バグのかけらをひたすら集めるクリームランド在住のデバッガー 作:けっぺん
チーム・オブ・ブルース。
その名の通りブルースをリーダーとし、オフィシャル公認のもとに彼らはネビュラと戦っていたという。
活躍は日本だけではなく、先日話題となったネビュラシャーロ支部撤退のニュースも、彼らがシャーロ軍と共同で大規模な作戦を行ったことによるものらしい。
作戦の関係で伊集院少年はシャーロまで赴いていたらしく――その表情には子供らしくない疲れが見えた。
「ちょ、ちょっと待ってよバレルさん。ネビュラに占領されているエリアってアクセス制限があるんだよね? 炎山のチームと合同でってのは良いとして、次のリベレートミッションじゃブルースたちもオレがオペレートするってこと?」
確かに……それは気になるところだな。
協力するメンバーが増えるというのは単純に戦力アップの面で有効だろう。
だが、それを光少年一人がオペレートするとなると話は別だ。一気に操るナビが増えるというのは光少年の負担になり過ぎる。
それに、私の用意したパネルリベレートシステムや専用ツールについても、そこまで多人数にはすぐには対応できないぞ。
そう思っていれば、光少年の困惑気味の疑問を、バレル氏ではなく伊集院少年が否定した。
「いや、その必要はない。光、確かに必要とあれば、ブルースをお前に任せることもあるだろう。だが、今回についてはオレのチームでそれ以外の手段を用意するつもりだ」
「手段って……?」
「今は話せん。こちらにも考えがあってな――だがこちらの目論見通りに事が進めば、ネビュラの不意を突き、圧倒的に有利な形でエンドエリア5での作戦を決行することが出来るだろう」
ふむ。伊集院少年が考えていることは、恐らくバレル氏には共有済みなのだろう。そうでなければ共同戦線など許可すまい。
ともかく、次のリベレートミッションについて、光少年の負担が特別増えることはない。強いて言えば、日暮氏のナンバーマンの分くらいであることが分かっただけでも、現時点の収穫としよう。
「失礼。共同作戦とのことですが、そちらのチームのメンバーは来ていませんの? 相当規模の作戦となることを想定すると、匿名の者と手を組むというのは、些か困難だと感じますが」
プライド様の言うことはもっともだ。
ただでさえ多くの制限が掛かる状況で協力する以上、伊集院少年のチームのメンバーが正体不明という訳にもいかない。
エンドエリア5の解放はネビュラとの戦いにおける大きな節目となる。
そこに余計な不安があってほしくないというのは道理だろう。伊集院少年もそこは分かっているようで、プライド様に頷いた。
「その通りだ。こちらもその考えで、今日このチームに顔を出すことを決定した。本日は集まることは叶わなかったが、チームメンバーを紹介させてもらう。ブルース」
『かしこまりました、炎山様』
伊集院少年はPETを正面のボードに向け、ブルースをプラグインさせる。
あの画面に映し出されている情報は次の作戦に関してのもの。彼らに秘匿しなければならない情報は存在すまい。
ブルースは素早く映し出された情報を整理して中心を開けると、そこに彼らのチームメンバーを映し出し――おっと、これは。
思わず光少年と顔を見合わせる。伊集院少年はこちらのチームに顔馴染みがいることに呆れていたが、向こうもたいがいだな。
『巨大財閥ガウスコンツェルンの代表、テスラ・マグネッツと防御担当のマグネットマン。アメロッパのヘリコプターチーム『レッドサンダー』の元エースパイロット、チャーリー・エアスターと偵察担当のジャイロマン。花火職人、六尺玉燃次と攻撃担当のナパームマン。シャーロ軍ネットワーク第十三部隊隊長、ライカとブレイン担当のサーチマンに、同軍宇宙開発第二部隊隊長兼情報処理部隊隊長のシステム管理者グレースとギャラクシーマン。以上が我々のチームに参加するメンバーだ』
紹介されたメンバーのうち二人――伊集院少年を含めた三人は、数ヶ月前に地球を守る戦いを共に切り抜けた面々だ。
恐らく、伊集院少年もその際に見た実力から彼らを引き入れることを決定したのだろう。
その他、知っているのはマグネッツ氏か。
面識こそないものの、世界的巨大財閥ガウスコンツェルンの創始者である前会長ガウス・マグネッツ氏がゴスペルの構成員として事件を引き起こし逮捕されたことで経営を受け継ぎ、会社を傾かせることすらなく寧ろ成長させているテスラ・マグネッツ氏の手腕はニュースでよく目にする。
エアスター氏と六尺玉氏は知らないな。
アメロッパの『レッドサンダー』の名は聞いたことがあるが、生憎ヘリコプターの界隈には明るくないのだ。
「……花火職人?」
「……火力を必要としていたタイミングで偶然出会ってな。一般人ではあるが実力は本物だ。……元・WWWメンバーさえ候補に入っていてあまり余裕のない時期だったという事情もあるが」
――口を滑らせたといった様子で思わず零れたオフィシャル公式部隊の裏事情。
彼のチームにも色々と苦労があるのだろう。どこぞのリーダーのように金銭的な気苦労がなさそうなだけマシかもしれないが。
……元・WWWメンバーで火力を期待できる人材と聞いて一人、あまり思い出したくない顔が頭に浮かんだが忘れることにする。
「ま、マグネットマン――そっか。新しいオペレーターに受け継がれたんだ」
光少年はどうやらマグネットマンを知っているようだ。
ゴスペルの一連の事件に深く関わっていたようだし、その中で戦ったことがあったのかもしれない。
そういえば、ガウス・マグネッツ氏が逮捕されたのはプライド様を助けるための一件を起こした数日後だったな。
まさか――いや、流石にないか。不謹慎な憶測はやめておこう。
「それに炎山、ライカとグレースって……」
「ネビュラの攻撃が本格化して間もない頃から、シャーロ軍とオフィシャルは協力体制を組んでいた。ネビュラシャーロ支部との戦闘を支援する代わりに、チームに協力を願いたいという形だ。それで、小惑星の一件から上層部が判断し、彼らが派遣された」
既に小惑星衝突の危機については世界的に認知されているところ。
二つの大会の参加者が作戦に身を投じたということも知られている。この場で話しても問題ないのだろう。
……今考えても、無暗に認知されてしまったのは好ましくないところだが……まあ、ジャンクマンは逆にそれを望んでいる。仕方ないと割り切ろう。
「彼らとこのチームを引き合わせるのは恐らく作戦当日になるが、この場での紹介は以上とさせてもらう」
「……いいでしょう。半数のメンバーが熱斗の知人ということなら、ひとまず信頼を置きましょう」
「彼らとの作戦の日程及び詳細は追って説明する。そしてミヤビ、お前にはこれまで通りエンドエリア5の事前偵察を頼みたい」
伊集院少年からのメンバー紹介が終わり、バレル氏が言葉を引き継ぐ。
いつも通りのエリアの偵察指示にミヤビ氏は静かに頷いた。
「エンドエリア5の奥にはウラへの入り口がある。無論、侵入は容易くはないだろうが――お前とシャドーマンならばこれまでとは異なるアプローチが出来るだろう」
「フッ……ウラを背にするとは、連中も中々に胆力がある。よかろう、承った」
「よし……では、本日のミーティングはここまでとする」
バレル氏によって会議の終了が宣言され、私たちは部屋を出る。
……これも、どうなのだろうな。こうして科学省で活動しているものの、科学省自体は手続きをすれば一般人の見学が可能だ。
そんな中で、ここまで“普通ではない”メンバーが出てくるというのは妙な噂が立たないものか。
それを理解しているのか、バレル氏やミヤビ氏が同時に出てくることはなかったが。
「それでは、エール。わたくしは行きます」
「はい。お気をつけて、プライド様」
プライド様はこの後公務だ。今日は私がついていく内容でもないため、足早に科学省を出ていくプライド様を見送る。
時間が出来た訳だが……そうだ、今のうちにあれを光少年に渡しておくか。
「光少年、ちょっといいかい?」
「ん? どしたのエールさん? 今からディンゴとネットバトルしようと思ったんだけど」
「っと、それはすまない。すぐに終わらせよう。キミに渡しておきたいものがあったんだ」
光少年とディンゴ少年、どちらのナビも健在の状態で会ったならば、ネットバトルしないなどという選択もないだろう。
いてもたってもいられに様子のディンゴ少年にはほんの少し待っていてもらい、部屋の隅に移動する。
「これだ。見せびらかすことはないように」
「何を……って、エールさん!? これ……!」
渡したチップケースにただのチップが入っている訳ではないというのは察したようだ。
慎重にそれを開けば、当然のように彼は驚愕し、ケースを取り落としかけた。
そのケースの中に入っているのは、黒塗りされた何枚かのバトルチップ。
今の光少年やロックマンにとってはトラウマにもなるだろう――ダークチップである。
「な、なんだってこんなもの……!」
「安心したまえ。効果は殆ど抜いてある。誤って使ったところで強大な威力を発揮しないし、バグが起きることもない」
「……じゃあ、どうして――」
「これは――ロックマン、キミの内にあるダークソウルを刺激するものだ。このチップをソウルユニゾンにおける変換に使用することで、眠っているダークソウルを叩き起こすことが出来るだろう」
言ってしまえばこのチップ群は、ただそれだけの機能を残したもの。
ロックマン専用に調整した、ダークソウルを目覚めさせる機能と、あとはソウルユニゾンのための属性が込められているのみ。
ならば、フォルダを圧迫する分、普通のチップでも入れておいた方が戦いの邪魔にならないだろう。
であればどうして、これを彼らに渡したか。
『――そうか。カオスユニゾンに使うんだね!』
「正解だよ、ロックマン。これを使ってソウルユニゾンすることで、ダークソウルを抑え込み、あの状態を能動的に発動できる。上手く利用すれば、ダークチップに匹敵する力を武装として引き出せる」
「す、すげぇ……あれをオレたちの意思で使えるってことか」
「ただし、ダークソウルの力を制御するには、フルシンクロにも等しい集中力がいるだろう。少しでも集中を乱して制御を誤れば、暴発した闇の力が抜けだして、ロックマンに襲い掛かることも考えられる」
思い出すのは、レーザーマンの手によってロックマンのダークソウルが抜き出された時。
近くにいる者全てを攻撃する戦闘衝動は利用できるとも言えるが、最も危険に晒されるのは、暴発した時に傍にいる自分自身だ。
ダークロックマンほど確かな自我のある存在にはならないし、力を使い果たせば消える仮初の闇に過ぎないが、戦闘中にそんな存在が現れるということは彼らにとって大きなデメリットとなる。
「なるほど……モロハの剣ってやつだな。オレとロックマンで闇の力を上手く制御しなきゃならないのか」
「それに、リベレートミッションの最中に使うことは推奨できない。ロックマン以外のナビをオペレートする際にはなんの意味も持たない、フォルダを圧迫するだけのチップデータになるからね」
『けれど、エールさんのリベレートシステムを使わなくても、ダークロイドと対等に戦うカギにもなる……慎重に使わないとね、熱斗くん』
「ああ! 早速ディンゴとのネットバトルで練習……って訳にもいかないよな、流石に。後でウイルスバスティングで練習だ、ロックマン!」
「試すなら、あまり人の目につかないエリアにしたまえ。オフィシャルやらに聞かれたら、私の名前を出してくれればいい」
あれは私が
ほぼ、ただのブランクチップと変わらないから持っていても違法性はないものの、場合によっては疑われることもあるだろう。
その時は私が説明しよう。
あの力を使うためとはいえ、私がこうして手渡したのだ。そのくらいの責任は持たなければ。
「それじゃ、オレ行くね!」
「ああ。また」
駆けていく光少年。元気なものだ、やはり彼はロックマンといてこそだな。
さて、私は……特に何をするかは決めていないし、軽く食事でも済ませておくか。
科学省まで来て余暇が出来たのだ。せっかくだからサロマ嬢の弁当でも買うとしよう。
チーム・オブ・ブルースのメンバー紹介とカオスユニゾン解禁。
あちらのチームのシステム管理者として、4編に続いてグレースが参加します。
また、エールからダークチップ一式(ユニゾン専用)のプレゼント。
とはいえ強すぎるのでそこまで活躍の場は多くないと思います。ソウルユニゾンも霞みますしね。