オウロウビレッジジムの戦いが幕開けとなった瞬間にも、ニュアージュさんは繰り出したフリージオへとすぐさま命令を出していった。
でも、そんなこと関係無い。アタシもすぐさまとマホミルに指示を出していき、ジムリーダーに対抗するための布石を打っていく。
「フリージオ! ひかりのかべで防御面を厚くしたら、げんしのちからでマホミルを攻撃してください!」
「マホミル!! とける!! そこからマジカルシャインでフリージオを壁ごと攻撃して!!」
双方で繰り出された、自身の耐久力を上げていくわざ。フリージオは自身の周囲に張り巡らせた透明な壁によって、マホミルが扱う特殊技の威力を大幅にカットしてくる戦術のようだ。
こちらは、とけるによって防御力を上げていく。とは言っても、相手はげんしのちからという特殊技を繰り出してきたために、その意味はあまりなさない。
……ま、とけるはそれ目的で指示したわざなんだけどねー。
すぐにもマホミルがマジカルシャインを放ってフリージオを攻撃していくのだが、そう易々と攻撃を受け付けないと言わんばかりに、フリージオのげんしのちからがマジカルシャインを相殺してくる。
互いに特殊技をぶつけ合う開幕。それらによって生じた煙が視界を覆ってくる中で、アタシはマホミルに特攻を指示していく。
「攻撃の手を休めないで!! マジカルシャインをしながら接近! そこから、とける!!」
「ヒイロ様、とけるにこだわっておりますね。――フリージオ相手に防御力を上げていく算段は、フリージオというポケモンの情報に乏しいからであるか、それとも……。フリージオ! とけるからのコンビネーションには注意していきましょう。あやしいひかり!」
変化技で攻めてきた……!
煙を突っ切り、フリージオの前まで接近したマホミルがマジカルシャインをぶっ放していく。そんなマホミルへとフリージオはあやしいひかりを繰り出してきたことで、マホミルはそれに直撃――しそうになった。
だが、ここでもとけるは有効に働いた。マホミルの液状が分散するようにバンッ!! と弾け飛ぶと、そうしてあやしいひかりを回避していくだけでなく、弾けた勢いでマジカルシャインの質量をもった光の粒に追い付いて、それを体内へと取り込んでいくのだ。
そして、じこさいせいで即座に形を成し、液状の身体に大量と含んだマジカルシャインの技エネルギーを抱えながら、マホミルお得意の体術戦へと持ち込んでいく!!
「マホミル!! いつものように暴れちゃって!!」
「ヒイロ様が、何かを仕掛けてきます! フリージオ! こごえるかぜで弱体化を図ってください!」
アタシの指示で真っ直ぐと飛んでいったマホミル。そんなこちらの戦法にけん制を仕掛けてきたニュアージュさんは、フリージオに命じたこごえるかぜによってアタシの目論見は半分おじゃんとなってしまったものだ。
フリージオが放ってきたこごえるかぜが周囲に漂い始めていくと、それの影響を受けたマホミルの突撃していく速度がじわじわと遅くなっていく。
ウソ! アタシが内心で驚いている間にも、フリージオに難なく避けられてしまうマホミルの突撃。それを空ぶったことでただ単に空虚で終わってしまった、マホミルの特攻――
「今だよマホミル!! とける! からのアシストパワー!!」
バァンッ!!!! 弾け飛ぶようにとけたマホミルの身体。液状のそれがフリージオにより近づくよう飛んでいくと、その中からは含んでいたマジカルシャインが一気に放出され、フリージオに直撃していく。
不意の攻撃に、フリージオは怯んでいく。しかも、こうして晒した隙へとぶっ込むアシストパワーの光がフリージオへと一閃。ただの光とは思えない衝撃波を伴った一撃でフリージオが後方へと吹き飛んでいくと、その身体は空中で回転をして、いかにも余裕そうに体勢を立て直していく。
……くそ、ひかりのかべで、せっかくの戦法が軽減されている!!
「フリージオ、ひかりのかべでマホミルを閉じ込めてください」
次の時にも、フリージオから放たれたエスパータイプの技エネルギー。それが透明な壁を生成してマホミルを囲っていくと、次の瞬間にも、ニュアージュさんは慈悲の無い攻撃を食わらせてきたのだ。
「ぜったいれいど」
うそ!? アタシは「マホミル!! 何としてでも避けて!!」という焦りからの無茶ぶりで、マホミルにそのわざが危険極まりないことを教えていく。
だが、マホミルはひかりのかべに囲まれたことで、より闘志に火が点いてしまった。やってやるぜ!! なんて表情を浮かべながらフリージオへと真っ直ぐ突っ込んでいってしまうのだが、透明でよく見えないひかりのかべに衝突するなり、ゴンッ! と音を出してマホミルが立ち止まっていく。
この間にも、フリージオから一気に放出された、一撃必殺の大技。それは大気を触れられるほどまでに凍らせながら、とても薄い冷気となってマホミルへと襲い掛かると、マホミルもさすがに危険だと察したのかそれへの回避に専念して動き出していく。
だが、真の地獄はここからだった。ぜったいれいどがひかりのかべと接触すると、ガンガンに凍り付いたひかりのかべが突如と発光を始め、そこからぜったいれいどの冷気を反射するかのように、勢いよくとマホミルへ飛ばしてきたのだ。
「やばっ――!! 避けて!!! マホミル避けて!!!」
必死になって声を荒げるアタシ。こちらの必死さが伝わってくるのか、はたまた、ぜったいれいどというわざを本能で察することができたのか。マホミルは大慌てな顔を見せながらも反射してきたぜったいれいどを避けていくのだが、凍り付いたひかりのかべが板チョコみたいに割れると、それは複数のパネルとなってマホミルへと襲い掛かり始めていく。
「フリージオ! あやしいひかりを交えて、マホミルの疲弊を狙ってください!」
「とける!!! とけるで回避!!! とける! とけてぇえええええ!!!」
指示の仕方に、品性の差までもつけられる。
マホミルは、とけるによる分離とじこさいせいによる再生で、フリージオの一撃必殺の猛攻を何とか凌いでいたものであったが。それにしても、ニュアージュさん冒頭から飛ばしまくっていて、それだけ自身の家族と呼ぶ野生ポケモン達を守ってくれたアタシの力量を測りたくて仕方がないようだ。
……ならば、アタシもまた、その期待に応えるまで!
「マホミル! 凍り付いたひかりのかべにマジカルシャイン!! そこで反射させまくって、フリージオへとぶつけていって!!」
「ならば、わたくし達も参るといたしましょう。ぜったいれいどの冷気で凍らせたげんしのちからで、マホミルを攻撃してください!」
本気で仕留めに掛かってきた!
フリージオがいわタイプの技エネルギーで生成してきた、ゴツゴツとしながらも太古の力強さを思わせる立派な岩石の数々。それがフリージオの周囲を漂い始めると、自身を守る防御壁であるひかりのかべに敢えてぶつけることで、そこからの反射でより速度を高めた発出を行ってくる。
だが、マホミルはそれらを頑張って避けていた。それでも分散した身体に岩石を受けて声を漏らしていくマホミルであったものだが、ぜったいれいどを受けるよりはだいぶマシだ。
それでいて、アタシはちょうど良さそうな岩石を探していき、ふと目についた、凍り付くひかりのかべに張り付いてしまったげんしのちからの残り物を発見するなり、アタシはそれを指示していくのだ。
「マホミル!! あの壁に向かって、じこさいせい!!」
「……?」
ニュアージュさんがあまりにも不思議そうにする表情を見せていく間にも、マホミルは急ぎでそれへと飛んでいってじこさいせいを行っていくと、凍り付いたひかりのかべに集結したマホミルの液状の身体が、なんと壁の形になって元通りとなってしまった。
そして、アタシはそれを命じていくのだ。
「マジカルシャイン!! そこから、アシストパワー!!!」
ひかりのかべによる縦長な姿となったマホミルは、身体の面積が伸びていた。そこから放たれたマジカルシャインは、より広範囲となってフリージオへと襲い掛かると、フリージオも自身がまとうひかりのかべでそれらを防ぎつつ、しかし光の粒による視界不良で、次にも飛んできた強大な一撃に対応することができない――
回避で使ってきた、とけるによる防御上昇の効果。それらによる上昇の効果を力の源とするマホミルのアシストパワーは、次の時にも縦長の超極太ビームとなってフリージオめがけて放出された。
これには思わず、ビームの先に座っていた観客達が悲鳴を上げていく。そういったエネルギーへの対処として、観客席には技ネネルギーを遮断する透明な防壁が張り巡らされていたものだから、マホミルのアシストパワーは観客に直撃するという直前で消失するように防がれていくのだが……。
フリージオのひかりのかべは、技エネルギーを遮断することができない。
雪の結晶というその身体が、少なからずの素早さであったことから、機敏な動きでこの攻撃を避けようとしていた。しかし、マホミルの超極太アシストパワーが、フリージオの動きを上回ったらしい。
エスパータイプの技エネルギーに呑み込まれるその身体。ひかりのかべという自身を守る防御壁が、この最高火力の一撃をなんとか軽減していたみたいだが、ビームの中で必死に耐えるフリージオに襲い掛かる、さらなる悲劇――
「マホミル!! げんしのちからが凍ってくっ付いていたその岩石を、フリージオへ!!」
この指示と共に、マホミルはアシストパワーの中に岩石を紛れ込ませていった。
マホミルによって剥がされた岩石はすぐにもアシストパワーの勢いに乗り、エネルギーに呑み込まれて形も見えなくなったこの粒は、まるで襲い来る暴風によって飛ばされてきたかのようにフリージオの纏うひかりのかべに接触すると、その岩石は壁に弾かれながらも、アシストパワーで押さえ付けられて動けない状態になる。
そして、ビームの勢いでぐりぐりと押されていったげんしのちからは、この割と小さな面積がよりひかりのかべを消耗させる要因となって、その部分だけにひび割れを生じさせていった。
ピキッ、バリバリ。フリージオの視界に入るそのわずかながらの隙間から、エスパータイプの高出力エネルギーが侵出していく――
「フリージオ!!」
ニュアージュさんの、珍しい叫び声。
次にも、フリージオはマホミルの全開アシストパワーに巻き込まれ、観客席の防護壁に叩き付けられていった。
観戦客の目の前で、それにべったりと張り付いたフリージオ。アシストパワーの勢いが弱まると共にするするっと落下をしていったフリージオは、スタジアムに落ちるなりバリンッと危ない音を立てながら地面に突っ伏していく。
……勝負がついたか。静かになったスタジアムの中で審判が様子をうかがっていくと、完全に動かなくなったフリージオから下した判断と共に、「フリージオのひんしを確認!! フリージオ、戦闘不能!!」の声で旗を振り上げていくのだ。
「っしゃあ!! まずは一本!! マホミル、ナイスナーイス!!」
アタシは、歓喜のままにグッジョブとマホミルに親指を立てていった。
そんなアタシからのそれに対して、マホミルは消失したひかりのかべから元の姿に戻り、早く続けて戦いたいといった具合にやる気十分な顔を見せていく。
そうしてアタシらがワイワイとやっている間にも、ニュアージュさんはフリージオに労わりの言葉を掛けて、モンスターボールに戻していった。
すぐにも、次のモンスターボールを取り出していくニュアージュさん。彼女と交わす言葉はなく、目だけで語り合うその空間……。
そして、ニュアージュさんは審判を確認してから、手に持っていたモンスターボールを思い切り投げていったのだ。
「オウロウビレッジに吹きすさぶ、吹雪の如く! お願いします、グレイシア!」
ニュアージュさんの闘志と共鳴するようにボールから出てくると、そのポケモンは地に足をつけるなり凛とした佇まいでこちらと対峙してくる。
水色の体色を持ち、もみあげのような毛が特徴的な四足のポケモン。その見た目の愛くるしさから、アタシは「あのポケモンも初めて見る……」なんて呟きながら見惚れてしまっていたものだ。
しかし、相手はジムリーダーのニュアージュさん。彼女が扱うグレイシアというポケモンもまた、フリージオと同様の凍てつく冷気をまといながら向き合ってくる。
可愛らしい見た目とは相反する、溶けぬ氷に燃やした闘争への意気込み。マホミルと向き合うグレイシアに違反が無いことを確認した審判は、その判断で頷いていくなり旗を前に出し、そして、それを思い切り振り上げることで試合の再開を告げていくのだ――