バグのかけらをひたすら集めるクリームランド在住のデバッガー   作:けっぺん

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Save Our Planet-5 【本】

 

 

 力量に絶大な差が存在するのは明らかだった。

 まず、あれほどの巨体に傷を与えようとするには、生半可な攻撃では効果がない。

 ロックマンの『メガキャノン』と、ブルースの『バリアブルソード』を変化させたソニックブームが叩き込まれる。

 どちらも、スタンダードチップの中では高い威力を持つものだ。

 だが、それを受けても大した衝撃にはなっていないようで、デューオは僅かな後退すらもしない。

 

「サーチマン、標的の解析を進めろ。グレース、ギャラクシーマンの火力をぶつけることは可能か?」

『可能です。出し惜しみはしていられないので、積極的にとあらばそうします。ですが――』

 

 ライカ少年はサーチマンを下がらせつつも、グレース嬢と連絡を取る。

 ギャラクシーマンはネットバトルが得意な訳ではないようだが、長い充填から発動できる大火力は有効打に成り得る。

 その使用に否やはないようだが、グレース嬢は何やら言い淀んでいる。

 

「どうした?」

『あれ碌に効いてないですね。胸部のコアが弱所ではあるでしょうが……力が集中していなければ起動状態にすらなっていない。その状態では弱点とはなり得ません』

「……つまり?」

『コアに力が集まっている、デューオにとっての攻撃タイミング。それが同時に私たちにとっての好機になる訳です』

 

 ――ナビたちの攻撃をものともせず、デューオは一通りを受け切ってから、動き始める。

 右の拳がより強く握り込まれ、力が注がれる。

 そして、コアが赤く輝いたと思えば、その拳が振るわれた。

 

「っ、ジャンクマン!」

『クッ――!』

 

 回避はかなわないと判断し、『インビジブル』を使用する。

 床を強く殴りつけた拳がゆっくりと持ち上げられ、その拳を押し返さんとジャンクマンがプレスに変換した腕を叩き付ける。

 デューオはまるで、気付いていないかのようだった。

 腕を元の場所に戻した時には、コアの光は収まっていた。

 

「……ヤツの攻撃を対処しつつ、確実に攻撃をコアに叩き込め、ということか」

『そうでないと、多分間に合わないですね。三時間を切った以上、このリスクを冒さないとデューオの底を見ることすら難しそうです』

 

 ……難しいが、不可能ではない。

 グレース嬢の言葉を聞いて、ナビたちが散らばり始める。

 いずれかが回避や防御に全力を注いでいるならば、他が攻撃を試みれば良い。

 この場にいるのは一人ではないのだ。それぞれが補い合うことが出来る。

 

『散らばろうとも、同じことだ』

 

 横薙ぎに振るわれた拳を、各々の手段で回避する。

 あの威力では防御チップで防ぐことは出来まい。

 ジャンクマンには設置した『ストーンキューブ』に掴まらせ、それを浮遊させることで回避させる。

 彼は移動が苦手分野に当たる。

 普通の移動よりもジャンクマンにとっては此方の方が速い。

 そしてそのタイミングで、攻撃の範囲から逃れていたサンダーマンが雷撃を放った。

 

『――ほう』

 

 雷撃は的確にコアに当たったものの、デューオは僅かに感心したような様子を見せるだけで、特にダメージを負ったようには見られない。

 サンダーマンは優秀なナビだ。操る雷雲の攻撃力も並のものではない。

 普通のナビでは体が麻痺し更なる連撃の布石となるのだが、デューオに何ら不調が発生した様子もなかった。

 電脳体とはいえ、地球のそれとはまったく作りが異なるからか――理由など考えていても仕方がないか。

 サンダーマンの麻痺が通用しないならば、他の絡め手も通用しないと見た方が良いだろう。

 『ディスコード』や『ティンパニー』といった、ジャンクマンと相性の良い置物チップは意味がない以上、私たちも戦法は限られるか。

 

『ならば、これはどうだ』

 

 デューオが大きく腕を振るえば、周囲に百を優に超えようかという膨大な数のロケットとウイルスが現れる。

 ウイルスは回避が困難な動きが特徴のユラに酷似している。

 ユラに気を取られたところに襲ってくるロケットが本命だろう。

 

『サーチマンに狙撃箇所を送信します。ライカくん、お願いします』

「了解した――行けるな、サーチマン」

『問題ありません!』

 

 ギャラクシーマンの解析により得られる弾丸の軌道の最適解が、サーチマンに送られる。

 そのラグがあってなお、問題なく対応が出来ている。

 放った最初の一発はユラとロケットの重なった直線を的確に撃ち抜き、同時に複数を爆破させた。

 この精度により連続で放たれる弾丸により、サーチマンとギャラクシーマンの二人だけでなく複数人を助けることに成功している。

 私たちも、ただ見ているだけでは駄目だな。

 飛来してくる数十の標的を防ぐべく、既に出している『ストーンキューブ』による迎撃を指示しようとした時だった。

 

『ヒュ――――ィ! 躱しな、ジャンクマン!』

『ォ、オォ!?』

 

 ジャンクマンの背後から吹き荒ぶ、氷の嵐。

 咄嗟に、割と無理な動きで飛び退くように避けたジャンクマンがそれまで立っていた位置を通り抜けて、吹雪は前方のユラとロケットを氷漬けにした。

 それは瞬く間に氷のキューブに変わる。

 

『今だ! そいつらを全部使っちまえ!』

『――ワ、ワカッタ!』

 

 氷塊のコントロールを、すかさずジャンクマンが掌握し、振り回す。

 それにより周囲のユラやロケットを破壊していく――今のサポートは、ジャンクマンの後方にいたナビだ。

 マフラーを巻き、冷蔵庫を模したナビ。

 聞いた話では、代表の中でも特に本命ではないとされていた者だった。

 

「……コールドマンか」

『ヒューゥ……まだまだヤツは“弾”を増やしているぞ。おい、ジャンクマン。お前、動かせるものはもっと増やせるか?』

『ア……アァ。マダマダ、大丈夫ダ』

『そうか。それなら、こいつも使え――そら、アイスキューブ!』

 

 彼――コールドマンはジャンクマンの能力の余裕を聞けば、自身の周囲に冷気を集めて複数の氷塊を作り出した。

 先程のユラたちを凍らせたものよりもしっかりと作られ、かなりの強度がある。

 

『――ヨシ!』

 

 彼の行動の意味を理解すると、すぐさまジャンクマンはそれを浮かせる。

 チップを使わず、ジャンクマンが操れる置物を複数作り出せる能力は、言わずもがな、非常に相性が良い。

 それを振り回すことでユラとロケットを撃破していく。

 

『イケルゾ! モット、クレ!』

『おうよ。どんどん行くぞ、アイスキューブ!』

 

 そして、ジャンクマンの自信を持った要望に、コールドマンはすぐに応じる。

 『オウエンカ』やらの置物チップよりも高い耐久力を持っており、ジャンクマンの武器としてはかなり使い勝手の良いものと言えた。

 これほどの置物を無尽蔵に作り出せる能力。

 ライカ少年とグレース嬢はああ言っていたが、それでも世界大会の代表であるだけのことはあるか。

 

「すまないね――確か、コオリスキー氏、だったか」

 

 彼のオペレーターに通信を繋ぐ。

 大会前にテロ染みたことをやらかしかけていたらしいが、思想はどうあれこの危機には協力的であるらしい。

 

『構わねえチョフ! 小惑星なんかがぶつかったらこの星はメチャクチャ暑くなっちまうコフ!』

「いや、暑い暑くないという話じゃなくなるんだが……」

『なら尚更コフ! コールドマン、たかが石ころ一つ押し返してやるんスキー!』

『任せろ、コオリスキー! 今日のオレの力は伊達じゃねえ!』

 

 石ころではなく――っと、コールドマンがまだ掌握前の氷塊を自分で持ち上げ、放り投げた。そんなこと出来るのか。

 まあ、当然か。

 コールドマンにとっても、これは防御のためだけではなく攻撃にも転用できる能力であったらしい。

 氷塊を大量に操ってユラとロケットを迎撃する。

 他の面々の対応に比べ、ここだけ妙な光景にはなっているが、他を助けることが出来るほどに安定している。

 

『一気に片付けるぞ――エール・ヴァグリース、イワン・コオリスキー。氷をロケットが待機している上方の中心に投げ込め!』

 

 その対応を見てか、ラウル氏から指示が飛ぶ。

 

「っ、ジャンクマン!」

『ワカッタ!』

 

 まだ待機状態で射出はされていないロケットの中心に氷塊を移動させる。

 その氷塊を利用するのは、ラウル氏のナビであるサンダーマン。

 

『雷よ!』

 

 氷塊に向けて降り注ぐ雷。

 その周囲に広がっていく電流は辺りのロケットを貫き一掃していく。

 これで全てのロケットを処理し終わった。

 そして、残るユラたちはロックマンとブルースに向かっていき――

 

「いけ、ロックマン!」

「片付けろ、ブルース!」

『了解!』

『ふっ!』

 

 ガッツソウルに姿を変えたロックマンの強力なマシンガン、そしてブルースのソニックブームがユラを一気に撃破する。

 コアへの攻撃も、スラッシュマンをはじめとしたナビたちが少なからず成功させていたらしい。

 接近していたナビたちが一度下がり、体勢を立て直す。

 

『なるほど。これも切り抜けるか。であれば――』

 

 デューオはコアを収納し、胸部に巨大な砲を出現させる。

 そこから行われる攻撃は、推測するまでもない。

 エネルギーが充填されるのを、黙って見ていることしか出来ない。

 コアが収納されている以上、今の状態は攻撃の好機とはなり得ないのだ。

 

「ちっ……グレース!」

『了解です。ギャラクシーマン、相殺を』

『承りました』

 

 その砲の前に出たギャラクシーマンが、それに向けて黒い球体を射出する。

 ゆっくりと迫る球体を見下ろしつつも、デューオはそれを叩き落したりすることもない。

 

『いいだろう。防いでみるがいい』

 

 放たれた、凄まじいエネルギーの奔流。

 それに合わせて爆発した球体は、己の内にエネルギーを吸収していく。

 吸い込んだ傍から分解させているようで、中からはデューオの攻撃であった光が粒子となって外に逃げていく。

 此方に飛んでこようとしている余波さえ吸い込んでいるが――その奔流は収まる気配がない。

 

『――持たんな。私が残りを受け持とう』

 

 その球体での対処に限界を見て取ったのか、レーザーマンが前に出る。

 彼への印象は、至極複雑だった。

 信用出来ない相手であることは、間違いない。

 だが、それでもリーガルは、私の中では信頼の対象であった。

 そんな葛藤で時間を無駄にしているうちに――彼は背中から伸びる二本の管の間にエネルギーを溜める。

 どうやらあれは、高性能のジェネレーターであったらしい。

 

『スターブレイクレーザー!』

 

 十分に集められたエネルギーが射出され、巨大なレーザーとなって伸びていく。

 その名の通り、星さえ砕けるのではと思わせる、決してデューオのそれに劣っていない威力。

 限界を迎え、解れて逆に呑み込まれた球体に代わって激突するレーザー。

 二つのぶつかり合いは、他のナビにとって防御姿勢を取らなければならない程のものだった。

 

「……相殺、出来るのか?」

 

 問いを投げたのは、レーザーマンというより、リーガル本人に対する不安からだった。

 彼はようやく、此方に僅かに視線を向ける。

 彼の感情が読めないのは、いつものこと――だが、それが今は不安を増すことにしか繋がらない。

 

「デューオの放つエネルギーの総量が不明なため、断言は出来ん。だが――レーザーマンは私の技術の結晶だ。アレを相手取ろうと、簡単に押し負けることはないという自負はある」

「…………そうか」

 

 その言葉が本心であることだけは、分かった。

 だがそれ以外の何もかもが分からないことがどこか怖くて――私の方から目を逸らす。

 果たして、二つのレーザーのぶつかり合いは互角に終わる。

 両者のエネルギーが同時に霧散していき、どちらへの被害もなくデューオの砲は収納された。

 

『少々意外だ。我の純粋な力の照射を防ぐ技術がこの星にあったとは』

『この星を侮らないでもらおうか、デューオ』

 

 再び露出したコアに、挑発の如くレーザーマンは片手を向ける。

 そこから放たれたレーザーは伸ばされた手の平に防がれ、握り潰されたものの――この時私たちは、初めてデューオに“防御”という選択をさせた。




サラリーマンでも地球を守れるなら危険思想のテロリスト予備軍でも地球を守れるという話。
コールドマンと言えばジャンクソウル、ジャンクソウルと言えばコールドマン。
そんな訳で感想欄でも結構お荷物扱いされていた彼にも頑張ってもらいました。
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