バグのかけらをひたすら集めるクリームランド在住のデバッガー 作:けっぺん
もう暫く似たような状況が続くかもしれませんが、出来る限り早い更新を心がけます。
オラン島エリア2。
そこは現在ネビュラの占領下に置かれ、行き交うナビの姿は殆どない。
商魂逞しいネット商人の姿はあるものの、このままでは商売あがったりだろう。
それらを助けるため、ではないが、
この先はダークロイドが支配する、オラン島エリア占領の中心地だ。
当然、何もなく通してくれるなどあり得ない。
立ち塞がる三基の砲台は、一定範囲内に近付くと射撃を行ってくるものらしい。
近くにいたウイルスをけしかけてみれば、これが中々に範囲が広い。射撃系のチップでも、その範囲外から届かせるのは難しいだろう。それなりの耐久度があるウイルスでさえ、ものの数秒でハチの巣にされてしまった。
サーチマンなどいれば、外から撃ち抜くことも出来るのだろうが……今ここにないものを求めても仕方がない。
ここには防御のスペシャリストがいるのだ。彼であれば、この程度の攻撃を受けるなど苦ではあるまい。
『ふむ。あの砲台からの攻撃を防げば良いのだな?』
『その通りだ。いけそうか?』
『問われるまでもない。姫より拝命した以上、成し遂げてこその騎士というもの』
そう――それこそが騎士だ、といつか、パークエリアで出会った劇物をふと思い出しながらも頷く。
プライド様に仕える、クリームランド王家の盾と称えられる誉れ高き騎士。
その巨体から速度に秀でている訳ではなく、重い攻撃を掻い潜れば付け入る隙はあるだろう。
だが、守りに集中した彼を真正面から打ち崩すのはそれこそ城壁に挑むも同じ。
『では――私の合図で突っ込め。私の攻撃の範囲に入り次第、砲台を破壊する』
『相分かった。エール殿、ロックマン殿。顔など出さぬように』
『うん。よろしくね、ナイトマン』
この場で私たちがやるべきことはない。
ナイトマンの防御と、カーネルの攻撃。この二つがあれば、ここの突破は敵う。
所詮は侵入者を迎撃するだけの、意思のないプログラムだということだ。
『三、二、一――作戦開始!』
カーネルの合図でナイトマンが突き進む。
その巨体に続く足取りには、一切の不安はない。
一定の範囲にまで入り、砲台が起動する。
三基による射撃の雨は確かに、信頼できる守りがなければ、耐えることが出来てもその先に進むことは出来ないだろう。
それでも、ナイトマンにとっては己が身で受けるに容易い雨でしかない。
その程度と判断した彼は一歩一歩、着実に歩みを進めていく。
同じ相手を攻撃することしか出来ない砲台は、その接近に対して迎撃以外の方法を持っていない。
ナイトマンの後ろに立つ私たちを気にかける様子もなく、あっという間に作戦の終了は訪れた。
『隙あり……! スクリーンディバイド!』
まだ砲台まで距離がある。ソードによる斬撃を直撃させるには程遠い。
しかし、一定範囲にまで近付けばカーネルの一振りに見た目のリーチは関係なくなる。
カーネルが腕を振るうと同時、砲台を纏めて捉えるように、空間にVの字の斬撃は走った。
三基の核を一撃で粉砕し、射撃が止むと同時に砲台は沈黙し、消滅していく。
バラバラと鳴り響いていた激しい音が消えたことによる不気味に感じる静けさの中で、道が拓けたことを確認したカーネルはナイトマンの前に出た。
『――見事な防御力だな』
『あの程度、攻撃の数にも入らぬ。ともかく、これで障害は無くなったのだな?』
『その通りだ。バレル、ミッションを開始して構わないな?』
見たところ、ナイトマンはリカバリーが必要な段階にも入っていない。
このまま次のエリアに向かってしまっても、問題はないだろう。
「ああ。ここからは任せるぞ、光熱斗」
「――うん。頼んだぜ、ロックマン、カーネル、ナイトマン。それから、エールさんも」
「私はあくまでシステムの維持と見学程度のつもりだがね」
光少年のPETと私のPETを繋ぎ、更にPETに送られる映像を部屋の大型モニターに映し出す。
次のエリアでナビのオペレートを行うのは光少年だが、こうしておけば作戦中、光少年以外も状況を把握しておくことが出来る。
作戦中の判断を出来る者は、光少年以外にもいた方が良いだろう。
『では、これより第二次リベレートミッションを開始する!』
作戦の目標はエリアに巣食うダークロイドをデリート、最低限撃退し、ネビュラの手からエリアを奪還すること。
問題となるオラン島エリア3に一歩踏み込めば――
『っ……』
充満した悍ましい闇に、噎せ返りそうになる。
ナビが踏みしめる床にまで浸透した闇の力。このエリアにあるもの全て合わせれば、ダークチップ何枚分になるか。
事前に入手しておいたエリアのマップをモニターに表示させる。
オラン島の入り組んだ他のエリアとは違いエリア3は、比較的広いほぼ一本道となっている。
ゆえに迷うことはないものの、外敵への備えをする分には“やりやすい”地形だ。
『ここがオラン島エリア3。このエリアは調査によると、翼を持ったダークロイドが支配している』
「翼?」
翼持ち――ようは、飛行を可能とするナビ。
それだけで厄介な特性に顔を顰める。カーネルの言葉を受け、エリアの主は向こうから通信を仕掛けてきた。
『――もうここに来たのか……諸君、我が砦にようこそ』
その、聞き覚えのある声にげんなりと気落ちした気分を隠さずにはいられなかった。
尖った耳を持つ紫のナビ。翼を畳んだ手。見違えようもない、私が表向き、ネビュラと関わるきっかけとなったナビだ。
『シェードマン――!』
『キキ……久しぶりだね、ロックマン。それに、バグ医者。見ての通り、闇の力で見事復活を果たしたよ』
かつて、シェロ・カスティロで発生したぬいぐるみロボの暴走事件。
それを引き起こした主犯たる、ネビュラ所属のダークロイド。
そして――ウラランキングの前第五位たるナビが、そこにいた。
『君たちへの礼参りは二の次のつもりだったが……ここに来たというなら重畳だ。借りを返させてもらおうか。特にバグ医者、君にはね』
「……エール?」
「――身に覚えのない恨みを持たれているようですね」
隣から説明を求めるような視線を向けてくるプライド様に、反対側を向きつつ弁解する。
反対側に座っていた光少年からのもの言いたげな視線。大丈夫だ。光少年なら黙っていてくれる。現場にいたのだから、秘密は共有すべきの筈だ。
『シェードマン……奴はウラを中心にダークチップをばら撒いた犯人だ。逃がす訳にはいかん。ここでデリートするぞ』
『出来るものなら。キキ、そこの二人以外にはオーディエンスとなってもらいたいのだが、良いだろう。一人残らずワタシのエネルギーとしてあげようか』
『また私の抜け殻を所望なのか? 処分も
「エール? またとは?」
「――あれです。向こうが此方を知っているようだったので。その前提で売り言葉に買い言葉というか」
あまりこの手の挑発を使えないことを確信する。
駄目だ。こういう連中を相手にする時にやっていることは、プライド様の前で出来ないようなことが多すぎる。
いや……このチームに入るにおいて、ウラの住民としての顔も求められている訳だし、完全に禁止という訳でもないだろうが、やはりあれこれをプライド様に見せるのは抵抗がある。
シェードマンとの会話は控えめにしよう。余計な口を滑らせて、向こうを焚き付けるのもプライド様を怒らせるのもよろしくない。
『侮辱はすぐに後悔させてあげよう。ワタシもそこまで気が長い訳ではないからね』
どうやら、随分と根に持っているらしい。
私としては彼のそのような趣味に付き合う道理はないし、精一杯の譲歩のつもりだったのだが。
侮辱と取られることを心外に思いつつも、起動したシステムの状態を確認する。
『言うまでもないが、この闇は我らの領域だ。さあ、踏み込んでくるといい。全てがワタシの手足にも等しいこの闇の中を歩む覚悟が君たちにあるのならね』
その挑発を最後に、通信は切断される。
目の前に広がっているのは闇の世界。
なるほど――あれは正しく、彼にとっては庭という訳だ。
『あのナビの機動力であれば――闇の中を自由に飛び回れるだろうな。前のように無策で突撃すれば、一方的に攻撃を受けるばかりだということか』
『ふむ――であれば、それがしが中心となって攻め込むのがよろしかろう。皆への攻撃、お防ぎしましょうぞ』
頼りになるのは、やはりナイトマンの防御力か。
どこからでも攻撃を受ける危険があるということは、それを防ぐ手段がなければ侵攻もままならないだろう。
だが、この作戦のためにナイトマンに与えたツールはバトルオペレーション外での攻撃に対して、高い防御性能を発揮するもの。
彼であれば、シェードマンの攻撃でも耐え抜くことが出来よう。
『その防御力、期待させてもらおう。システムの方は問題ないな?』
『ああ――起動は完了している。では、展開する。何度でも言うが、私の戦闘能力には期待しないように』
起動したそれを展開する。
私の周囲を取り囲むらせん状の光。
闇を貫くその手段を、このエリアの闇を払うことに転用するパネルリベレートシステム。
それを維持させつつ、全員にその力を適用させれば、らせんの光が一部、彼らへと移動した。
『ではまずロックマン、あの辺りに移動するんだ。光少年、オペレートの準備は良いね?』
「うん――大丈夫」
ロックマンは指示の通り、闇の数歩手前にまで近付く。
さらに踏み込もうとすれば、防御機能により闇はウイルスに変換されて襲い掛かってくるだろう。
しかし、それを待つまでもない。ロックマンに移動した光は目の前の闇の一部を区切り、光はロックマンとそれを取り囲む。
闇の一部の、周囲との接続を断ち、強制的に防御機能を発動させる。
出現するウイルスたち――発生するのは元々オラン島エリアにいる種だ。さほどランクの高いものではない。
「よし、いくぞロックマン!」
『うん! パネルリベレート!』
あの程度のウイルスならば、長年共にいたロックマンをオペレートする以上光少年たちの敵ではない。
使用したチップは二枚。数秒で片付ければ、起動した特殊なバトルオペレーションシステムのリソースが周囲の闇へと広がり、防御機能が発動する前に消滅させる。
うん――ネビュラに占領されたエリアでしかこれほどの闇は見られなかったため、まともな試験は出来ていなかったが、上手く動作しているな。
『凄い――闇が一気に消えた!』
「ああ! これならどんどん進めるぜ!」
少なくとも、防御機能が次々発動し、四方八方から襲い来るウイルスを処理して削っていくよりは遥かに効率が良い。
制約も大きいがこのエリアの解放という目的においては釣り合いが取れるものとなっているか。
「問題なさそうだね。一度実行したナビは再使用まで少し待機が必要になる。その間にカーネルやナイトマンでさらに拓いていくべきだろう」
「了解――それなら、次はカーネル、行くぜ!」
『良いだろう。オペレートを頼むぞ』
ロックマンにより、闇が開けて支障なく歩むことが出来るようになった床をカーネルが踏みしめる。
既に一度、光少年はカーネルのオペレートを経験しているだろうが、それはこのシステム下におかれない、混沌とした場であった。
通常の戦闘におけるオペレートはまた勝手が違うだろう。さらに、今回はナイトマンもいる。
身軽なロックマンとは戦い方が正反対だ。同じように戦おうと思えば上手くはいくまい。
シェードマンと戦うまでに、それぞれのオペレートに慣れてくれれば良いのだが――システムの負荷が予想の範囲内であることを確認しつつ、私は作戦を進めるナビたちの後方で観戦を始めた。
・リベレートミッション
5に登場するシステム。
ネビュラに占領されたエリアを、チームに参加するナビを指揮して解放する作戦。
攻略エリアはマス目で区切られており、闇の力に覆われたダークパネルを一マスずつ解放しながら進んでいく。
エリア最奥部にはボスであるダークロイドが控えており、彼らをデリートすればクリアとなる。
他のナビを操作することが出来るが、これまでのシリーズではなかったシミュレーション的な要素があるため、賛否は分かれた。
5は4程ではないが全体的にウイルスが強く、クリア後まで強いチップが手に入りにくいため、難易度は高め。
ミッションはシナリオ中は六回、クリア後にも三回あるが、チームのメンバー全員が参加するミッションは一度もない。
ちなみにオーダーコマンドで扱える武器は、原作の設定ではオフィシャルと科学省が開発したものであるらしい。
攻撃ナビとか支援ナビ辺りはチーム入りから作戦開始まで碌に時間がないが気にしてはいけない。
・エールが遊園地でネビュラと関わった←知ってる
・それがダークロイド←知らない
・何やら妙な取引の気配がある←知らない
抜け殻の正体知ったら多分またプライド様の逆鱗に触れるのでエールも雑に誤魔化しています。