バグのかけらをひたすら集めるクリームランド在住のデバッガー   作:けっぺん

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エグゼ5のRTA見てたら更新出来てなかったので初投稿です。


王女に罪は似合わない-1 【本】

 

 

 光少年と伊集院少年には『待っていろ』と視線で告げてから、プライド様に通話を繋ぐ。

 使用しない予定のものも含め、誤作動に備えて落下した際の調整はしておいた筈だが、私が体を強く打ったようにもしもということもある。

 

「プライド様! ご無事ですか!?」

『え……えぇ……』

 

 言葉が返ってきたことに、ひとまず安心する。

 プライド様は言葉少なで声色だけで気まずさを感じていると分かる。

 まあ、プライド様からすれば、この局面で作戦は破綻――これは私のせいだが――し、逆転の一手でまさかの作動させる罠を間違えるという痛恨の失敗。

 ゴスペルに与した身としては、最早その先は絶望しかあるまい。

 いや――そんなことにはさせない。

 

『……あの、エール』

「分かっています。私にお任せください。すぐに話を付けて助けに行きますので、そこでお待ちを」

『へ? いや――』

 

 多分、プライド様はこうなった以上、『エールの協力を強制し従わせた』とでも言って自分だけが罪を被ろうとする。

 しかし、それはさせない。その発言は、間違っても公の場でさせる訳にはいかない。

 通話を切る。プライド様からの通話を拒否に設定し、追及も防ぐ。

 更に積み上がる罪悪感に唇を噛み、拳を握り込む。

 感情の発露は一瞬。今はやることを全て終わらせる。

 もう一度罠を停止させる。そして、訳が分からないといった様子の少年たちに向き直る。

 

「さて――待たせた。繰り返しになるが、戦いは終わりにしたい。ナイトマンをプラグアウトさせたいのだが」

「……テロ実行犯のナビをデリートさせず野放しにしろと?」

「取返しの付かないことは避ける主義でね」

 

 まったく、オフィシャルは血気盛んだ。どうしてデリートさせることが前提なのか。

 

「それなら、なんだってゴスペルなんかに……」

「言ったろ? 間違いを正すための間違いというヤツさ。プライド様を助けるためには、こうするしか考え付かなかった」

 

 いや――今は手を出さないでいるものの、いつ伊集院少年の気が変わってもおかしくない。

 必要以上の綱渡りはしなくていい。さっさと事件を誤解に変えてしまおう。

 

「だがまあ、後悔なんてしてないさ。プライド様のためなら、私はゴスペルだってなんだって騙ってやる」

「……何? 騙る、だと?」

「ああ。誰が『バグ屋』なんざに手を貸すか。クリームランドを侮るなよ」

 

 これまでの布石全てが実を結ぶ。いや、実を結ばせる。

 

「この期に及んで言い逃れするつもりなら無駄なことだ。現に被害者が出ている」

「許可済みですよ、伊集院くん」

 

 そのタイミングで、示し合わせたように二人がやってきた入口から入ってきたのは、司会を担当していた男性。

 彼は表向きの理由を話している、言わば仕掛け人。

 余計なことをされるリスクもあったのだが、オフィシャル側で説明の出来る者がいないと話が理解されない可能性もある。

 

「……どういうことですか?」

「これはヴァグリース氏に提案されたオフィシャルの対テロ訓練ということです。当然実際に怪我人を出す可能性から上層部には渋られましたが――」

 

 ――オフィシャルにとっては、そういう話になっている。

 ゴスペルは現実世界に大きな被害を与えるテロ行為を繰り返している。

 そのため、ナビを利用したバスティングテクニックだけでなく、オペレーターの現実世界における対処能力も向上させなければならない。

 そうした目的による、対ゴスペルを想定したテロ訓練。勿論抜き打ちである。

 

 怪我人、最悪の場合、それ以上が考えられる。

 だがゴスペルは配慮すらしない。本当に命の危機に瀕した時の対処能力は、本当にそういう状況にならないと培うことは出来ない。

 そうはいっても、城の罠を使い、オフィシャルの有力メンバーに危険がある。当たり前だが、そんなことを部外者である私が提案したところで受け入れられる筈もない。

 ――そんな訳で、ここで使うのは人の縁というもの。

 

「副長官、および光祐一朗氏の推薦もあったため、今回の訓練が実現しました」

「パパの!?」

 

 オフィシャルを平和に利用するために使える最大のコネ。

 現在のオフィシャル副長官。オフィシャルが信頼できるクライアントになったきっかけである人物であり、既に年単位のお付き合いとなっている。

 彼がいなければ、この対テロ訓練以前に会議に参加することさえ出来なかっただろう。

 加えて、現在のネットワーク技術の最先端たる光氏。

 彼自体はオフィシャルに関する発言能力はない。だが、彼の名前を出すことが、気心の知れた副長官にどんな効果をもたらすかはよく分かっていた。

 今回の参加者にご子息である光少年もいたことから、彼も快く名前を使うことを許可してくれた。

 

「そして結果として……どうですかね? ヴァグリース氏」

「ああ、文句なしだ。二人も残った時点で大したものだと思ったが、ここまで完璧に負けるとは思わなかった」

 

 では、次に伊集院少年が抱くだろう疑問。

 そもそも何故私がこの訓練を提案したのか。クリームランドの王女まで動員した上で、私がここに来たのか。

 

「という訳で、契約の通りゴスペル壊滅までオフィシャルの要請に応じ、通常の依頼を全て停止しオフィシャルを通した依頼の優先度を上げるものとする。加えて――」

 

 これが私が訓練を提案できた理由である。

 元々、ゴスペルの影響かオフィシャルからの依頼は多く来ていたものの、それ以外がもっと増えていたため。

 本来私は、基本的に依頼者で優先度を定めない。

 例外はそれこそプライド様くらいなのだが、これをオフィシャルにも適用する。

 

「クリームランドのインターネットにおいて利用されているセキュリティプログラム。これを契約期間中、対ゴスペルに調整した上でクリームランドより提供すること、プライド様より許可をいただいて()()

 

 どちらかというと、依頼よりは此方が本題。

 クリームランドのインターネット――クリームエリアにウイルスが少ない理由。

 ウラでは色々と失礼なことを言われていたが、今の時代田舎だろうとウイルスはいる。

 そんな時代に何故平穏なエリアが存在するか。それはセキュリティシステムの性能が高いからに他ならない。

 クリームランドは排斥され、時代に置いていかれた? 馬鹿なことを言うな。

 そんな訳があるか。お前たちがそう思っていただけだ。

 それを身をもって教えてやろう。勿論、頭を下げて媚びへつらうのではなく、お前たちに恩を売るという形で。

 

 これを機会に、クリームランドへの蔑視を無くす。

 なおも小国と軽視するのであれば、技術を以て黙らせる。

 かつてクリームランドはその扱いに屈した。だが、プライド様はそこから立ち上がった。

 であれば、私はそれを全力で支えよう。

 プライド様を支え、クリームランドの完全を支え続ける。

 前者は私の願望、後者は私の義務であり存在意義。

 

「以上だ。共に立つに足る者としてキミたちは力を示した。是非とも、今後とも対等な関係を築けていけば嬉しい」

 

 伊集院少年は未だ半信半疑といった様子。光少年は――これ理解しているか?

 まあいいや。かいつまんで説明するのは私の仕事じゃない。

 それよりもやるべきは、これからの――精神的にもっと厳しい大仕事、プライド様を騙していたことの謝罪と全ての説明、そして事後承諾の嘆願への覚悟だ。

 当然、仕掛け人であることからプライド様は元々ゴスペルなんざに加担していない、無実の人ということになる。

 ところがそれをプライド様自身には説明していない。

 

 クリームランドが、本気でオフィシャルの有力メンバーを追い込む力を持っていると思わせるのが重要なのだ。

 そのためには、プライド様が本気でなければならない。

 事を説明してからだと、これは途中で誰かに悟られる、そんな確信があった。

 なんでって――まあ、なんだ。

 ――プライド様は演技が下手なのである。それはもう、五徹した私でもすぐわかるくらい。

 であれば復讐心や憎悪をこの事件の間は持ち続けていた方が良い。……それが最後のアレに繋がるとは本当に予想外だった。絶対これも説教に付いてくる。どうしよう。

 

「……詳しくは後に副長官殿から説明が来るだろう。さて、そんな訳だ。プラグアウトをさせてもらうよ。ナイトマン、プライド様のPETとはもう通信が切れているだろう。こっちへ」

 

 内心の不安、恐怖を隠しつつ、さっさとプラグアウトを済ませる。

 プライド様のPETも赤外線通信を利用しているが、ここまで距離が離れてしまえばナイトマンも向こうに戻すことは出来ない。

 暫く私のPETで我慢してもらおう。

 

『うむ……エール殿、恩に着る』

「それならこれからの大仕事を手伝ってほしい」

『……それは。うむ……うむ』

 

 期待できないなこれ。

 肩を竦めながら、ナイトマンがPETにやってきたのを確認し――深呼吸。

 (エールハーフ)をパルスアウト――PETから腕を通り脳へと帰還させ――

 

「ッ――――!」

 

 半身が抱えていた負債(ダメージ)がフィードバックし、爆発した。

 ……幾度となくやっていることだが、決して慣れることはない。

 脳が裂けるような痛みが思い出したかのように発生し、電流のように全身に広がっていく。

 電脳世界に送った精神データがダメージを受ければ、回収する時当然に体に返る。

 

「だ、大丈夫ですか?」

「……いつものことさ。さて、解散だ。私もプライド様を迎えにいかなければ」

 

 ……まあ、『アンダーシャツ』で堪えることが出来ただけマシか。

 これで追撃されでもしていたら、酷いことになる。

 間違いなく立っていることなんて出来ないし、数日寝たきりなんてのも覚悟しないといけないくらい。

 そんなことになっていたらここからのプライド様への説明すら出来なくなる。全部台無しになっていたところだ。

 

 ギリギリと響く痛みと強烈な疲労感。

 それを堪えて、訓練を突破した少年たちと別れる。

 なんだかんだ、これでオフィシャルとのパイプは太くなったのだ。そのうち、また出会い話すこともあるだろう。

 それよりも今はプライド様だ。

 憂鬱ではないが、絶望的な不安感と共に歩を進める。

 独善というよりも、私のやりたいことをやれる手札でやっただけ。

 “これできっと、多少は良い道に進める”という自己暗示が今更解けたらしい。

 プライド様が待つ部屋への通路は――異様なほど長く感じられた。




・要は何がしたかった?
プライド様のテロ行為を訓練ってことにして無罪にすること。
そのために使ったのがかつてオフィシャル副長官に何やら売っていたらしい恩、あと光氏の名前。
また、そうするために自分を売りつつオフィシャル、ひいては各国にクリームランド名義で恩を売ることでクリームランドの再評価を促す。
副長官との関わりは詳しく語る予定はないし、そもそも原作だと出てきてすらいないので別に今後は気にしなくていい。

・プライド様が演技下手ってソースは?
無いけどゴスペルと戦って敗北し罠にやられるまでの一連の流れを何故かオート電話で実況してたくらい演技に必死なところはある。

・この後プライド様がゴスペルに粛清される可能性についての対策は?
今の状況をどうにかすることに必死過ぎてまるで考慮していない。

・この人、プライド様はともかくクリームランドのことは大事なの?
プライド様>>>>超えられない壁>>>>クリームランドって優先度なだけで大事には思ってます。

・色々ガバガバじゃない?
許して。
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