バグのかけらをひたすら集めるクリームランド在住のデバッガー   作:けっぺん

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Q.なんで丸々三ヶ月も更新が滞ったのですか?
A.ウマ娘やってた。多忙の時期に色々と事情が重なったってことにしといてください。


2nd Mission/Vampire-3 【本】

 オラン島エリア3の解放作戦が開始されておよそ一時間。

 連続する戦闘、かつナビを切り替えてオペレートを続ける光少年にも当然疲れは表れる。

 効率的な闇の解放手段を利用しているとはいえ、エリア一つを覆う闇を晴らしながら進むとなると、やはり時間は掛かるもの。

 私たちは一度エリアの入り口付近に戻り、光少年の休憩も兼ねて態勢を整えていた。

 

「予想はしていたが、結構な長期戦だな……」

 

 進展はしていれど即座に解決という訳ではない状況に、思わず溜息をつく。

 私は積極的にウイルスバスティングを行っていないが、リソースの維持に加えていつやってくるかも分からない鳥型ウイルスやシェードマンに気を張っているのは厳しい。

 これはプラグアウトした時に体にのしかかってくる疲労も凄そうだと思うと、もっと効率化を進めなければという気になる。

 

「これをより時間を掛けて、こつこつ行っていたのですね……」

 

 ナビはともかく、オペレーターである光少年の負担を軽減する手段は無くはない。

 プライド様だって世界でも有数のオペレーターだ。ロックマンやカーネルを完璧にオペレートする――というのは難しいだろうが、ナイトマンを主軸に進軍していけば不可能ではあるまい。

 彼女の手を煩わせるのは気が進まないが、正直これは、異常だ。

 同じ手段で以降何度も作戦を行っていては、光少年が持たないということもあり得る。

 それに。

 

「リソース面の問題はないか?」

「予想より多い。以降も続けるなら、今回の作戦をもとに消費量の見積もりが欲しいところだよ」

 

 リソースは無料ではない。

 それに、用意できる全てをこの場に持ってきている訳でもない。

 これを全て使い切れば、実質的にミッション失敗だ。

 余裕を持って用意してきたつもりだが、今後はより考える必要があるだろう。

 ――エリアの偵察役が必要なのだ。前もっての準備にも、作戦本番にもそれを行える者が。

 やはり彼の参加は急いでもらいたいな。

 

『キキ……静かになったと思えば。休憩かい? ワタシは待ちくたびれているのだがね』

 

 もう暫く休もうという選択を嘲笑するように、シェードマンは通信を投げてくる。

 腹立たしい話だ――向こうは好き勝手に此方に攻撃を仕掛けてくるというのに、反撃もままならないとは。

 

『疲れたのならば無理せず撤退するがいい。所詮、君たちではネビュラの勢力には太刀打ち出来んのだよ』

「好き放題言ってくれるぜ……バレルさん、もう大丈夫! 作戦再開するよ!」

「……いいだろう。奴の言葉を借りる訳ではないが、無理はするな。二度、三度の休憩も視野に入れて作戦を進めるんだ」

「うん! 行くぞ、ロックマン! 皆!」

『了解!』

 

 その挑発に乗ることによる、メリットとデメリット。

 二つを天秤に掛け、バレル氏は光少年を勢いに乗せることを選んだ。

 光少年の爆発力は大きな長所だ。それで欠いた冷静さは、私たちが補えばいい。

 

「エールさん、よろしく! ――リソースって、大丈夫?」

「キミは気にしなくていい。キミにとってベストな環境を提供するのが私の仕事だ」

 

 光少年が不要な心配で腕を鈍らせるようなことがあっては、それこそサポートする側として立つ瀬がない。

 闇を払う手段となって散っていく螺旋に囲まれながら、(エールハーフ)はエリアの先を見やる。

 濃密な霧の如く先を覆うそれは、未だにシェードマンの居座る場所を私たちに見せることはない。

 まずは前に進むことだ。

 リソースを切り分け、ロックマンに注ぎ込む。

 私が特殊装備として有しているのは、他者の支援に特化したもの。

 リベレートを行うナビに、本来は特定のチップやカスタマイズによって発現する効果を短時間与えるものだ。

 

『注意するんだ、ロックマン。そこはこのエリアの中に数カ所ある闇の核――“闇の穴”とでも呼称しようか。必然、出現するウイルスも一際強力な筈だ』

『うん――確かに、感じられる悪意が段違いだ……』

 

 前回の秋原エリアのミッション記録を見る限り、あのエリアにもこうした一段と闇の深い領域は存在していた。

 だが、その時はそれらの違いを意識している余裕などなかっただろう。

 無意識に突破していたこれは核だ。

 他の部分の闇よりも優先的にリベレートすべき場所。というより、この供給元である闇の穴を全てリベレートすることでエリア内の闇はそれを追うように消失していくだろう。

 

『よし、パネルリベレート!』

 

 バトルオペレーションシステムが起動し、闇の穴からウイルスが湧き出てくる。

 数も質も、これまでのものより上だ。

 巨大な獣型ウイルスが先陣を切り、パルスバットやドリクロールといったオラン島エリアに出現するウイルスたちが溢れだす。

 確かに強力だが、光少年とロックマンであれば苦戦するような相手ではない。

 これらを全て倒せば、闇の穴も消え去ろう。それによってエリアに満ちる闇の力そのものが弱まり――突破口として一つの可能性が生まれる。

 

「――よし」

 

 ただでさえ、相手はこの闇の中を自在に飛び回り、此方の苦労など気にも留めず襲い掛かってくる。

 秋原エリアを守っていたブリザードマンがそのような行動を取っていなかったことから、これは翼を持ち飛行能力に長けたシェードマンの特性と考えられる。

 

「……? エール、何を?」

「闇の穴をリベレートして、闇の力のバランスが崩れたタイミングを見計らい、シェードマンを直接攻撃します」

 

 製作途中の外装の一部――武装としてエールハーフにインストールしていたものを表出させる。

 本来はもっと、対象たるダークロイドの位置を把握してから使うものなのだが、不意打ちと試験を兼ねる場としては丁度いい。

 闇の穴が一つ消えた時、他の闇の穴はそれを補うべくこのエリアの闇の濃度を一段階下げ――それまでの短時間、バランスが崩れるだろう。

 狙うはその時。此方を一方的に攻撃しているつもりのシェードマン。

 

「――そういう方針で一つ試させてもらうが、構わないかな? 勿論、独断ではあるし、私が負担させてもらう」

「……それであれば、構わない。今後のミッションに役立つ可能性があるのならな」

 

 バレル氏の表情の変化は、どちらかというと付け足した一言が決め手のようだった。

 なんだ、まさかシャドーマン勧誘の件だけでもう軍資金の底が見えたとか、そういう話じゃあるまいな。

 これからの追加メンバー云々という話以前に私たちへの報酬までこの時点で厳しく感じられるようなら、流石に今後の関係を考えないとならないぞ。

 ――だいぶ不安になるバレル氏の様子ではあったが、ともあれ今からの試験で彼の懐は痛まない。

 この方針がダークロイドと戦っていくにおいて本当に正しいものなのか――検証しておかないとならないのだ。

 

『これで――終わりだ!』

 

 そうこうしている内に、闇の穴から湧き出てきたウイルスたちをロックマンが片付け終わる。

 陥穽に罅が広がっていき、核としての効果を失っていく。

 

「よしっ……ところでエールさん、今なんの話を――」

 

 そして闇の穴が完全に消え去ったタイミングで、光少年のPETからエリアへの接続を強奪。

 PETにチップを一枚差し込み、(エールハーフ)に送信した上で接続を返却し、何食わぬ顔で実験を開始する。

 照準は闇の向こう。エリア最奥部に右腕を突き出し、プログラムを実行。

 

 

 

 ――瞬間、衝撃で体が浮いた。

 

 

 

 引っ繰り返って背中から床に叩きつけられながらも、先を見れば“何か”が通り抜けていったように、闇に一筋の穴が開いていた。

 試しに通信を投げてみれば、映し出されたのは右肩より先を喪失させたシェードマン。

 ――惜しいな。ど真ん中を狙ったつもりだったのだが。

 やはり私には狙撃の真似事は難しいかと溜息を吐く。強いて言うならば、何が起きたのか理解が及んでいない彼の表情だけは、少しだけ達成感を覚えさせるものだった。

 

「――ふむ。まだまだ改善の余地あり、だな」

「……」

「……」

「……」

 

 とりあえずデータは取れた。本来の使用法とは異なれど、こうして遠距離からの狙撃の威力を確認出来たのは大きい。

 現時点での改善点もそれなりに浮上したが、無駄撃ちすることなくシェードマンに痛手を与えられた。

 ミッションを進めるにおいても役立てたと言えよう。

 

『キ……貴様……何をした?』

『攻撃した。不意打ちがキミだけの特権だと思ったら大間違いだよ』

 

 その腕が復活することはない。

 腕を変化させた翼こそがシェードマンの飛行の要だ。

 プログラムの構成によっては翼と飛行の因果関係を持たせないことも出来ないでもないが、かのダークロイドは毎回飛行時に翼を広げていたことから見て、これで飛行手段は断ったと考えて良いだろう。

 これで一方的に狙われる関係ではなくなった訳だ。

 

「検証は終わりだ。光少年、残りの闇の穴を潰していこう」

「いや、この流れでそうはならないでしょ……」

「え?」

「……逆に何故平然としているのか、わたくしは不思議でなりませんよ。エール・ヴァグリース」

 

 この勢いには乗るべきではないかと思ったが、凄まじく微妙な表情の光少年と額を押さえ俯くプライド様が待ったを掛ける。ついでにバレル氏も『正気か』とばかりに此方を見ていた。

 

『えっと……エールさん、腕』

 

 おずおずと、ロックマンが代表して指摘する。

 合点がいった。射出の衝撃で肘から先が吹っ飛んだ右腕のことか。

 

『ああ、問題ないよ。これから戦闘しろというなら困るが』

 

 まさか外装だけでなく、“中身”まで爆散するとは思わなかったが、致命傷という程でもない。

 アンダーシャツが発動したということもないし、パルスアウトすれば普段通りに戻るだろう。

 思ったより痛みも少ない。このままシステムを維持することも十分に可能だ。

 

「エール」

「はい」

 

 ――うむ。少々軽率だった。

 確かに、誰かが見ている場で試すようなことでもなかった。

 特にプライド様がいる場では駄目だった。だから少しだけ時間を戻させてくれないだろうか。

 

「エール・ヴァグリース。無茶をするな、危険なことはするな、突飛なことをするなと――わたくしは一体何十回言えば分かってくれるのですか」

「はい」

 

 怒りの微笑みを通り越して真顔になったプライド様に、一体誰が反論出来ようか。

 冷たくなっていく思考の中で、流石にリスクを考えなさ過ぎたと反省する。

 

「えっと……」

「光熱斗、作戦は続けてもらって構いません。ナイトマン、エールは暫く集中出来ないので、護衛は怠らないように」

「あ、うん」

『……御意』

「エール・ヴァグリース、システムはそのままです。その上で、色々と貴女には言っておかないとならないことがあります」

「はい」

 

 ――せめて場所を変えてもらえないかなどと、言い出せる筈もなく。

 ネビュラと戦う小学生の傍で親友の姫に徹底的に理詰めで叱られる、死ぬほど情けない大人の姿がそこにあった。




Q.前回のシリアスな終わりからのこの展開はどうかと思う。
A.エールなりに焦っていて勝手に自爆して今度こそプライド様の逆鱗に触れただけなのでセーフです。

Q.君の愛馬は?
A.アグネスタキオン。
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