「オウロウビレッジーー!! 今までありがとーー!! アタシ、絶対にまた来るからねーーー!!」
早朝のオウロウビレッジ。オンタケ山という過酷な環境を乗り越えてきた旅人を出迎える看板の前で、アタシは振り返ってその全体へと声を掛けていった。
清々しい朝に相応しい、感謝の言葉とこだまするアタシのそれ。それが近くの滝が落ちる轟々とした音に掻き消されながらも響かせると、満足といった具合にオウロウビレッジから背を向けて、滝から流れ出てくる川とここを繋ぐ橋を渡っていく。
その先では、クールな佇まいで軽く腕を組んでいるユノさんが待っていた。こちらを微笑ましく思う穏やかな表情で見遣る視線に、アタシは抱えたラルトスと一緒に彼女へと向かって新たな旅路へと踏み出していくのだ。
――と、こうして次の目的地を目指し始めた、その瞬間だった。
「おーーーーーい!!! ヒイローーーー!!! もしかして、オマエもオウロウビレッジを出るのかーーーー!!?」
アタシ以上に響き渡らせた、本当に活発的なその少年。
耳に入ったそれへとまた振り返ると、そこからは手を振りながらアタシへと走ってくるクルミ君の姿。ニッコニコな笑みで疲れ知らずの無尽蔵な体力で駆け寄ってくると、全速力だったにも関わらず一切と息を切らさずに合流を果たしてくる。
「クルミ君? もしかして、クルミ君達もここを出るの?」
「おうッ!!! なぁ聞いてくれよヒイロ!! オレ、昨日やっとニュアージュに勝ったんだ!!! 四回目のチャレンジでかなり大変だったけど、これで七個目のバッジをゲットしたんだぜ!!! でな! 残るはナガノシティのバッジ一つのみ!! それで八個目になって、ジムチャレンジクリアになるんだ!!! まー、でもその前に、グレンが『ママタシティ』のラオっていう、ジムリーダーとポケモン博士を両方やってる人に負けてるから、そのリベンジで『ママタシティ』に寄るんだけどね!! ほら、グレンっていわタイプ使ってるじゃん??」
「『ママタシティ』……。そこ、アタシが次に行こうと思ってた場所なんだよね」
「ホント!!!? え、じゃあ一緒に行こうぜ!! な!!?」
「おいクルミ!! 急に走り出すんじゃねェ!!!」
と、クルミ君の後ろから焦り気味に追い付いてくるグレン君の姿。
共にしてカナタさんも表情を一切と変えない様相でクルミ君に追い付いて、そんな彼の対象がアタシであることを知った瞬間にもこちらを睨みつけてくる。
だが、クルミ君はそんな二人のことなんておかまいなしだった。
……アタシの後ろにいる、白髪ポニーテールのユノさんの姿を見たものだったから。
「え?? あれ!? この前の超強ぇオネーちゃんじゃん!!! ゾロアーク使ってたさ!」
「そう言えば、クルミ君戦ってたね。あの人はユノさんって言って、アタシの旅に付き添ってくれてるすごい人だよ」
「えぇーーーー!!! いいなぁぁああああ!!!! ねね!! またオレとバトルしてくれよオネーちゃん!!! ――あ、グレン! カナタ! ヒイロがさ、次はママタシティに行くんだって!!! だから、一緒に行こうぜって話になってさ!!!」
「おいクルミ。ヒイロが困惑してる顔で、お前さんが一方的に持ち掛けた話だってことが分かんだよ。……で、ヒイロ。そこんところはどうなんだ」
「ちょっと待ってね」
すごい勢いで流れていく会話。この圧倒されるほどの力強い会話の雰囲気もまた、クルミ君達のグループの面白い所でもあるんだけども。
で、アタシはユノさんへと振り向いて、それを訊ね掛けていった。
「ユノさーん! こっちの三人、アタシがここで知り合った同い年のチャレンジャーなの! 一緒に行動してもいいかなー!?」
「私は構わないわー! これはヒイロちゃんの旅なんですから、ヒイロちゃんのやりたいようにやっていきなさーい!」
距離の空いた空間でのやり取り。ユノさんからの快い許可ももらったことから、アタシはクルミ君へとそれを伝えていく。
「いいって! じゃ、一緒に行く?」
「おうおうおう!!! やったなグレン! カナタ! オレ達のジムチャレンジに新しいメンバーが入ったぞ!!!!」
「おいクルミ。入ったんじゃなくて、お前さんが割り込んだんだろ。――ま、本人達から許可をもらったんだ。旅の道連れが増えるってことには、俺は別に反対はしねェ。カナタ、お前さんはどう思う?」
「……クルミの決めたことだから、私は異論なんかないし」
異論が無いと言いながらも、カナタさんはものすごく不服そうな顔をしてユノさんのことを眺めていた。
……あちゃー、ライバル増えたって思っちゃったかな。アタシはグレン君と目を合わせて互いに複雑な顔をしていきながらも、「じゃ、これからよろしくね、三人とも」と、アタシはラルトスと一緒に、クルミ君とグレン君、カナタさんという新たな旅のメンバーに改めて挨拶を行っていった。
――ものすごく賑やかな旅になりそうだ。
次に目指す場所は、『ママタシティ』。シナノ地方の最南端に位置する大きな地域で、そこではポケモン博士を兼任する、はがねタイプのエキスパートであるジムリーダーのラオさんが待ち受けている。
ママタシティには、シナノ地方と他の地方を結ぶ港もあることから、これまでの旅の中で今まで見ることが無かった広大な海を、ようやくと拝むことができる。アタシはそれも楽しみにしながらも、同時に現在の手持ちではがねタイプに有効なメンツがあまり揃っていないことから、それも道中で対策しなきゃなとも考えていた。
ま、今回の旅にはクルミ君たち三人組も同行することになった。そこにユノさんも合わせれば、みんなが実力者というアタシだけ場違い感たっぷりな面々になってしまったものだが、それだけ皆から得られるものも多いと考えれば、むしろ現在の状況はポジティブに捉えることが簡単だ。
アタシは、クルミ君に手を引っ張られながら駆け出していった。そんな彼が、ユノさんの強さに興味津々な質問をいっぱいしていく会話の光景が展開されて、でもって暴走気味なクルミ君にツッコミを入れながらも、ユノさんに謝っていくグレン君や、今もみんなの背後から、禍々しいオーラを放ってアタシとユノさんを見遣るカナタさんというこの日常……。
……旅がもっと楽しくなってきたかも!
オンタケ山の道中を和気藹々と歩くこの空間に、アタシは気持ちがより前向きとなってこの世界を生き続けることができるのだ。
次に目指す目的地も決まっている。場の空気に流されるまま既に開始されたアタシの次なる冒険は今、始まったばかりだ――!!