気付いた空気の流れの変化にふと二人を見遣っていくと、アタシのことを丸くした目で見てくる、ユノさんとランヴェールさん……。

 

「……二人共、どうしたの? あ、もしかして、乙女がキンタマとか言ったのがそんなに変だった? でも、女でも普通にキンタマとかケツとか言うし、そんな変なことじゃ――」

 

 抱きしめられるアタシ。触れたユノさんの胸からは、心臓が一気に速くなる鼓動がしっかりと伝ってきて、次にもユノさんは、ランヴェールさんと遮るようにその身体を移していく。

 

 そして、ユノさんはそれを口にしてきたのだ。

 

「ッ——! やっぱり、貴方……!!」

 

「待ってくれ、赤黒きヴァルキリー。……おかしいな、オンタケ山で活動するにしては時期尚早だと聞いていたハズなんだが――」

 

「やっぱり、狙いはこの子なんでしょッ!! 目的は何!?」

 

「何度も言ってはいるが、ボクは“彼ら”には属さない別の組織に身を置く人間さ。キミもすでに仕組みは知っているだろうけれど、なにも“彼ら”は、“彼”という因子が現れることによって自然と生じる、云わば付属品なのさ。で、キミも分かっている通りに、ボクもまたキミと同じような手段で“此処”にいる、トラベラーに過ぎない。――ボクはね、ヴァルキリー。ポケモンを生き物として見ない彼らとは相容れない性分であると共に、“彼”と同等である以上、“彼ら”の上に立つ人間でもあるのだよ。……理解してくれたかな?」

 

「それで納得するわけが無いわ!! 大体、“彼ら”という団体は、“ルイナーズ”という組織の中に位置する、表での活動を主とする集団! つまり、大きな枠組みで見れば、貴方も“彼ら”の仲間という位置にある人間なのよ!」

 

「そこを突かれてしまうと耳が痛いのだが、ボクは“彼ら”を同類として見ていない。今までにも、ボクがポケモンへと注いできた愛情の片鱗をその目で存分と見てきたことだろう? ――ボクの見張り役を豪語するだけあって、ヒイロちゃんが行方をくらます前だって、ボクから一切と離れることなく付きっ切りとなり、グソクムシャやハハコモリの世話をしているボクの姿を、ずっと眺めていた。そうだね?」

 

「……ッ!! だからって、誰が貴方を信じろと言うの……!? だって貴方達は、私や他の――!!!」

 

「ヴァルキリー。それ以上を口にしてしまったら最後、それを聞いてしまった部外者である可憐なるプリンセスもまた、関係者と見なさなければならないことになる」

 

「ッ——!」

 

「ボクとしても、ヒイロちゃんを我々の件に巻き込むことは本望ではなくてね。……いずれ彼女も、“我々”が引き起こす大いなる運命と対峙してもらうことにはなるものだが、せめてその時までヒイロちゃんには、どうぐを追い求めし純粋無垢なる生粋の冒険者として、この世界を自由に謳歌してもらいたいと思っている。だから、“彼”を追い求めし稲妻の申し子、ユノ――キミが感情に呑まれてしまうことは、彼女を安息の無い窮地の一生へと誘うに同義であることを、心得ておいてくれないか?」

 

 …………?????????

 会話の内容が、理解できない。話についていけないアタシは呆然とそれらを耳にしていくのだが、ランヴェールさんのその言葉を聞いたユノさんは、今までに見たこともないような恨めしい顔をしながら彼を睨み、アタシを大事そうに抱えながら暫しと黙りこくっていく……。

 

「……ヒイロちゃん。山の中は、寒かったでしょう。――温かい物を食べましょう。オウロウビレッジの美味しいレストランを知っているの」

 

「え? ……うん、分かった。ここに連れてきてくれたマリルリも、今は森のみんなの所に戻ってると思うし、後でみんなの様子を覗きに行くためにも、まずは元気を蓄えないとだね。……あ、じゃあランヴェールさんも――」

 

「おっと、プリンセス! ボクは今、最愛のむしポケモン達を他の場所で待たせてしまっているんだ! だから、今日のところは、漆黒と鮮紅の彼女と仲睦まじい一時を過ごしていってもらいたい。……さて、ではボクはこれにて」

 

 被っていた中折れハットを取り払い、深々と一礼を見せてくるランヴェールさん。目の奥に秘めた、全く読めない彼の心情。唯一言えることは、心身ともに疲労したアタシに、同性と一緒に過ごせる時間をつくってくれた気遣いであることに気付いたアタシは、ランヴェールさんに「また後で、そっちにも顔を出すね!」と一言かけて手を振っていく。

 

 ……悠々とした足取りで、オウロウジムから出ていったランヴェールさん。歩いているだけでも相当目立つそれをアタシは見送っていくと、「じゃあ、ユノさん行こっか」と手を引っ張ってご飯へと向かおうとする。

 こちらの言葉に、「えぇ、行きましょうか」と答えていくユノさん。先ほどまでの、激昂で顔を歪めたそれを全く思わせないいつもの調子でユノさんがそう言うと、アタシもまた、ラルトスを抱えながらサイホーンとマホミルを連れたその状態で、ユノさんと手を繋いだイイ雰囲気でオウロウジムを後にした――

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