バグのかけらをひたすら集めるクリームランド在住のデバッガー   作:けっぺん

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4th Mission/風を突き抜けて-3 【本】

 

 

 恐らくそれは、ロックマンに組み込まれたソウルユニゾン用のライブラリを見たリーガルが与えた力なのだろう。

 ダークソウルをネビュラに属するナビと共鳴させた、疑似的なソウルユニゾン。

 その能力により、闇を自在に飛び回るシェードマンの力を、ロックマンは自身に適用させたのだ。

 

『ほう……あ奴と死合ったことはなかったが、よもやこのような機会が生まれるとは』

『なんだ、シェードマンを知ってんのか? そういやウラでダークチップのブローカーやってたって話聞いたな……』

 

 シャドーマンが低く構えるが、光少年が指示を出すよりも先にロックマンが背の翼で浮き上がる。

 ――捕えることは出来ないか。向こうから接触してきたのであれば話は早いと思ったが。

 ロックマンの目的はあくまでシャドーマンへの不意打ち。それが終わった以上用は済んだとばかりに、彼は再び闇の奥へと消えていく。

 

『待て、ロックマン!』

『遊びは始まったばかりだろ? 楽しもうよ熱斗クン――ハハハハハハッ!』

 

 ……作戦に際し、ロックマンの戦闘能力はある程度高く見積もっていたが、これは想定外だったな。

 ソウルユニゾンの逆利用。考えておいて然るべきだった。

 いや――今後悔していても仕方がない。今からどう対策をするかが重要だ。

 シェードマンの力を得ているということは、この闇の中を高速で移動しこちらに不意打ちを仕掛けられるということ。

 同じような状況は、オラン島エリア3――私たちにとって初めてのリベレートミッション。シェードマン自身を相手に戦ったあの時だ。

 

 あの時の作戦で要となったのはナイトマンの防御力。

 彼ならば、あのロックマンの攻撃であっても受け止めることが出来るだろう。

 だが、問題は私たち本隊が、先行するシャドーマンに追いつくのに時間が掛かりすぎるという点だ。

 ……或いはシャドーマンに戻ってきてもらい、全員で残りのバリアキーを取りに行った方が良いか。

 彼が如何に手練れとはいえ、光少年が彼のオペレートに集中できない状態で、ロックマンの襲撃を警戒しながら先行するのは危険だろう。

 

『フッ――似合わぬことを考えるなよ、薬師。闇討ちを恐れるウラの住民がいるものか』

『何故思考が読まれたかは置いておくとして、ウラで闇討ちを恐れる者など山ほどいるしその理由の九割五分は君が原因だよ』

 

 やはりウラの住民を慮る作戦方針など定める必要はないな。

 そもそも彼がいなければ闇討ちに怯える者は激減する。どの口が言うのかという話である。

 彼への備えが不要なのであれば私もウラを歩く時、だいぶ楽になるのだが。

 

『えっと……二人とも?』

『気にせずとも良い、光熱斗。ウラの住民になるのでもなければな』

 

 光少年に変な入れ知恵をしようとしないでほしい。

 しかし余裕そうだな、シャドーマン。先ほど慣れぬ襲撃を受けた身とは思えない。

 

『方針はこのままで構わぬ。拙者は残るバリアキーを探すゆえ、本隊を前に進めよ』

『……わかった。ロックマンが来たらすぐに教えてくれ、シャドーマン』

『承知。だが、こちらばかりをあ奴が狙っているとも思わぬことだ』

 

 シャドーマンなりに、このまま自身ばかりを案じていてもきりがないと判断したのだろう。

 偵察役とは私たちから離れて単独で行動してこそ役割を遂行できる。

 それが果たされなくてはかえって作戦効率が悪くなり、報酬相応の仕事にもならなくなる――彼なりの矜持というものだ。

 

『よし――カーネル、このままバリアパネルに向かうぜ! シャドーマンがバリアキーを見つけたら、すぐに先に進めるように!』

『了解した。オペレートを頼む』

 

 ともあれ、シャドーマンが助力不要だというのなら、こちらは真っ直ぐ進むのみだ。

 光少年がカーネルをオペレートし、闇を晴らしていく。

 その先にあったのは闇の穴。

 ネビュラに支配されたエリアを解放するのならば優先して攻略する必要のある、この闇の濃度の要だ。

 

『トマホークマン!』

『おうよ!』

 

 飛び出してきた獣のウイルス――ガルビーストの炎を一切恐れることなく、トマホークマンはその懐に飛び込んでいく。

 肝が冷える戦い方だ。あの炎が直撃すれば、彼も決してただでは済むまい。

 だが、その身のこなしと恐れるもののない戦い方はロックマンに近しい。光少年と相性が良いのも納得だ。

 前方の足場を水に沈める『オーシャンシード』でウイルスたちの足を止める。

 トマホークマン自身も得意とは言えない地形だが、炎の威力が弱まり動きが鈍ったウイルスたちは、彼にとってカモでしかない。

 

『ウララララララァ――――!』

 

 そしてその水が全て吹っ飛ぶほどの斧の一振り。

 ウイルスたち諸共、闇の穴を爆散させたトマホークマンの勝鬨が響き渡る。

 しかし、飛散していく闇と水によって、その一時前方の視界はきわめて悪くなった。

 だからこそ――襲撃を予測することが出来る。

 

『やらせぬ!』

『ハッ、これも防ぐかよ!』

 

 闇を突き破り、両肩のアンプから伸びる鋭い影の爪を、トマホークマンの前に出たナイトマンが受け止める。

 

『やはりこちらに来たか、ロックマン!』

『ナイトマン、バトルオペレーションだ!』

 

 ロックマンが向こう(シャドーマン)ばかりを狙う筈もない。

 これだけ自由に飛び回れるのなら、こちらの隙を窺って襲い掛かってくることも十分に考えられた。

 僥倖だ。積極的にこちらに接触してくるならばそれを利用するだけの話。

 戦闘に入ったナイトマンの鉄球を、ロックマンは寸でのところで回避する。あれは――回避に苦労したというよりも、速度を見せつけるためか。

 

『ほら、どうした? 来いよウスノロ!』

 

 ナイトマンは煽り立てるロックマンに激昂するようなナビではない。

 落ち着き払ったままに、光少年のオペレートに沿って行動する。

 背後からの『バンブーランス』、そちらに意識が僅かに動いたところで、『エリアスチール』を用いて一気に接近。

 そこからの近接攻撃は戦闘の鉄板だ。予想外だったのは、彼の持ち前の鉄球ではなく、巨大なソードを発現させたこと。

 振り払われたのは『ドリームソード』。

 通常のナビであれば、躱すことは困難だっただろう。だがロックマンは、瞬時に飛び上がることでプログラムアドバンスを回避した。

 

『なってねえな――攻撃ってのはこうするんだよっ!』

 

 意趣返しとばかりに、ロックマンは右腕に闇色のソードを装備し急降下してくる。

 『ダークソード』――ナイトマンならば受けきれるとはいえ、この時点であまり消耗し過ぎるのは望ましくない。

 

『――読めてたぜ、ロックマン!』

『何……!?』

 

 しかし、上を行ったのは光少年だった。

 あらかじめナイトマンに使用していた『シラハドリ』が『ダークソード』を受け止め、その隙に乗じ、巨大なソードの内から現れた“二振り目”でもってロックマンを叩き落とす。

 そして追撃――とまではいかなかったか。

 恐らくは『フルカスタム』を用いて今の連続攻撃を実現させたのだろうが、それによって早まった時間制限がバトルオペレーションを強制解除した。

 

『ロックマンの動きのクセはオレが誰より知ってるんだ。いつまでも好き放題させないぜ!』

『光熱斗ォ……ッ!』

 

 しかし、光少年に惜しむ様子はなく、寧ろ得意げだった。

 勝ちを確信したロックマンに一泡吹かせることが目的だったか。

 苛立ちを隠せないロックマンを見る限り、効果は覿面なようだ。

 

『投降しろ、ロックマン。お前に光熱斗と共に戦った記録が積み重なっている以上、彼がオペレートする我々には勝てまい』

『舐めやがって……まあ良い。この程度の傷、オレたちにとっては何の意味も持たねえ。同じようなことを続けていれば、先に息切れするのはそっちだ』

 

 それだけ言い残し、再度戦闘態勢に入ることなくロックマンは下がっていく。

 これは――シャドーマンの方に行った気配もないな。

 バリアパネルの向こう、彼が本来構えているべき砦に戻ったと見るべきか。

 

『ロックマン……! ――エールさん、さっきので大丈夫?』

『あと少し、データが欲しいところだね。だが、今のは良い動きだった。次も同じように出来るかい?』

『うん、やってみる』

 

 『シラハドリ』は確かに入ったが、ダメージとしては皆無に近い。何故ならば、今の戦闘は――私が提供したシステムを利用した、闇の力への対抗機能を用いていないためだ。

 その状態でかれらを相手取ることは無謀。秋原エリア3でブリザードマンと戦った光少年は熟知しているだろう。

 だが、今回に限ってはそれが必要だった。

 ダメージによって散った、ロックマンを構成するダークソウルを手元に引き寄せる。

 増幅したダークソウルの一端――ロックマンを元に戻すには、これが必要なのだ。

 

『先に進むぞ。もう一度ロックマンと交戦し、確実にデータを入手する』

『了解!』

 

 今の戦いでより勢い付いたと言えるだろう。

 侵攻速度は上昇し、より光少年のオペレートも冴えるようになった。

 まずはトマホークマンが前方を切り拓き、カーネルが中心となってウイルスたちを蹴散らす。

 不意の攻撃は、ナイトマンが難なく防ぐ。ロックマンがいない穴はやはり大きいが、それでも危なげなくバリアパネルに到達する。

 

『そちらは良い頃合いのようだな。であれば、後はこちらか。バリアキーの在り処には見当がついた。攻めるぞ、光熱斗!』

『おう! やるぜ、シャドーマン!』

 

 そして、残るバリアキーをシャドーマンが奪取する。

 結局彼はやり遂げたか。ロックマンの襲撃はなくなったとはいえ、やはり味方であれば頼りになる。

 

 バリアパネルの先は全員が集合してから進んだ方が良いというカーネルの判断から、シャドーマンが戻ってくるのを待つ。

 この先はあらかじめ入手していたエリアマップによれば、大きな広場となっている。

 相変わらず闇に覆われているのだろうが、ロックマンは近い筈だ。

 シャドーマンが戻ってくる頃には、カーネルたちも消耗を少なからず回復させたが、ロックマンはどう打って出てくるか。

 

『では、バリアパネルを開くぞ』

 

 二つ目のバリアキーを適用させる。

 前方を見ることさえかなわない強固な防壁が崩れ落ちていく。

 外側の闇の穴はすべて解放したものの、なおも濃い闇が包み込む、先のエリア。

 

 ――そこにはこれまでのリベレートミッションの対象エリアとは比較にならない、巨大な砦があった。

 

『これは……!』

 

 すぐ近くに闇の穴は存在している。恐らく、これがこのエリア最後の核だろう。

 だが、その前に立つのは、一体の巨大なウイルス。

 ガルビーストやロイホークのように、闇の力によって構成された、重厚な剣を持った黒騎士。

 凶暴さを発露せず、泰然とその場に構える黒騎士の力はガルビーストたちを遥かに上回る。

 ――そして。

 

『――ようこそ、オレの砦へ。オレ無しでも中々やれるじゃねえか』

 

 黒騎士の肩に乗り、こちらを見下ろすロックマン。

 しかしその姿は先程のシェードマンを思わせる姿とは、また違っていた。

 

 黒い体を走る、青白い光のライン。目元を覆うバイザー。

 そして――黒騎士の情報に浮かぶ、両端の出力孔に圧倒的なエネルギーを溜め込んだ、Uの字のジェネレーター。

 

『っつーわけで、歓迎の意味も込めてオレからのご褒美だ。駆けつけ一杯、召し上がれってな』

『ッ……!』

 

 ――放たれた巨大なレーザーに対して、どうにかナイトマンの防御が間に合った。

 

『グゥ、ゥ……!』

『ナイトマン!』

『心配、いらぬ……フン――ッ!』

 

 僅かに押されつつも、レーザーが放出を終えるまで耐えきったナイトマン。

 しかし、相当なダメージを負ったようで、その場に膝を突いた。

 

『相変わらず頑丈だなぁ、ナイトマンさんよォ。そんなところでくたばんなよ? ここからが本番なんだからな!』

 

 攻撃を終えたジェネレーターが、ロックマンの背中へと戻り、装着される。

 ――彼の力まで、ロックマンは有していたのか。

 直接戦ったことこそないが、どれだけ強力なナビだったのかはデューオとの戦いを通して知っている。

 レーザーソウル――シェードマンだけでなく、レーザーマンの力までもを手にしたロックマンとの戦いは、やはりそう簡単に終わることはないらしい。




・ブラッディア
ナイトマンの双子のお兄さん5に登場するガーディアンと呼ばれる、リベレートミッション中にマップ上に存在する騎士型のウイルス。
他のガーディアンに比べ高いHPを持ち、頻度の低い攻撃後にしか移動しないが、戦闘中は射撃攻撃を巨大な剣を盾にして防いでしまう。そのため通常のチップでダメージを与えにくい。
ダークロイドフェイズでは他のガーディアン同様、自軍ナビに近付いて攻撃してくる。
その際の移動範囲はダークパネルだけでなく通常のパネルにも及び、移動した通常のパネルをダークパネルに変えてしまう。
ダメージも大きいため早めに対処した方が良いガーディアン。
エンドエリア2が初登場となり、その後のリベレートミッションでもランクが上昇して手強い相手として立ちはだかる。量産型ナイトマンの双子のお兄さん


リベレートミッション後半戦。シェードソウルだけではありませんでした。

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