バグのかけらをひたすら集めるクリームランド在住のデバッガー   作:けっぺん

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チェンジ.batを見つけるために掲示板に書き込んだらネチケットの注意だけして場所については教えてくれなかった書き込み好き。


王女のためのテロごっこ-3 【本】

 

 

 ロックマンがスイッチに送り込まれ、電脳世界に着地する。

 ここのネットワークシステムは随分と初期に作られたもので、更にメンテナンスもされていないことからとにかく古い。

 とりあえず真っ先に整備すべき床すら、あちこちに罅が入っている始末。

 それを見ているだけで、正直直したい衝動に駆られるものの、そんなことをしている場合ではない。

 

「よし! ロックマン、制御プログラムを探すんだ!」

『了解――って、あれ?』

 

 ロックマンに続いて電脳世界に下りてくるのは勿論、私が送り込んだもの。

 

「……プログラムくん?」

「トローペという名がある。支援機能を組み込んであるから、補助チップの節約にはなるだろう」

 

 看護師を模してデザインされた、白いプログラムくん。

 単独でウイルスと戦う力はないが、組んだナビの力が強ければ防御や回復を気に掛ける必要が減る分バスティングに集中できる。

 

『ッ、熱斗くん!』

「ウイルスか――凄い数だな……!」

 

 それは勿論。だいぶ仕込んだ。仕込み過ぎた気はしなくもない。

 ウイルスの接近を感知し、トローペがピクリと頭に付いた手――耳ではない――を震わせる。

 その手をロックマンに向け、バトルチップ『バリア』を使用。

 ロックマンに攻撃を一度だけ防ぐバリアを張り、その後自分は穴を掘って床下に潜り込む。

 

 トローペにはサポートを主としたチップフォルダを組み込んである。

 これを駆使して自分の保身と味方のサポートを逐次行うのがこの子の役割。

 ナビのように高度な判断は出来ないし、構築コストは高いが味方が戦いやすい場を作りナビのストレスを減らすことは、バグの抑止にも繋がるものだ。

 

「サンキュー、エールさん! よし、チップ送るぞロックマン!」

『うん!』

 

 ナビはオペレーターが何もしなければ、ナビが元々所有する手段による対処しか出来ない。

 その対処の幅を無限に広げるのが、オペレーターが送るバトルチップだ。

 これが、トローペにもインストールしているチップフォルダの本来の使い方。

 あらかじめ組んだフォルダから、一定時間おきに数枚が選ばれ、オペレーターの判断で使用可能になる。

 

 送られたチップデータが反映され、ロックマンの手元に『クロスボム』が出現する。

 着弾地点から十字に広がる爆発は多数のウイルスを相手取るのに向いている。

 しかしウイルスの数は多い。この爆発では全滅させることは出来ない。

 

『熱斗くん、次!』

「よっしゃ!」

 

 『ソニックウェーブ』――つるはしで床を叩きつけた衝撃が敵に向けて伝わっていく。

 床に沿っていくため飛行するウイルスには効果が薄いものの、敵を貫通して一定距離まで攻撃が及ぶ性質は狭い場所を進んでくるウイルスに絶大な効果を発揮する。

 制御プログラムがある最奥部に続く通路は狭い。これからやってくる敵にダメージを与えるのにはうってつけだ。

 

 近付いてくるウイルスたち。

 それに対する光少年とロックマンの対応は早い。

 近接戦闘に向いた『ワイドソード』を中心に、攻撃範囲を重視した戦法。

 高い攻撃力で少しずつ数を減らすよりも、広範囲のウイルスにダメージを与えていく。

 それはウイルス側もその数から本来の性能を発揮できないことを把握しているため。

 そして攻撃を回避し損ねても、トローペが使用したバリアがそれを防ぎ、連続攻撃の後はリカバリーチップを使用することでその傷を回復させる。

 

 補助チップが必要ないと確信して、攻撃に集中する二人。

 むう……警戒しないでほしいとはいったが、初対面の相手を信頼し過ぎではないか。

 役割分担をしっかり理解できているのは評価点ではあろうが……。

 

「『ダッシュアタック』送る! ロックマン、一気に突っ込め!」

 

 手をウイルスのキオルシンのように変形させたロックマンが構える。

 最早、数を減らしたウイルスたちの群れの中を突貫することは難しいことではない。

 

『やああぁぁ――!』

 

 ウイルスたちを蹴散らしながら一気に奥まで突き進むロックマン。

 単純な数の暴力を突破する力はあるか。だが、『ダッシュアタック』では最後の砦を突破できない。

 

『うわ!?』

「ハルドボルズか!」

 

 他のウイルスが壁となり、見えていなかったのだろう。制御プログラムの前に待ち構えていた、他とは格の違う“硬さ”を持ったウイルスに弾き返され、突撃は終了した。

 丸顔を固定砲台にしたような形状のハルドボルズ。

 コイツは形状の通り、自ら率先して動くようなことはない。

 そのため攻撃を当てるのは簡単だが、生半可な攻撃ではまったく意にも介さない防御力がある。

 

 当然、無敵のウイルスという訳でもなく、その防御力には穴がある。

 ことハルドボルズの場合は攻撃する時、大きく口を開く。

 その口に、逆に攻撃を叩き込んでやれば有効なダメージとなるのだ。

 ところが、そんな分かり切った対策のウイルスを最後の番人にしたりはしない。

 

『口を開けている時間が短い!?』

 

 という訳で、攻撃前後の隙を無くしてみた。

 単純だがこれで対応はだいぶ難しくなる。

 口を開けて射出してくる砲弾を対処しつつ同時に攻撃を叩き込むか、それとももう一つの対策法を取るか。

 

『熱斗くん、攻撃の合間を狙うなら一撃覚悟しないと駄目だ!』

「防御を突破できるチップは来てないし――それならロックマン、回避に専念だ! スタイルチェンジするぞ!」

『っ、了解!』

 

 ――ん?

 回避だけではジリ貧だ――しかし光少年には策があるらしい。

 攻撃と攻撃の合間に立ち止まったロックマン。その姿に変化が生じ、次にハルドボルズが攻撃した時には彼の姿は黄色い配色へと変わっていた。

 

 トローペを通して、現在のロックマンの情報が伝わってくる。

 ……属性が変わっているな。普段のロックマンは属性を持っていないようだが、今の姿は電気属性。

 かといって、属性付加だけではない。

 

「よし、頼むぞガッツマン!」

 

 特定のネットナビのデータを抽出し、チップデータにしたもの。

 通常の場合、使用すると決められたタイミング、決められた攻撃を行う、通常のチップに比べれば威力に秀でる傾向にある分、タイミングの難しいチップだ。

 元になったナビによってはある程度、状況に対応できるチップもあるだろう。

 だが――

 

「ナビチップとの連携だと……?」

 

 ロックマンは自身に飛んでくる攻撃に集中する。

 もう一人ナビがいるならば、隙の少ないウイルスだろうとそれを突くのは容易い。

 ハルドボルズが口を開けた瞬間、ナビチップによって召喚されたナビ――ガッツマンというらしい――が思いきりパンチを叩き込んだ。

 バキ、という音が響いた次の瞬間には、ハルドボルズの口はすっかり歪んで閉じることが出来なくなっている。

 こうなれば厄介なウイルスとてその脅威は激減する。召喚されたガッツマンが消失すると同時に、ロックマンが腕を変化させたバスターからラビリングが放たれる。

 僅かな時間ではあるものの、その電気を帯びた輪は当たった敵を麻痺させ攻撃を封じる。

 口を閉じることも、攻撃をすることも出来なくなったハルドボルズなど的にも等しい。

 

 一気に踏み込んだロックマンのソードがハルドボルズの口に突き刺さる。

 こうなれば高耐久のウイルスとて一溜まりもない。

 デリートされたハルドボルズ。これで障害はなくなった。素早く制御プログラムに近付くと、ロックマンは罠の停止コマンドを実行する。

 

『罠を停止させたよ! もうこれで大丈夫!』

「ナイス、ロックマン! よし、プラグアウトだ!」

『うん!』

 

 なるほど――一定に改造されたウイルスへの対応力もある。

 WWWを壊滅させたというのがまぐれだとは思ってはいなかったが、その実力の一端を見せてもらった。

 トローペをPETに戻し、メンテナンスバッチを実行する。

 短時間、しかも自動のため、十全なメンテナンスこそ行えないまでも、何もしないよりはマシだ。

 

「大したものだ。トローペが碌に役に立たなかったな」

「そんなことないって。リカバリーを使ってくれたのは凄い助かったよ」

「そう言ってくれると此方も安心する。しかし光少年、最後のロックマンの姿は一体……?」

「ああ、あれはスタイルチェンジって言って――」

 

 光少年がかいつまんで説明してくれたところによると、あれはロックマンに組み込まれたプログラムによって発現する特殊な機能らしい。

 自身の戦闘スタイルに応じて複数の能力が発現し、一つを選択して装備することで、より有利な状況を作り出すことが出来る。

 それを可能とするプログラムなど一から作ったらどれだけ掛かるかも分からないぞ。

 自分の行動からそれに適応する機能に変化する――そんなプログラムがアジーナだかの国宝にあったような気もするが、それを応用したものだろうか。

 今のネットワーク社会を作り出した光一族のネームバリューであれば、かの国宝を借り受けるなども可能かもしれない。

 

「それがキミとロックマンの強さの一端ということか――む」

 

 オート電話……光少年にも掛かってきていることから、タイミング的にどうやら会議のメンバーの誰からしい。

 他の地点で合流があったか、それとも――

 

『――ジョンソンだ……すまん、トラップにやられた……』

 

 聞こえてくるのは、掠れた声。

 どうやら、早々に脱落者が出たらしい。

 出来れば彼からの疑いは晴らしておきたかったのだが――まあ、いいか。

 どうせ死ぬほどの傷を与えるようにはなっていないし、保険はすぐに動く。

 

「ジョンソンさん! 助けに行く! 今どこ!?」

『いや……オレはもう駄目だ、それより、先に進むんだ……!』

 

 通信はそこで途絶える。

 

「……先を急いだ方が良さそうだな。とはいえ、焦りは禁物。先のような罠には気を付けろ」

「……わかった。行こう!」

 

 この部屋にはもう罠はない。

 先に伸びた通路を早歩きで進む。

 次の部屋――先程と変わらない大きさの部屋の隅、そこに蹲るドレス姿を見た時、私は思わず今やっている行動もその目的も忘却して走っていた。

 

「――プライド様っ!」

「ちょ、エールさん!? 焦るなってば!」

 

 遅れて駆け込んできた光少年。

 彼が部屋に入ってくると同時、部屋が扉で塞がれ、大きな地鳴りが発生した。




・スタイルチェンジ
2、3で登場したバトルシステム。
自身のバトルスタイルに応じてロックマンの姿が変わり、特殊能力が付く。
全てのスタイルで長所があり、どれを使うかはプレイヤー次第だが、特定のスタイルでないとバトルで手に入らないチップがある。

・エレキブラザースタイル
2より登場したスタイルチェンジの一つ。属性は電気。
ナビチップを高い頻度で使うバトルスタイルの場合、ブラザースタイルに変化する。
スタイル特有の特徴として、ナビチップをフォルダに多く入れられるようになる。
多分、創作作品で表現することが難しいスタイル堂々の一位。
アニメでは合体能力みたいになっていたが、本作での能力は『ナビチップ効果の適宜変更』。
効果時間には通常通り限りがあるものの、攻撃方法の変更などによりナビとの連携が可能。
ナビチップの隠しコマンドの発展みたいなイメージ。

・最後の焦ったエール
素の動揺なのでこの部屋にも矢の罠とかあったら面倒なことになってた。
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