バグのかけらをひたすら集めるクリームランド在住のデバッガー   作:けっぺん

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王女に罪は似合わない-2 【本】【日】

 

 

 アメロッパの某ホテル、最上階。

 プライド様が宿泊しているロイヤルスイート。

 そこまで引っ張って言葉を考え続け、ようやくこの場で打ち明けた結果。

 

「――――」

「…………」

「――――」

「…………」

「――――エール・ヴァグリース」

「はい」

「わたくしが、いまどんな気持ちか、わかりますか?」

「……私が知る限り、かつてないほど怒っています」

「正解です。よくわたくしのことを理解していますね、エール」

 

 プライド様は激怒した。

 長い付き合いの中で怒らせてしまったことは多々あれど、そんなもの比較にならないくらい、激怒していた。

 

「そんな理解力ある貴女にだけ、特別に教えたいことがあります」

「光栄です」

「わたくしの覚えている限り、我が国民に対してここまでの怒りを覚えたのは、今回が初めてですわ」

「本当に申し訳ありませんでした」

 

 流石にその記録を達成したことについて、「光栄です」と繰り返すことは出来なかった。

 怒っていると断言している以上、今プライド様が浮かべている微笑みも恐ろしい。

 その笑みの圧など、ウラの深層ですらそうそうに感じることはない。

 それに、抵抗すら出来ない状況で対面しているのだ。矮小な身で耐えられる訳がない。

 

「会議に連れていけと、わたくしを助けたいと、そう言った真意はこれだった訳ですね」

「はい」

「その結果、正体の知れないゴスペルを、貴女は敵に回したんですよ?」

「それはどうでもいいです。プライド様を助けられたのなら、安い対価です」

 

 これからオフィシャルと関わるにおいて、ゴスペルに対することもあるだろう。

 しかし、それはまあ、さして重要なことでもない。

 前提として、インターネット上で仕事を請け負う時には護衛を用意させる。

 もしも危険だったら私は逃げる。

 

「……こうしてものの見事に失敗したわたくしへの報復も考えられるのですよ」

「…………失念していました」

 

 予測できていたことじゃないか。しまった、それへの対処をまるで考えていなかった。

 どうしよう――インターネットのセキュリティは高めるとして、プライド様本人はどうするか……事が済むまでどこか予想出来ないところ……それこそ私の自宅の地下にでも閉じ込めて――

 

「……貴女に危機感を抱いてもらうために、毎回我が身可愛い自意識過剰になった気分になります」

「プライド様は可愛らしいと思いますが」

「空気を読んでくださいね、エール・ヴァグリース」

「すみませんでした」

 

 肩を竦めたプライド様は、ソファにもたれて眉間を抑える。

 そして、呆れた視線を向けてきた。――今日は色々な表情を見る、とは口に出さないでおく。

 

「……先程の戦いのダメージは、もう大丈夫なのですか?」

「え? ……ああ、そっちは別に。デリートされた訳じゃないですし」

 

 痛みと疲労感は大きいが、耐えられない程ではない。

 城からここまでの間でも割と楽にはなっているし、この分には明日にはそれなりにいつも通りに戻ると思う。

 

「――そろそろ、ナビを持ちませんか? それ以上の負担を負う可能性だってあるんですよ?」

「……いえ。ナビ越しでは、分からないことが多すぎますので」

 

 ナビの行動と私の判断に生まれるラグで、ただでさえ拙い戦いに粗が生まれる。

 どうにも、ナビをオペレートするという感覚が掴めない。ナビとの精神同期による能力の向上など私は一生かかっても出来ないと思う。

 何より、仕事に使うのは論外だ。ナビ越しでは――バグを肌で感じることが出来ない。

 私は仕事には手を抜かない主義だ。

 だからこそ、私はナビを使うつもりはない。危険があっても、此方の方が私の役割をまっとうするのに適しているのだ。

 

「……、今日は部屋に戻り、すぐに休みなさい。今回はわたくしも何もしないという訳にはいきません。処分はクリームランドに戻ってから告げます。オフィシャルへの協力に関しては、貴女が作ったプログラムは提供して構いません」

「分かりました」

 

 こんな、意に沿わないことをしたのだ。お咎めなしなどあり得まい。

 そして処分を考える必要もあろう。好き勝手やる時間は終わったということだ。

 立ち上がり、思い出したかのようにひらめく頭痛に顔を歪めつつも、扉へと向かう、その道中。

 

「――助かりました、エール」

「……私がやりたいことをしただけですので」

 

 最後に掛けられたその言葉が本心だったかどうかは、その表情を見ていなかった私には分からなかった。

 

 

 +

 

 

 ■月■日

 

 昨日、日記を書けていなかったため、ここに纏めておく。

 

 オフィシャルの世界会議の場において、私が実行した計画はどうにか上手くまとまった。

 最後にプライド様が自身の足元の罠を実行させるという予想外こそ発生したものの、それ以外はまずまず、といったところだろう。

 副長官殿から、先程参加したメンバー全員に対する説明を終えたという報告がきた。

 彼がいなければ、今回の件はもっとややこしくなっていただろうし、これまでの貸しはこれでなくなったか。

 光氏からは何やら礼のメールが来た。

 ご子息を危険から守ってくれてありがとう、とかそんな旨の内容。そんなつもりはないというか、やったことは真逆なのだが。

 もしかすると、本来起ころうとしていた出来事……プライド様の計画を察していたのかもしれない。

 そのうえで名前を使うことを許可してくれたのはありがたいというほかない。

 

 一連の説明をした結果、プライド様に大変怒られてしまった。

 当たり前だ。覚悟していたが、いざ実際にそれを前にするとどうしてこれを回避出来なかったのかと思ってしまう。

 いや……後悔はない。これで良かったのだ。

 プライド様はもうゴスペルとは関わらない。確かに、ゴスペルからの報復を忘れていたというのは痛かった。

 だがそれならば、私なりに挽回するまでだ。

 プライド様にナイトマンを返す際、彼にはゴスペルとの既存の連絡手段を断つように告げておいた。

 加えて、出発前にPETをメンテした際に抜いておいた連絡履歴から、ゴスペルの本拠、或いは何かしら重要な施設は日本にある可能性が高い。

 昨日の訓練前に教えてもらったゴスペルの目的……あれから多少は洗い出せるか。

 本腰入れるには環境が悪いな。ここからはクリームランドに帰ってからか。

 ……帰ったら処分が待ってるんだった。どうしよう。

 

 今更になって出てきた恐怖感から、改めて弁明するためプライド様の部屋に行ったら入室拒否された。

 オート電話も拒否、メールは返ってこない。怒ってる。まだメチャクチャに怒ってる。取返しがつかないことはしない主義なのに取返しがつかないことしたかもしれない。

 大人しく沙汰を待てということなのか。キーボードを打つ手が震えてる。

 

 帰国は明日。早くそれが訪れてほしいのか、永遠に来ないでほしいのか、自分の気持ちがよく分からない。

 

 結局のところ、この会議後の予定など無かったのだが、なし崩し的に帰国まではオフとなった。

 プライド様と共にいたかったのだがそれは叶わない。

 ようやく午後になって多少調子が戻ったので、少し気分を変えに外に出てみる。

 プライド様にメールでその旨を伝えたあと、適当にあてもなく歩く。

 なんだかんだ、久しぶりのアメロッパなのだ。向こうでは手に入らないチップなり何なり、探してみるとしよう。

 

 やはりアメロッパの、それも現実世界ともなるとだいぶ品揃えが異なる。

 色々と興味をそそられる品を買うことが出来た。これでまた何かしらチップを作ってみよう。

 

 帰り道、小腹を満たすために寄った喫茶店で日本のアナウンサーと出会った。

 DNNの緑川氏というらしい。なんというか、カエルな人。日本のテレビ局については詳しくないが、アナウンサーって仕事で海外までやってくるものなのだろうか。

 名刺代わりに名乗ったらやたら食いつかれた。ご存知らしいことにまず驚く。一般人に知られるほどの知名度はない筈だが。

 インタビューを依頼されたので丁重に断ったら連絡先の交換を求められた。なんだか嫌な予感がする。

 

 緑川氏と別れ、ホテルに戻る。

 いよいよ明日は帰国。つまり私の処刑日である。

 日記をつけるのは今日が最後になりそうだ。

 

 

 

 ■月■日

 

 クリームランド、対ゴスペル電脳医療部。

 部長、エール・ヴァグリース。

 公人になった。どういうこと。




好き勝手の清算、および今後の伏線撒きの回。


・緑川ケロ
みんな大好き、デンサンニュースネットワーク(DNN)のアナウンサー。持ちナビはトードマン。
とにかくカエル。本人もナビもカエル。かわいい。
2では各地でネットバトルが出来るだけだが、5チームオブカーネルでは最後のチームメンバーとして参加する。
容姿はより可愛くなっているが登場から入隊までの流れは色々な意味で物議を醸した。
しかし可愛いのとトードマンの専用コマンドがチート過ぎるので許される。

・クリームランド対ゴスペル電脳医療部
原作にある訳ねえだろ。
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