ポケモンと私   作:祐。

79 / 104
 作者の肉まんたんこぶです。
 10月の19日から20日に渡って投稿してきた、79話から82話までの計四話の物語についてですが、物語の進行を著しく停滞させていたことや、作者自身が内容に面白味を感じなかったことから、今までの79話から82話までを削除して、21日にも更新する79話から新しく次話を投稿していくことに決めました。

 最新話までご愛読いただいた読者の皆様には、心より感謝申し上げます。同時に、話の内容に混乱を招くようなことを事前にお知らせもせず、大変申し訳ございません

 なお、以前の物語の進行としては、79話から84話までのイベントを終えた後に、オウロウビレッジジムへの挑戦という内容を想定しておりました。これからにも変更する物語の内容によっては、79話からジム戦へと向かう流れになるかと思われますので、ヒイロが巡っているジムチャレンジへのご期待に沿えた内容へと路線変更できるよう工夫して参ります。

        ――――肉まんたんこぶ――――


気遣い 【前書きあり】

「いやぁーーー!! 結局ぬしポケモンは見つけられなかったけど、こうやってオンタケ山で食う飯はめっちゃ美味いなッ!!! な! ヒイロも楽しいよなっ!!」

 

 真昼を過ぎたこの時刻。オンタケ山の比較的と開けた空間にて燦々な太陽と共鳴する、今もアタシの目の前でキラキラと光り輝くクルミ君の眩しい笑顔。

 バーベキューのコンロを囲うように置かれた折り畳みの椅子と、それらに座る、アタシを含めた現地の四名。今も焼肉で生じた煙が天へと上っていたものだが、彼の笑顔は煙にも負けない輝きを放っていたものだったから、アタシは全身の疲労からなる苦笑いで応えながらも、「そ、そうだねー……!」と口を引きつらせながら言っていく。

 

 ぬしポケモンを探すという話から、休憩無しでオンタケ山を駆け巡ったこの数時間。アタシは無尽蔵というレベルではない体力お化けのクルミ君に終始と手を引かれ続けており、アタシはずっと「ま、待って! 待って!! 速い!! 速いぃっ!!!!」と、絶叫混じりの悲鳴を上げながら、引き摺られるようにクルミ君と山の中を走り続けていたものだ。

 

 パートナー達を、モンスターボールに戻してもらえる暇も与えられなかった。そのことから、アタシのことをずっと後ろから追いかけてくれたサイホーンやマホミル、ミツハニーは疲労でぐったりとしており、椅子に座るアタシの後ろで、転がるように存在していたものだ。……いや、もはや倒れているという表現が正しいかもしれない。

 

 一方で、数時間の間ずっとサイホーンの上に乗っていたラルトスは、むしろ元気が有り余っていた。ラルトスはアタシの膝の上でワクワクとしながら、コンロで肉を焼いているグレン君へと小さな手を伸ばしていくと、「熱いから気を付けろよ」とグレン君から言われながらそれを受け取るなり、ラルトスはそれをすぐさま頬張って満足げに食べていく。

 

 ……というか、ポケモンという本能に闘争が根付いた生物をも凌駕する体力って、クルミ君こそがポケモンのような生態をしているんじゃないの。パパだって、ポケモンの研究もそりゃ大事なんだろうけれど、一刻も早く解明するべきは、このクルミ君の身体能力についてなんじゃないのかな――

 

「おいクルミ。同意を強いるな。ヒイロはお前さんに振り回されて、今は食いモンも口にできねェほどに疲れ切ってんだ。お前さんも、手を引いているヤツが同年代の女子ってことを自覚してだな――」

 

「え??? ヒイロ、疲れてたのか! 大丈夫か!!? 何があったんだ!!?」

 

「だから!! お前さんのせいだって言ってんだろうが!!!」

 

「え??? オ、オレぇ!!!?」

 

「ったりめーだろ馬鹿っ!!! 無自覚を通り越して、いっそ清々しい反応だなおい!!!」

 

 轟々と声を出すグレン君に反応するかのように、バーベキューコンロからも一気に火が噴き出していく。アタシがそれにビクッとしていくその間にも、ラルトスはグレン君へとお肉をねだるためにまた手を伸ばしていくのだ。

 それをグレン君から受け取っては、一切と冷まさずにラルトスは口へと投げ入れてもぐもぐと噛みしめていく。表情もウキウキとしたものから全く変えず、しかも熱いものもまるで平気なこの様子に、グレン君は「本当によく食べるな……」と小声で呟いていくばかり。

 

 ――それとは別に、アタシは突き刺さるような視線を向けられ続けていた。

 クルミ君が楽しそうにアタシへと話し掛けていく度に、グサッと刺さってはアタシを貫通していく、殺意しかうかがえない鋭利な一直線。

 

 ものすごく不機嫌なカナタさんが、不愛想な表情をしながら目だけでアタシを見てきていた。確かに口を動かして肉を頬張っていたものだったが、どちらかと言うとその様子は、やけ食い……。

 

「カ、カナタさん。アタシに何かついてる、のかな……?」

 

「…………」

 

 無言。ただただ無言。むしろ話し掛けるなオーラを醸し出し始めた、目に見えない周囲の重圧な空気。

 うわぁ……アタシ、やっぱ彼女に何かしちゃってたのかなー……。心当たりの無い無意識なところで不安になっていくアタシが、申し訳なさに溺れて次第と視線を落としていく中で、グレン君は相棒であるセキタンザンに火の番を任せるなり、そう言い出してきたのだ。

 

「クルミ。そろそろ切り上げるぞ。あっちに川があるから、鎮火するための水をバケツに汲んでこい」

 

「え?? 火を消すんなら、カナタのインテレオンがいるだろ??」

 

「クルミな、こういうのは雰囲気っつーもんも大事なんだよ。たまにはポケモンの力を借りずに、人力で水を調達して火を消していく。そうすりゃあ、このオンタケ山の自然とより触れ合える機会にもなるし、何せ、その道中でぬしポケモンと出会える可能性も出てくるだろうよ」

 

「おおおぉ!!! そうか! なるほど!! 分かった!!!」

 

「単純だな、お前さんは……。おいカナタ。クルミについていってやれ。こいつ一人に行かせたら、興味が湧いた他の所へと行っちまって、ここに帰ってこねェかもしれねぇからな」

 

「言われなくてもクルミについていくつもりだったから、放っておいて」

 

「余計なお世話だったな。話が早くて助かる。さ、二人はバケツを持って行った行った」

 

 と、クルミ君とカナタさんを追い払うように手でしっしっとしていくグレン君。クルミ君もクルミ君で「カナタ!! もし、ぬしポケモンがいたらさ! 二人でそいつ倒してグレンとヒイロを驚かせようぜ!!!」とニシシ笑みを浮かべており、そんなクルミ君に対して、「……うん」と、今までに見せてこなかったような微笑と共にカナタさんは頷いていくのだ。

 

 そして、バケツを持って川へと向かい始めていく二人。

 ……ふぅ。ようやく、気持ち的にも休めるかな。アタシはぐでーっと脱力気味に椅子の背もたれに寄り掛かっていくのだが、二人の背を見送るグレン君が頃合いを見計らうように椅子に腰を掛けていくと、アタシへと向き直りながらそれを喋り始めた。

 

「ヒイロ、無理して俺らに付き合う必要はねェからな。ヒイロは同年代のチャレンジャーとつるむのは初めてだっつってたもんだからよ、この状況になんも疑問を持たねェんだろうが。でも傍から見りゃあ、クルミもカナタもかなりの曲者だ。二人には申し訳ねェが、俺は少なくとも、あいつらはかなり変わった人間だと思っている」

 

「……かなり変わった人間?」

 

 なんだか、真面目な話っぽい。アタシはすぐにも体勢を直してグレン君と向き合っていく。

 

「クルミはな、小せェ頃からずっと、あんな感じだ。分け隔てなく誰とでも接することができるその人間性こそは、誰もが持たねェ唯一無二の個性であって、あいつの良い所だと思っている。だが一方で、元気すぎる。とにかく行動力に長けた長所がむしろ短所として働く場面が非常に多いもんだからよ、厄介事もしょっちゅう引き起こして周りから怒られるんだ。でもな、クルミはそんなことをまるで気にしねェ。ポジティブすぎんだよな、あいつの思考回路は」

 

「確かに、クルミ君ってすごく元気だよね。アタシ素直にすごいなぁなんて思ってたけど、やっぱクルミ君だけの個性だったんだ」

 

 セキタンザンがバーベキューのコンロから網を取り出し、その中にあった炭を手で摘まんで自身に乗せていく。

 そうして相棒にコンロの処理を行わせていく間にも、グレン君は真っ直ぐな眼差しをアタシへと向け続けながら、話の続きを行っていくのだ。

 

「クルミがポジティブすぎることを考えると、カナタはその逆を行っているとも考えられるっつーもんでよ。カナタという奴もまた、クルミとは別の方向性で吹っ切れている人間性を持つ女子でな。まぁ……それとなく言っちまえば、カナタは、クルミの個性に救われた人間なんだよな。こいつぁ本人が話すべきデリケートなもんでよ、俺が周りに言いふらす事柄じゃねーもんだから、それ以上のことは口にできねェ。ただ、それもあってかカナタは、クルミに執着――違ェな。依存、しているとでも言えるか。とにかくカナタは、今クルミがお熱なお前さんにやきもちを妬いている状態でよ。ま、そういう事情があるっつーことだけを理解していてくれりゃあ、睨まれるような視線も少しは気にならなくなるだろうよ」

 

「そうだったんだね。……アタシてっきり、カナタさんの気に障るようなことを無意識にしちゃってたのかなって不安に思ってた。まあ、実際に気に障っていることは確かなんだろうけど……」

 

 その時にも、遠方から掛けられた大きな声。それがクルミ君であることがすぐに分かると、彼とカナタさんが二人で歩いてくる様子と共に、グレン君が動き出していく。

 

「っつーもんでよ、ヒイロは無理してクルミやカナタと向き合わなくてもいいってことだ。気持ち的に辛くなってきたら好きに離れていいもんだし、俺らも離れるヒイロを追いかけたりはしねェ。こいつはあくまで、ジムチャレンジの最中に出会ったポケモントレーナー同士という関係にすぎねェもんだからな」

 

「ありがと、グレン君。おかげで少し、気持ちが楽になったかも。――ただ」

 

 膝の上のラルトスを抱えながらアタシが立ち上がると、それに続くかのようにアタシのパートナー達も身体を起こしていき、グレン君へと向いていく。

 

「アタシ達、今をすっごく楽しんでるから! 何なら、今までにしたことがない体験ばかりで、ものすごく新鮮にさえ思ってる! こんなに充実とした日々なんて全くしたことが無かったものだから、カナタさんとはまだあまり話せていないけれど、クルミ君に振り回されるのも嫌とは思ってないんだよね。……アタシのことを、わざわざ気に掛けてくれてありがとね。グレン君も、他人への気遣いがチョー上手くて、アタシすっごい信頼してるから!」

 

「……お、おぉ。そうか。おう。……悪くねェな、こういうのも」

 

 あ、なんかちょっとだけ可愛いと思った。

 強面のグレン君が、ほんの少しだけ動揺していた。照れも若干とうかがわせる様子で目のやり場に困らせていた彼だったものだが、ゴホンッと一つの咳払いで気持ちを切り替えて、セキタンザンへと手を添えていく。

 

「とにかくだ! ヒイロ、何かあったらすぐに、俺に言え。あいつらの相談事なら絶対に乗るもんだしよ。それ以外のことでもあろうとも、まぁ、俺が乗れる相談には乗ってやれる。同年代だからと言って、皆が同じ事や考えができるってわけじゃねーからな。人には、できる事とできねェ事がある。それがたまたま、俺にはできて、ヒイロにはできねェもんであるのなら、ヒイロがそれをできるようになるまでの手助けを、俺はしてやれなくもない。っつーだけの話だ」

 

「…………グレン君、絶対に女子からモテるでしょ」

 

「なに馬鹿なこと言ってんだ。おら、後片付けを手伝ってくれ」

 

「はーい」

 

 ニヤニヤ。アタシから向けられたからかいの視線に、グレン君は敢えて逸らすかのような目でコンロの片付けに取り組んでいったものだ。

 

 そうして水を汲んできたクルミ君とカナタさんも合流したアタシ達は、陽が落ちる前にオウロウビレッジへ戻るためにオンタケ山の山道を辿っていくのだが、ふと、その途中にも、アタシはやけに見慣れたこの道に、ここがマリルリ達の住む一軒家と近いことに気が付いた。

 

 ……近くまできたことだし、少しだけ顔を出してこようかな。

 そんなことを思い立ちながらも、マリルリ達の安息の地を他の人に教えたくなかったアタシは、「ちょっと、お手洗い! 先にオウロウビレッジに戻ってて!」なんていう適当なことを言いながらクルミ君達と別れるなり、アタシはあの一軒家を目指して森の中へと入っていったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。