バグのかけらをひたすら集めるクリームランド在住のデバッガー 作:けっぺん
そんな訳でN1編。ダイジェストでお送りします。
Dブロックの選手たちはそれまでのブロックと同じように、ジゴク島へ向かう船内で催眠ガスを受けた。
そうして倒れ込んでいる選手たちのPETをスタッフが操作し、予備フォルダを書き換える。
「やはりこれ、倫理的にアウトじゃないか?」
と改めて緑川氏に尋ねてみたが、肯定も否定もなく曖昧に唸るだけだった。
彼女も多少なり問題だとは思っているらしい。
まあ、選手たちのパニックは視聴者の注目を集める。流石に四度目はどうかとも思ったが、そのために用意されていたらしい台本はなかなかどうして、観ている側に不思議な新鮮さを与える。
そうしてジゴク島に到着した八名は、一回戦に挑む。
一回戦の内容は、ジゴク島エリアのどこかに配置されたビクトリーデータを手に入れること。
データは合計四枚。一枚手に入れた時点で一回戦突破が決定する。
四枚のデータが誰かの手に渡れば一回戦終了。乗り遅れた四名は問答無用で脱落する。
これで試されるのは、慣れないフォルダに適応する腕と未知のエリアに尻込みせず突き進む勇気。
一回戦用に装備された予備フォルダ――ジゴクフォルダは、射撃系のチップが少ない。
主軸はソード系チップと、炎を纏い自分の周辺を巻き込む『バーニングボディ』。
そしてこのエリアのウイルスは『バーニングボディ』の基となる、キオルシンの上位種であり床すれすれを炎を残しながら突っ込んでくるバドラフトと、高い耐久力と体表の硬さで悠長に攻略していたら時間を浪費するハルドボルズがメインだ。
床を燃やす炎によって足場を制限され、ホウガンを撃ち込んでくる彼らに有利を作るには、そんな彼らの戦場が出来る前に接近して高い威力を先にお見舞いすることが重要。
そんな、エリアに適した危険度の高い戦法こそ、誰より早くビクトリーデータを手にするための近道だ。
最初にそれに気付いたのは、荒駒少年だった。
見たところ彼の持ちナビ――まるでチェスにおけるキングの駒が己の役割の通りの豪奢な衣装に身を包んだかのようなキングマンは、機動力に難がある。
恐らく彼らの戦法は相手を自分の手のひらの上で転がし、一手一手を確実に詰め追い込んでいくスタイル。
理詰めのための演算能力に秀でていると思しきキングマンは、ゆったりとした動きながらすぐに適応した荒駒少年のオペレートもあって一切止まることなく進撃していく。
しかし、ウイルスへの対処は荒駒少年より一歩劣るものの、まるでデータの位置が分かっているかのように迷いなく進んでいった、件のネットバトラーQのナビが今回は先を行った。
誰より早くデータを獲得したQが一着。そして数十秒遅れて荒駒少年が二着となる。
これまでで最速のペースで半分のデータが獲得され、観客は期待感に熱狂する。
三着はジェニファー氏。ジョンソン氏と一歩も譲らず接戦を繰り広げたが、最後はバドラフトの群れに躊躇なく飛び込み、巻き上がる炎を間一髪で潜り抜ける蛮勇を見せた彼女に軍配が上がった。
そして最後の一枚。一番離れたところにあり、ウイルスもまた多い小道。
如何にもな場所だったが、ここを突破するのは至難の業だろうと他の選手が後回しにした試練に、光少年は挑んだ。
三つのスタイルのうち、機動力に長けたヒートシャドースタイルを使いこなし、ウイルスの群れを退けていくロックマン。
最後は間違いなくそこにある、と残った選手たちも追いかけるが、最初からそこを選んだ勇気によるアドバンテージは大きい。
砦として待ち構えていたハルドボルズの口が開いた瞬間、『バーニングボディ』でその口に突っ込み――爆発を突き抜けて現れたロックマンが最後のデータを掴み取る。
それで決着。データを手に入れることが出来なかった四人は開いた落とし穴で落下していき、ジゴク島の下層に連なる針の餌食となった――もちろん演出である。ちゃんと下にはマットが敷いてあり大事ないようになっている。
一回戦を突破した四人を迎えるのは、Cブロックの勝利者たち。
二つのブロックの勝利者はそれぞれ四つの扉の先で一対一のバトルを行う。
使うフォルダはジゴクフォルダのまま。そして、戦場は――運だ。
マグマ沸き立つ戦場。砂が敷き詰められた戦場。草木生い茂る戦場。氷に覆われた戦場。
四つの扉はいずれかの設定が施されたネットバトルマシンのある部屋に繋がっており、選んだその先で、同じくその扉を選んだ対戦相手と戦うことになる。
既にCブロックの勝者たちは扉の先にいる。
彼らに挑むため、Dブロックの四人も扉を選んだ。
まずは先程の勇気を見込んでとジェニファー氏に勧められて、光少年が草木の戦場を。
ジェニファー氏が氷の戦場を。
そして残り物には福があると荒駒少年がQの背中を強く押し、それに対しQは無機質に動いて砂の戦場を選ぶ。
よって荒駒少年はマグマの戦場。舞台を選んだ四人が同時に扉を開け、Cブロックの選手と対面する。
これは――好カードだな。
光少年の相手は白泉氏。草木の戦場で戦うことになったのはロックマンとメタルマンだ。
ここからは戦いが同時に行われる。
テレビでは戦況に進展があったバトルをそのたびに切り替えて映しているが、DNNが運営する動画の配信サービスでは一戦に集中した映像が観られる。
視聴者たちもテレビはそのままにPETを弄り、各々が注目する試合を確認。
一方で私は緑川氏と示し合わせていた通り、ノートパソコンを一台ずつ用意。
二人のPETも合わせて四戦同時視聴。
全てのバトルの要所を完全に見逃さないならこの手に限る。今後のバトルを分析するための情報にもなる。
AブロックとBブロックの戦いもそうして観ていた私たちを囲むようにスタッフたちも集まってきて、誰が勝つかという話題を中心とした賑やかな空間になる。
スタッフというよりこれではファンチームか何かだなと思いつつも、邪魔にならないなら何も言わない。
一斉にバトル開始。
それでようやく、ナビだけしか分かっていなかった選手のバトルスタイルが明らかになる。
一際異様なのは――荒駒少年とQだな。
キングマンを守るように配置される、彼と同サイズのチェスの駒。
ルークは防壁としてキングマンを守り、ポーンとナイトが敵に攻め入る。
キングマン自身は殆どその場から動かず戦場を見据える。そして手を振るだけの指示で巧みに駒を動かし、相手を追い詰めるのだ。
――実力者同士の戦いで、ここまで早く「決まったな」と確信できるのも珍しい。
相手となる選手も“待ち”が基本の理詰め型であったのが命運を分けた。
荒駒少年の戦法は、攻めに出つつも本丸は動かないというもの。
攻撃に隙が生まれなければ、“待ち”はいつまで経っても実らない。
Qのナビは……よくわからんな。
デザインはノーマルタイプに見えるが、およそ立ち回りが人型ナビとは思えない。
床を這うような摺り足でゆらゆらと不気味に動き、相手を困惑させ気付けば攻撃を命中させている。
動きづらさが牙を剥く砂の戦場を意にも介していない。むしろ、一方的に味方に付けて動けない敵をひたすら追い込んでいる。
やはり彼らが先に勝利すると確信しつつ、注目は光少年と白泉氏へ。
草木の戦場という比較的動きやすい場ではあるものの、メタルマンは草を掻き分けて床を進む歯車でもってロックマンの動きを制限する。
メタルマンはその重量のある体躯とは裏腹に、軽く浮遊することで床の影響を回避している。
草木が生むごく僅かな動きの阻害さえ受けることなく、早くも戦場のアドバンテージを得た。
歯車でロックマンを追い込みつつ、メタルマンはミサイルで攻撃を狙う。
対してロックマンはウッドシールドスタイルへとチェンジ。
ミサイルの攻撃を盾で受け止めつつ、草木のエネルギーを吸収して継戦能力を高める戦法のようだ。
連撃を受けて僅かに体勢を崩したロックマンの隙を見逃さず、ギザギザと尖った丸鋸の刃を放つ。
間一髪で防いだもののその場に崩れるロックマンは、そんな中で『ヒートショット』を撃ち攻撃をするが、メタルマンの強靭な体を前にしては大きなダメージとはならない。
ふむ――すでに戦場が決まった場所だと、エレキグランドスタイルで有利を築くのは難しい。
そしてウッドシールドのままだと攻め手に欠ける。回復を断続的に行えるとしても、先に息切れするのはロックマンだろう。
ならば、選べる方法は一つ。
ミサイルに立ち向かうように駆けだし、スタイルチェンジを行ったロックマンは一気に攻勢に出た。
ヒートシャドー。この姿は、他のスタイルがチップを消費しないダメージソースとして備える攻撃手段を持たない。
代わりに有するのが、任意のタイミングで使用できる、短時間の『インビジブル』。
それは普通のチップのそれより緊急としての意味合いが強い。タイミングを一歩間違えば迎撃もままならない近距離まで攻撃が迫ったところで解除され、より痛打となる可能性が高まるのだ。
しかし彼は怯まない。ミサイルの嵐をすり抜け、特有の足の速さでメタルマンに迫ると、『エレキソード』を叩き込む。
メタルマンの厚い装甲は、それでも崩れない。近接戦闘に切り替わったことで白泉氏もチップを使用し、ロックマンを迎え撃つ。
両者同時の『バーニングボディ』。辺りの草木を巻き込んでより一層燃え上がり、どちらの炎かもわからないほどに交じり合う。
この草木の戦場ではこの床を利用して勢いを増すこのチップは切り札となり得る。
それの激突。本来であれば耐久力で勝るメタルマンに負けの目はない。
そして――それを知らない光少年ではなく、無策でそんな選択はしない。勝ちを確信したように彼は笑った。
巻き上がる炎を斬り裂いて正面から飛んできた十字の刃を、炎に耐えるメタルマンは避けられなかった。
二つの炎が交じる渦の中に――ロックマンはいない。
白泉氏がそれに気付いた時にはもう遅い。渦の外に脱出していたロックマンの手には『フレイムソード』。炎の渦を纏って火力を高め、継続したダメージに膝を付いたメタルマンを一閃。
体力の限界を迎え、デリート前にプラグアウトコマンドが発動。メタルマンのいなくなった戦場で、ロックマンは勝利の証にと拳を突き上げた。
「今のロックマンって何が起きたの?」
「炎に巻き込まれる瞬間に
シャドースタイルの特性として有するその技は、『インビジブル』よりも遥かにタイミングがシビアで難易度が高い。
だが、決めれば相手の不意を突き攻撃に繋げやすい。
視界の悪さと断続的に大きなダメージを受けてなお戦闘不能にはならないだろうと光少年は判断し、咄嗟にロックマンに回避を選ばせたのだ。
近接戦闘に切り替わってからの見事な咄嗟の判断で勝利を掴んだ二人は準々決勝に駒を進める。
対して、白泉氏はここで敗退か。全員が勝ち残るなど望むべくもない話ではあるが、此方は少し残念だ。
光少年が戦っている間に残る三戦も終わり、CブロックとDブロックの激突で四人の進出者が決定する。
Dブロックからは一切の苦戦を見せずに勝利を収めた荒駒少年とQ、そして光少年。Cブロックからはあのラウル氏。
アメロッパの選手同士の戦いとなったジェニファー氏とラウル氏の戦いは、氷という滑りやすく、電気をよく通す戦場を完全に味方につけた彼とサンダーマンに軍配が上がった。
AブロックとBブロックからは、大山少年、綾小路嬢、伊集院少年、そして科学省近くで魚屋を営むマサ氏。
マサ氏が平均年齢を引き上げているが、残る三人は小学生。
世界の強者たちが集う場で大山少年と綾小路嬢がこれだけ勝ち残ったのは、正直意外だ。
特に対戦カードに助けられたということもなく、相手も世界を舞台に戦うに相応しい技量の持ち主だったが、彼らの可能性はその上を行っていたということだな。
……日本から六人――うち五人が子供――アメロッパから一人、不審者一人か。とんでもないベスト8になったな。
八人はこれから、ジゴク島で行われる最後の戦いに挑む。
そして、使用するフォルダは幾つかの選択肢が与えられる。
ジゴクフォルダのまま挑むも良いが、準々決勝専用に構築されたN1フォルダ四種類、そしてN1の予選で使われたらしいヨセンフォルダ。
対戦相手は事前に発表されない。この中から決められた時間で自分のポテンシャルを一番活かせると思ったフォルダを選び、それを用いてバトルを行う。
ちなみにこのうちのフォルダの一つ、N1フォルダCには、私からも『カモンスネーク』を提供した。
上手く使えば高い火力を発揮するが、その状況を作り出すのがそもそも難しいチップ。これを最大限に活かせる『デスマッチ2』もない。このフォルダを選ぼうというならかなりの技術が必要だが――おお、荒駒少年が選んだか。
これを選んだのは彼一人。あと人気なのは、これまでの戦いである程度使い方に慣れただろうジゴクフォルダと、さらに近接用チップが増え、切り札たるプログラムアドバンスも備えたN1フォルダA。
綾小路嬢が選んだのは多彩な攻撃パターンを確立できるN1フォルダD。珍しいチップも入っており対処のしにくいチップで次々攻め立てることが理論上は可能だが――チップコードがだいぶばらけているという弱点も持っている。手元にやってくるチップの運とそれを選ぶ一手一手が他より重要になるフォルダだ。
それぞれがフォルダを選ぶと、対戦カードが決まる。
光少年と大山少年。遂に秋原小の生徒同士の戦いだ。ここに来て小学生同士の戦いということもあり、より注目が集まる。
綾小路嬢とQ。背丈の差と仮面の不気味さで早くも圧されているが、今回は地形に手を加えられていない純粋なネットバトルだ。グライドにも十分勝機がある。
荒駒少年とマサ氏。守りのキングマンと攻めのシャークマン。どちらが“狩られる側”になるだろうか。
伊集院少年とラウル氏。冷静と冷静、今回この場に残った者たちの中でも、特に高い実力を持った二人。恐らく一番同時視聴は多いだろうが、ここに注目していたら多分息を付く暇がないな。
四組のバトルが始まれば、案の定ブルースとサンダーマンは早くも壮絶な激突を始めた。
ブルースのソードに一切劣ることなく、ラウル氏が適切に選んだチップでサンダーマンは迎え撃ち、さらには周囲に呼んだ雷雲で攻撃を仕掛ける。
雷を纏った雲は斬り裂くことにもリスクがある。それでいて、一度でも攻撃を受ければ痺れは動きを鈍らせ、更なる雷電の餌食となることは想像に難くない。
距離を取れば、ブルースは得意のソードを十全に活かせない。
それを理解している以上、伊集院少年が繰り出す指示はただ一つ。当たらなければ危険など無いとばかりの細かい命令にブルースは即座に反応し、走る稲妻を的確に躱している。
恐らく決まるのは一瞬だな。それを見逃さないようにしたいが、と思いつつ他の戦いにも目を向ける。
グライドとQのナビ。此方は――グライド優勢だ。
あのナビが通常とは違う変なカスタマイズをしていることは確実だが、カスタマイズの質でいえばグライドが遥かに勝る。
スペック差で可能な限り追い込む。それで押し切れるとは綾小路嬢も思っていまい。
だが、最初に出来るだけダメージを与えておけば、何か仕掛けられても巻き返せる可能性は高くなる。
――Qのヤツ、PETではなく綾小路嬢をジッと見ているな。綾小路嬢は気付いていないが。
キングマンとシャークマンの戦いは、早くも佳境に差し掛かっていた。
床に海の如く潜り、背びれを覗かせて泳ぐシャークマンはまさにサメ。
床を警戒するという普通のナビとの戦いとは違う感覚で混乱させ、その隙に相手の真下に忍び寄る。
ここまでの戦いで見えた情報で言えば、防壁の下を潜り抜けてキングマンに接近できるシャークマンは有利だった。
だが防壁が通用しないと見るや、荒駒少年は素早く作戦を変更。
フォルダに入った『パネルアウト』でシャークマンの行く“海”を削り、同時に誘導。
その行き先で、高く飛び上がりその重量で相手を押し潰すナイトを複数展開し、同時に着地した衝撃でシャークマンをあぶり出したのだ。
空へと打ち上げられた獲物を続けざまに『カモンスネーク』が襲う。抵抗出来ずに吹っ飛んだ先で――展開していたポーンたちが着地点を囲むように集まり、空に向けてソードを突き上げる。
たまらずシャークマンはプラグアウトし、まるで物語の騎士たちが共闘を誓い剣を交わらせたような状態で停止したポーンだけがそこに残る。
追い込み漁からの一切抵抗させない連続攻撃。見事なものだ。
いち早く準決勝進出を決めた荒駒少年の隣のマシンでは、ロックマンとガッツマンがぶつかり合っていた。
取り回しの良いソードチップと、重い一撃を生む拳を切り替えつつ、ガッツマンは奮戦している。
選んだフォルダは同じ、N1フォルダAだ。であれば必然、戦いは近接戦闘となる。
その距離はガッツマンの十八番だ。チップがなくとも彼はこの距離であれば、一撃で脅威となり得る攻撃をそのフィジカルから叩き込むことが出来る。
拳を振るい、ソードで切り込み、そして両手を合わせて変形させたハンマーを振り下ろして床に罅を入れる。
一つ一つがロックマンにとっては油断ならない攻撃だ。
フォルダのチップの攻撃力は高いものの、それを耐え得る耐久力をガッツマンは持っている。
そんなガッツマンを、大山少年の戦い方を光少年が知らない訳がない筈だ。
しかし光少年は彼の得意な距離で戦い、大山少年もそれに迎え撃つ。
その表情は楽しげだった。互いにこれまでもこの後も忘れ、今の戦いだけを考えているように。
それは、ともすればこの大会の場には相応しくはないかもしれない。
だが、彼らが戦う時の表情としてはこの上なく相応しいのだろう。
ロックマンがエレキグランドスタイルにチェンジ。互いに床を崩し、より戦場を狭くしていく。
動きを制限されたガッツマンに迫るロックマン。その手には『バリアブルソード』。変幻自在の刃がガッツマンを捉えるよりも早く、大山少年はチップを送信していた。
木属性の『バンブーソード』。現在電気属性に変化しているロックマンには致命傷となるだろう。
最低限の動きで振るわれたそれより先に攻撃することが叶わず、ロックマンは攻めたにも関わらず防御側となる。
『バリアブルソード』で『バンブーソード』を受け止め、しかしパワー負けして吹っ飛ばされる。
飛んだ先はガッツマンの背後。振り返ろうとして――周囲に空いた穴が咄嗟のそれをさせない。
ただし距離の関係でロックマンからもソードで攻撃するには遠い。あのフォルダの遠距離攻撃ではガッツマンが対応するまでに倒し切ることが出来ない。コマンドによっては斬撃を飛ばすことも出来る『バリアブルソード』を消費した以上、この距離で好機を狙える手段はただ一つ。
その手段を――光少年は手元に残していた。
三枚の基本ソード系チップがロックマンに送られる。その過程で三つのデータは結合し、一振りの巨大な剣と化す。
プログラムアドバンス――『ドリームソード』。
威力もリーチも他の追随を許さないソードの中の王者が、戦いに終止符を打つ。
振り下ろされた一撃にガッツマンは体力を失い、激戦の勝者が決定した。
見応えのある一戦が終わってすぐ。
ブルースとサンダーマンの接戦にも決着がつき、猛然と雷雲の中を突き進みサンダーマンへと辿り着いたブルースの一斬が勝利をもぎ取る。
残るは一つ。
綾小路嬢とQの戦いは――奇妙なこととなっていた。
何やら視界の不調を訴える綾小路嬢と、そのオペレートを受けられなくなったグライド。
二人を容赦なくQたちが追い込み――序盤の不利をあっという間に覆し、勝利した。
「……」
――なんだ、今の。
ここからでは何が起きたか分からない。PETを介した視界への攻撃か? 反則ではないが褒められた行為じゃないぞ。
解答は出ないままに、脱落者たる四人が落下していく。ともあれ、大山少年と綾小路嬢、二人ともよく頑張ったと言えよう。
ジゴク島での戦いは終わり、とうとうDNNの会場で戦う四人が決定した。
「それじゃ。私もそろそろスタンバイね。行ってくるわ」
「ああ。頑張りたまえ」
緑川氏を送り、パソコンの電源を落とす。
ここからはスタジアムで一戦ずつ戦いが行われる。これ以上は同時視聴の用意は必要ない。
ペットボトルの緑茶を一口。すっかり温くなった茶の苦味は、なんとも微妙だった。
・キングマン
3に登場する荒駒トラキチのナビ。
公募キャラであり、チェスのキングがモデルとなっている。
3のシナリオ中で戦うことになるナビの中で個人的に一番強いと感じたナビ。
ポーンとナイトにより休みなく攻撃が続き、本人は基本的に最後列から動かない。
と思ったら一撃圏内に入ると自らカッ飛んできて初見殺し技をぶちかましてくる。
トラキチと共に終盤にも見せ場を持つがゲーム中で台詞は一切ない。
・コーエツ兄さん
オモテの掲示板で質問やアドバイスを求める書き込みに対してよく返信している、ネットバトルが強くて面倒見のいい兄貴肌の頼れるお兄さん。らしい。クソコテとか言うのやめろ。
その人気と知名度は高く、どの掲示板でも一目置かれており後にゴエーツ兄さんなる彼に憧れるパチモンまで現れる。
確かに実力は高いようでN1にも出場したが惜しくも一回戦で敗北。後に掲示板で光少年を高く評価した。
本作では特に関わってくるキャラではないので全カットした。ごめん。
・ボンズ、ジェニファー、ジョンソン、ヤマダヨシオ
N1の出場者。上記のコーエツ兄さん含め、光少年のいるDブロックで戦った。
ジェニファー氏とジョンソン氏に関しては2のキャラと同一人物説があるが詳しくは不明。本作では同一人物として扱う。もう出ないけど。
ボンズは4に出る同名キャラとは多分無関係。ヤマダヨシオさんは知らないけどコーエツ兄さんが一目置いていたし凄いのだとは思う。
ダイジェストでお送りして準決勝まで飛ばしました。
準決勝に関してはちゃんと書きます。エールはまだ観客です。