ポケモンと私   作:祐。

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 作者の肉まんたんこぶです。
 ご愛読いただいている読者の方々であるならば、題名に前書きありと付いていることから、大方の察しはつくかと思われます。

 昨日にも91話として投稿をいたしました『アクティビティを介して』というお話もまた、作者自身がその話に面白さを見出すことができなかったために削除をいたしました。

 引き続き、ポケモンと私をお楽しみください。

      ――――肉まんたんこぶ――――


ママタシティ (前書きあり)

「ラルトス!! あっち! 『ママタシティ』って書いてある門が見えるよ!!」

 

 抱えたラルトスが見えるように指を差していくアタシ。真昼である現在時刻の、食後の運動とも言える目的地を目指す道中で、アタシは次なるジムが待ち受けている『ママタシティ』に到着することができた。

 

 オオクワビレッジの名残である、くるぶしくらいまでの浅い川が脇で流れていく道。光景はすでに人の手によって埋め立てられた街道へと変化していて、アタシが『ママタシティ』を目指して歩いている間にも多くの人々やポケモン達とすれ違っていた。

 

 特にこれといった特徴の無い、至って平凡な緑の地であるここ。オオクワビレッジとママタシティを繋ぐママタどうろの名前が付けられたこの道は、緩やかな坂道が上下と起伏になっていたり、オオクワビレッジの特徴でもあった浅い水流があちこちで見受けられることから、コダックやブイゼルといった足を持つみずタイプのポケモンが多く生息している。

 

 また、ママタシティからは少し離れてしまうが、浅い川を挟んだ向こう側には赤色や白色、黄色から青色までの多種多様な花々が咲くお花畑が広がっており、そこにはワタッコやヒマナッツ、ニャースやポチエナなどの野生ポケモンが姿を見せていたものだ。

 

 かと言って、じゃあママタシティは他の地域と比べると、これといった特徴が特に無い場所なのだろうか? と問われると、いや、それはまた違うともアタシは言えたかもしれない。

 というのも、ママタシティという地域は、シナノ地方における貿易の要とも言える重要な役割を果たす地域でもあった。そうして他地方との交流が盛んである大きな港を持つママタシティには、山の国シナノ地方では最も珍しい光景となる、絶景の大海原を眺めることができるという長所があった。

 

 他、ママタシティやその付近では、ちょっと変わった野生ポケモンが生息していることでも有名だった。

 他の地方との貿易という関係で、シナノ地方との交流を行う世界中の船が海からやってくる。そうして海を渡ってきた貿易船には、海外から輸入してきた様々な物資やポケモンが運ばれてくるものであるが、そういった海外からやってきたポケモンが野生化することによって、そのままシナノ地方に住み着いてしまうという問題も例年とニュースになっている。

 

 まぁ、アタシのアローラロコンがまさにその例でやってきたポケモンである。アタシのロコンもまた、アローラと繋ぐ貿易船に乗り込んだ野生ポケモンであり、それがそのままシナノ地方に住み着くことでオウロウビレッジにまで迷い込んできたという経歴の持ち主。そんなロコンが体現してみせたように、他の地方からやってきたポケモンもまた野生化することでシナノ地方に居座ることとなるから、そういった外からの来訪者をよく、ママタシティやその近辺で目撃することが非常に多くあるのがこの地域の特徴とも言えただろう。

 

 それを裏付けるように、先ほどにも描写した浅い川には、コダックやブイゼルの他にも、人型のようなヤモリっぽいポケモンが迷い込むように浅瀬を歩いていたりと、あからさまに浮き出た存在感を放つポケモンをよくよく見かける。

 そのポケモンは、ユノさん曰くエンニュートと呼ばれる、メスの個体のみが進化することができるという非常に珍しいポケモンであることが分かった。アタシはそれを見てからというものシナノ地方にはまるで馴染みの無いエンニュートという存在に、とても惹かれるような、すごく珍しいものを見てしまったような気がして、ちょっと得した気分になれたものだ。

 

 でもって、お花畑にはワタッコやヒマナッツが見受けられると言ったが、それらに交じるようにお花畑を浮遊しているダンバルもアタシは発見することができた。ダンバルというポケモンも非常に馴染みが無い上に、そもそもとしてそのポケモン自体に希少価値があるということで周囲のポケモントレーナーが血眼となってゲットのチャンスをうかがっていたものだ。

 

 尤も、そんな珍しいというエンニュートやダンバルという外来種にテンションが上がっていたのは、何もアタシや周囲のポケモントレーナーだけじゃないわけで……。

 そういったポケモンらを見かけては、「うおおおお!!!!」と歓喜しながら駆け出していくクルミ君。それに対してグレン君がいつものように「おいクルミ!!!」と彼を止めるべく走り出していくのだが、その二人があまりに騒がしくやっていくもんだから、珍しいというポケモン達もそれにビックリして逃げていく始末――

 

「アッハッハッハ!!! また逃げられちったよーーー!!! やっぱ他の地方から来てるってだけあって、一筋縄ではいかないなーーー!!!」

 

「おいクルミ。お前さんが野生のポケモンを驚かせるから、ああして逃げられてるってんだ。……ったく、せっかくカムカメってやつを見つけたってのに、クルミが大声を出すからどこかに逃げられちまった……っ」

 

 浅瀬で全力疾走したクルミ君が、びしょびしょになって帰ってきたその姿。こんなにも浅い川で、逆によくそれだけ濡れることができたなと思えるくらいに、彼はずぶ濡れとなりながら満面な笑みを見せて愉快に笑っていたものだ。

 グレン君もまた、若干と悔いる様子で首に手を当てて周囲を眺め遣っていた。そのカムカメというポケモンの進化系がいわタイプを持つということで興味を持ったグレン君であったのだが、その成果が振るわずにため息をついていく。

 

 で、そんなクルミ君とグレン君にタオルを渡していくカナタさん。何だかんだでクルミ君以外にも優しいところをたまに見せていくものだから、グレン君とはあまりうまくやれていない様子を見せながらも、さすが三人で旅ができているだけの関係性ではあるんだなと思いながらアタシはボーッと佇んでいた。

 

 とか何とかママタどうろで色々ドタバタやって、だいぶ道草を食ったジムチャレンジの旅路。陽が傾きかけてきた時刻になって、ずっと見えていたママタシティ入り口の門をくぐることでようやくと到着したその大きな街。

 

 ママタシティ。山の国という緑の豊かな山脈を背景にしながらも、その大地には人工物が詰め込まれたような建物の密集地帯という景色が広がる賑やかな街。港があることで有名なこの地域ではあるが、今現在とアタシらが存在している場所は、その港とはほぼ正反対の方向にある内陸側の地区であったため、内心では一目見ることを楽しみにしていた一面の海も、まだまだお預けというもどかしい気分にアタシは苛まれる。

 

 平坦な地に集合した住宅街や、街道と言うには横と縦に伸びた広場とも言い換えられる、広すぎでありながらもポケモンを含めた人口密度によって行き交う人々の波。そしてそれらが出入りを行う、三百六十度と見渡すかぎりの出店が目立つ、数えきれないほどのお店が並べられた商店街。

 今までと巡ってきた地域と比べると、派手さこそは無かったかもしれない。だが、シンプルイズベストとも言うべきか。目に入る情報量が少ないからこそ受け入れられる要素もたくさんとあることで、すぐにも馴染める空気感と、歩いて三分以内の場所にもいろんなお店が揃っていることから、日用品や食料には当分困らないような、便利さを兼ね揃えた実に過ごしやすそうな土地が特徴的な地域だ。

 

 ……まぁ、さすがにごった返した人混みの街道を歩いている分には、とても住みやすい環境とは言い難いところもあったけれども……。

 

「ラルトス、しっかりアタシにくっ付いててね。多分ここではぐれたら、会うのすごく大変だと思うから。ね、ユノさん。グレン君もいるよね? カナタさんも、そこにいるね。で、あとは、クルミ君――」

 

 人波に呑み込まれながらも、旅するメンバーを確認し合って海を目指していく一同。

 ……だが、ママタシティに入ってすぐというこの時にも、行き交う人混みに呑まれたのだろうメンバーの一人がすでに姿を消していたことに、アタシやユノさん、グレン君やカナタさんが気付いていく。

 

「おいクルミ。おいクルミ!!? ――クソッ!!! この混雑だ。別に仕方ないとはいえども、こいつはちょいと面倒なことになったぞ……!! カナタ!! お前さんもクルミを見失ったんだな!?」

 

「……正直、想定外。私も、この人混みに気を取られてて……!! クルミ!! クルミー!! ――チッ、私からクルミを引き裂く人混みなんて〇んでしまえばいいのにッ!!」

 

「待てカナタ!!! こんな中でひとり動いたら、それこそお前さんも――。あぁ、クソ!! 行っちまった!! わりぃ、ヒイロ! すまねェです、ユノさん! 俺はちょいと二人を探して再合流を試みるんで、ユノさんはヒイロを連れて先に、ママタシティのジムを目指してくれるとありがてェです!!」

 

 今も道行く人々の邪魔にならないよう、端に寄りながらグレン君と会話をするこの状況。この商店街もすごい大盛況であることから、まるで映画館の中かと思えるくらいの大音量で賑わう活気が溢れすぎな騒がしい空間。

 

 グレン君のそれに対して、ユノさんが「じゃあ、私たちは一足先に五人分の宿を確保しておくとしましょう。場所は決まり次第にアプリのchainでグレンくんに知らせるわ」と答えていく。それを聞いたグレン君もまた「ありがてェです!! じゃ、俺ぁちょいと行ってくるんで、また後ほど! ――ヒイロ。今の内に、しっかり休んでおけよ。またクルミに振り回されんだろうからな、肉とかたくさん食っておけ。いいな!」と言い残して、グレン君ははぐれたクルミ君とカナタさんを探して人混みへと身を投じていったのだ。

 

 ……大変だわこりゃ。アタシはラルトスを抱えた状態で、ユノさんへと向いていく。

 そんなユノさんもまた、アタシと同じタイミングで目を合わせてきた。

 

「……ユノさん。宿、探そっか」

 

「えぇ、そうね」

 

 苦笑といった感じに、アタシはユノさんと軽く言葉を交わしてから歩き出していった。

 ママタシティに到着してすぐにも見舞われた、ハプニングとまではいかないちょっとしたこと。でもそんなことがあったからこそ、なんだかユノさんと二人で歩み進めていったこの道がまた、今までのような安心感を得ることができたものだったから……。

 

 陽が落ち始めたママタシティ。商店街から抜け出すことで、取り敢えず人混みとはおさらばをしていく。

 と、アタシは無意識にユノさんの手を取って、ぎゅっと握りしめていくことで無理やり手を繋いていった。

 

 これには、さすがのユノさんもちょっと驚いていく。

 

「ヒイロちゃん?」

 

「えへへ。なんか、そういう気分なんだもん。ね、ラルトス」

 

 片手で抱えたラルトスが、角を淡いピンク色にピカピカと光らせて応えていく。

 で、とてもニコニコな笑顔を見せながら、ラルトスもまたユノさんへと手を伸ばしてキャッキャと楽しげにしていたものだ。

 

 そんなアタシらの様子に、ユノさんは柔らかく笑んでみせる。

 そして、アタシはユノさんと二人で、ママタシティの街中を穏やかに歩き進めていったのだった。……心休まる、とても穏やかなこの一時に身を委ねながら――――

 

 

 

 

 

 

 

 ――――陽の落ちた山の国。人の手によって造られた照明が灯る中を、静けさという自然の環境音さえも思い出すことを知らないこの商店街は、現在も多くの人々やポケモンが行き交う光景をつくり出しては止まない活気で盛り上がりを見せていく。

 

 その一角に存在する、胡散臭い雰囲気を醸し出したどうぐを取り扱う小物店に訪れた、一つの人影。こんな時間に客だなんて珍しいといった、半分寝かけたその瞼でカウンター席に座る男の店主が見遣っていく。

 

 こちらへと真っ直ぐ歩んでくる、眠りかけていた意識が覚めるほどの高身長。すらりと高く、服越しからでもうかがえる細くも筋肉質な勇ましいその人物。

 すぐにも「何かお探し?」と気だるげに訊ね掛けていく店主だが、その人影は迷いの無い歩を進めてカウンター前まで来るなり、上着のポケットから取り出した一枚の写真をバッと置きながら、腹から込められた滾る闘志をうかがわせる低い声で、それを訊ね掛けていったのだ。

 

「他で話をうかがってな、ここの店主が伝説のポケモンマニアだと小耳に挟んだもんで、訊ねさせてもらいてぇんだ。……この写真に写るポケモンに見覚えはねぇだろうか? 名前は、『ギラティナ』って言うんだがよ――」

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