ポケモンと私   作:祐。

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同年代のチャレンジャー達

「へーーー!!! ラルトスから近付いてくれるってことあるんだな!! めちゃめちゃレアなポケモンってよく聞くし、なんかすごく意外だわーーー!!! で、ネーちゃんってあれでしょ! ジョウダシティ出身ってことは、もうジョウダジムはやったカンジ!!? だって、ラルトスってフェアリータイプだから、ジョウダシティのジムリーダーに有利だし!! ――え、まだ挑んでない? あ、そっか!!! ッハハハ! じゃあ最初、絶対にビックリするって!! だって、ジョウダシティのジムリーダーのダイチって、あのチャンピオンのタイチの弟だし!!! 何せ、ダイチの使うドラゴンタイプがまた、めっっっちゃイカすんだわーーー!!!」

 

 丸テーブルに腕を置きながら、ものすごく嬉しそうにそんなことを話していく彼。傍に置いてある彼の飲み物が一切と減っていないことから、アタシと話すことにとにかく夢中といった感じの様子だった。

 

 ――まだまだ、話し始めてそれほど経っていない。しかし、時間の流れが早いのか遅いのか、彼と話していると圧迫するように降りかかる会話の圧が、アタシに流れる体内時計を確実に狂わせてくる。

 目の前の彼が元気すぎで、それに圧倒されたアタシとラルトスはすでに疲れてしまっていた。先ほどから「うん……」とか「そうだね……」とか、そんな相槌ばかり。それでもお構いなしに彼は笑顔を見せてくると、すごく楽しそうにポケモンのことやジムチャレンジのことを話し続けていくのだ。

 

 と、ここでアタシらのテーブルへと近付いてくる足音。アタシがそちらへ振り向くと、そこにはアタシが希望したオムライスの皿とオレンのみソーダのコップを持った、ヤクザっぽい顔つきをした男の子が手に持つそれらをテーブルに置いてくる。

 

「会計は済ませてある。お前さんに迷惑をかけた礼として、気にせず食ってくれ。――おいクルミ! お前さんの話し声が、向こうにまで聞こえてんだよ! 公共の施設で騒がしくするなとあれほど言っただろうが!!」

 

「わー!!! それは悪いことをした!! ごめんなグレン!!! オレ、ラルトスのネーちゃんと話ができるのめっっっちゃ楽しくて!!!」

 

「話って、お前さんが一方的に喋っていただけだろうが……。まぁいい」

 

 ドカッと椅子に座っていく男の子。それから足を組んで粗暴な雰囲気を醸し出していくと、そんな外見とは裏腹となる冷静な調子でそれをアタシへと訊ね掛けてくるのだ。

 

「どうせ聞いていないだろうが、こいつから自己紹介はされたか?」

 

「う、ううん。アタシ、まだみんなのこと知らない……」

 

「はァ……。おいクルミ」

 

「あっれーーー!!! そっか! オレ、まだオマエに名乗ってなかったっけ!! なッははは!! 自己紹介ってついつい忘れちゃうことあるよね!!!」

 

 呆れるように頭を抱える、ヤクザっぽい顔つきの男の子。ハァっと大きなため息をついていくと「ダメだこりゃ」という言葉が聞こえてくるような反応を見せていき、それからアタシへと向き直りながら自己紹介を始めていくのだ。

 

「このうるせェ馬鹿がジムチャレンジの話をしていたようにな、俺たちもジムチャレンジに参加しているチャレンジャーの端くれだ」

 

「そー!!! そう言えば、ネーちゃんの名前も聞いていなかったな!! ま、最初はオレが名乗るんだけどね!! ってことで、自己紹介ーー!!! オレの名前は『クルミ』!!! 今もばりばりジムチャレンジに励んでいるポケモントレーナーだ!!! オレの相棒はシビルドンっていうヤツで、最高にイカしてるオレの最高のパートナーなんだ!!!」

 

 ニッと眩しい笑顔で名乗ってきた、クルミという男の子。まるで別の種族かと思えるくらいに人としてとにかく明るい男子であったものだが、やはりとも言うべきか年齢もアタシとほぼ同じくらいで、それだけでも親近感は湧いてきた。

 

 で、自己紹介を行ってきたクルミ君は、自分の紹介を終えるなり流れるように両隣の仲間達を手で引き寄せていく。

 

「でな!! オレのこっちにいる、とってもコワーイ顔をしたヤツが、『グレン』っていうんだ!!! グレンもオレのように、ばりばりジムチャレンジに挑んでいるチャレンジャーなんだけど、コワイ見た目をしているのにとってもイイ奴なもんだから、オマエも仲良くしてくれよな!!!」

 

「人の顔をコワイコワイ連呼すんじゃねェ。ということで、紹介にあずかったグレンだ。よろしくな」

 

 もはや慣れた。そんな調子でクルミの紹介にそのまま便乗する、ヤクザっぽい顔つきの男の子こと、グレン。アタシも「よ、よろしく」と言葉を詰まらせながらも返答をしてグレン君の顔を覚えていくと、そうしてまだ二人を記憶している間にもクルミ君は女の子の紹介を始めていく。

 

「でな!! オレのこっちにいる女子が、『カナタ』ってヤツなんだ!!! カナタも、オレやグレンと一緒でジムチャレンジをしているポケモントレーナーで、冷静な判断で的確に相手の弱点を突いていく戦闘スタイルが得意なんだ!!! ――あ、オレ今、すごく頭が良さそうな紹介したな!!?」

 

「おいクルミ、顔がコワイで紹介された俺とは天と地の差があるのはなんだ」

 

「えーー、だってそうじゃん!!」

 

「お前さんなぁ……」

 

 ひたすらに呆れた調子でクルミ君と絡んでいくグレン君。こんな二人の絡みを隣で展開されているカナタさんという女子はと言うと、クルミ君の手が肩に触れてからというもの頬を赤く染めていて、大人びたその様相からは想像もつかないほどの、なんとも乙女な顔をしていたものだ。

 

 ……だが、アタシが「よろしく、カナタさん」と言うなり、彼女はアタシに冷たい視線を送ってきた。

 ――うわ、こっわぁ……。やっぱり、人は外見より中身か。顔がコワイの紹介をされていたグレン君よりもよっぽど近寄りがたい空気を醸し出すカナタさんに、アタシはただただ苦笑いをしてしまうばかり。

 

 そして、最後にアタシが紹介を行っていった。「ヒイロ。アタシの名前はヒイロっていうの」といういつもの名乗りで三人に告げていくと、クルミ君は「ヒイロって言うんだな!! めっちゃイイ名前じゃん!! よろしくな!!!」と、グレン君からも「よろしく頼む」と穏やかに言われていく。一方でカナタさんからは一言も返事が来なかったものだったが、アタシとしても、こう、これで良いハズ……なんて思えてしまうのがまた何とも。

 

「なーなー、ヒイロ!! オマエって今、ジムバッジいくつあんの?? オレ、ヒイロとポケモンバトルしてみたいんだけどなーーー!!!」

 

「んー、ジムチャレンジをしてるっては言ってるけど、アタシってついこの間ポケモントレーナーになったばっかりで、まだそんな経験が無くって。とりあえずジムバッジは二個手に入ったんだけど、我ながらよくやれてるって思ってる」

 

「ほぇー!! ポケモントレーナーになったばっかりなのに、もう二個も持ってんの!!? それヒイロ強すぎじゃね!!! やるなオマエーー!! オレはジムバッジ六個持ってて、このオウロウビレッジで七個目って感じなんだけど、ヒイロと違って何年かポケモントレーナーしてるしなーーー!!!」

 

「うそ、六個!? クルミ君、意外と強いんだ……」

 

「だろーー!? オレの自慢のでんきタイプのポケモン達が、こう、ドカァ!! ボコォ!! っとジムリーダー達を倒してくれてな!!! でも、やっぱジムリーダーのみんな強いんだよ!! どこのジム行っても必ず一回とか二回は負けるんだ!!! だから、その度にオレ達は勝つために色々考えて、色々研究して、色々実践で試していって。そこで編み出した新しい戦法でジムリーダーを翻弄していって、ジムバッジを手に入れて!!! そんでようやく六個手に入れてコンプリートが見えてきたっていうのに、ここのオウロウジムのジムリーダーのニュアージュってやつに、オレ三回も負けちゃってて! いやーー!!! 七個目だからってジムリーダーも本気でさ!! グレンはいわタイプのポケモンを使うの上手いから一回で勝ってて、カナタもタイプばらばらだけど一回で勝ってるから、あとはオレだけなんだよねーー!!! 焦るわーーー!!!」

 

「つっても、俺はこれでバッジは五つ目だ。カナタも六つ目になったもんだから、バッジの数だけで言えばクルミが一番強ェやつと戦っていることになる。七つ目のバッジがかかっているとなりゃあジムリーダーの皆さんも本気で仕留めに掛かるだろうし、俺もこれからクルミのような試練が待ち構えているんだと思うと、より一層と気を引き締めねェといけねぇって思えてくるしよ」

 

「まーさ、オレとグレンがバッジを七個手に入れたとしてもさ。あれが残ってるんだよ。あれ」

 

「ナガノシティのジムリーダー、ラインハルトさんな。でんきタイプを使うクルミと、いわタイプを使う俺だ。じめんタイプのジムリーダーであって守護隊隊長であるシナノ地方の守り神に対して相性が悪すぎて、オレとクルミは今も吐きそうな思いで必死に対策を練っているってもんだ」

 

「ま! 何とかなるだろ!!! カナタだって、相棒のインテレオンで一番最初に隊長を倒して一個目のバッジ取ってきてるし!!! オレ達だって何とかなるなる!!」

 

「そう言ってもなクルミ、カナタはフリースタイルなもんだから、色々な場面に対応できるってだけの話だ。もちろんカナタの力量もあってこその結果だが、ポケモンのタイプ相性を気合いと根性だけで乗り切るってんなら、思考停止してるも同然っつーもんだ」

 

「あっれ?? グレン、もしかして弱気でいらっしゃる???」

 

「なっ……!!! ば、馬鹿言え! 俺だって、最初から諦めているワケじゃねェんだよ!! 見てろよ。お前さんより先に結果を出して、思い知らせてやるからな!」

 

「なッははは!!! そうこなくっちゃ!!」

 

 なんだ、意外とイイ雰囲気でやれているチームじゃん。

 もはやアタシの存在を忘れ去っているとも言える、これがいつもの雰囲気かと伝わってくる日常的な二人の会話。そんな会話に一切と関わることなくサイコソーダをストローで飲んでいるカナタさんもまた、若干とクルミ君に寄っていく感じで座って落ち着いている。

 

 ……同年代の仲間か。今まで、ユノさんとランヴェールさんのアダルティなお二方と行動を共にしていた身として、同じ歳の子と旅をするというシチュエーションも少しだけ憧れる。

 

 ――と、一人の世界に入っていたアタシがボーッとしていたその時にも、この視界にズイッと顔を覗かせてくるクルミ君。

 

「なーなーヒイロ!! あとでオレ達の特訓に一緒に来るか!!? バッジの数なんか気にしないでさ! オレもヒイロも同じジムチャレンジのチャレンジャーなんだ!!! 一昨日も昨日もグレンとカナタと一緒にな、オンタケ山で鍛えてたんだよ!!! なーなー、ヒイロも一緒に行こーよー!!!」

 

「おいクルミ! 無理強いをさせんな! ヒイロにも都合があるだろうし、今日はオフの日とやらで休息の最中なんだ。誰もがお前さんのように毎日、一日中と動き回れると思うな。――それに、どうやらオンタケ山で問題事が起きたそうで、一部の区域の出入りを制限されている。守護隊も出動する騒ぎに発展している以上、事態が終息するまでは俺達も変にオンタケ山を出入りしない方が身のためだろうよ。最優先するべきは、自分とパートナー達の命だ。死んじまったら、ジムチャレンジどころじゃなくなるからな」

 

「だなーー! オレ、そのこと詳しくないけどさ。なんか、こう、とにかく怖いよね!!」

 

「クルミが怖いなんて言葉を使うくらいの事態っつーことだ。俺達も事件の当事者にならねェよう、世間の動向を探りつつ慎重に動くってなことだな」

 

「あれ?? でもオレ、いつもグレンにコワイって言ってるよね??」

 

「あ??????」

 

 そっか、アタシにはユノさんという関係者がいるものだから、一連の件が人災であることを知っているんだ。でも、アタシがユノさんから聞くまで分からなかったように、今回の件も人が引き起こした事件であるということは、なるべく口を滑らせないようにしないといけないんだな。

 

 ……というか、今回の件に関して言えば、それこそアタシがこの目でマサクル団という犯人を目撃した、巻き込まれた側の立場であったのだけども――

 

 と、そんなことを思っていた間にも、その空間に響き渡っていた一つの靴音。

 なんか、それもどこかで聞いたことがあるぞ? 聞き覚えのある声やら音やらがやけに多い一日にアタシが疑問となっていた時にも、その答え合わせと言わんばかりに、透き通るような超絶イケメンボイスが近くから投げ掛けられていったのだ……。

 

「お? やっぱり、ヒイロちゃんか!」

 

「え? ――あ、タイチさん!」

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