異世界賃貸見聞録   作:オカタヌキ

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03号室 遠出の賢者

 

「ちょっと今日遠出してみる?」

 

「また唐突だね君は」

 

 午前7時、丼茶碗山盛りの納豆ご飯をかっ食らいながら呆れた視線を向ける賢者パラケルスス。早いもので彼との遭遇から一週間が経過し、これまでの食生活でその血色は随分と良くなった。

 

「いやね、この前まとまった収入があったことだし、アパートの修繕に宛てたいと思ってね。フローリングやら外装やら、ついでに家電とかも新調しようと思ってさ」

 

「ほーん、それで荷運びの手伝いに、ね。

 てか、それならいっそ丸ごと建て替えればいいじゃないの。延べ棒(インゴット)くらい作ろうと思えばもっと作れるよ?」

 

「限度があるっての限度が。ただでさえ残りの二本も眠らせてるってのに、これ以上やって妙な足でもついたら確実に面倒なことになるだろうが。

 なにより、その間の俺らの住処はどうするんだよ」

 

「ボリボリボリ……ふぅ~ん」

 

 気の抜けた返事をしながらキョージュは沢庵を貪る。この賢者、どうにも日本食がいたく気に入ったらしく,今や三食米である。

 

「ま、了解。衣食住世話になってるワケだし、それくらいの骨は折れるよ」

 

「あんがとさん。ま、何より……」

 

「あん?」

 

「なんやかんやでこっちきて一週間一週間たったわけだし、これくらいのことはしてやるよ」

 

「ナオト……」

 

 キョージュは箸を止め、唖然と此方を眺めている。

 

「男のツンデレとか誰得よwwwww」

 

はっ倒されてぇかこの野郎っっ!!

 

 たった一週間でカブれ過ぎだわこの賢者。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 そんなこんなで、車走らすこと数十分。

 

「しかし、前知識はあったけど車というのは便利なものだね。乗り心地も機動性も馬車と雲泥の差だね。中古の使い古しとはいえ」

 

「いちいっっち余計なんだよ……!!」

 

 確かにおじさんの使い古しだけどもさ……!!

 

 なんてやってるうちに、やってきましたスーパーセンター。

 

「ほーん、ここが」

 

「そ、食品やら家具やら色んな店が一絡げに纏まってる。ここいらじゃ一番デカい商業施設だ」

 

 ま、所詮田舎のスーパーだから、都会のショッピングモールとは比べ物にならんが。

 

「んじゃ行くぞ。食品は最後にしてまずは家電から見てこうか」

 

「それより腹減ったよ。僕あれ……ラーメン、ラーメン食べたい」

 

「あんた朝飯食ったばっかやろがい」

 

 

 

そうして、野郎二人して買い物を進めていたわけなのだが、正直油断してた。

 

 ・家電コーナー

 

「おおお~~~~っ、凄いねこれは!!何をどうしたらこんな薄っぺらな中にコレだけの機能が詰め込めるんだ!?ナオト、これ買おう!解体したい!!」

 

「壊すとわかってるものが買えるかぃ」

 

 

 ・生活用品コーナー

 

「おお、これ漫画にあった。“混ぜるな危険”のやつだ」

 

「やるなよ、絶っっっ対にやるなよ?フリじゃねえからな!!」

 

 

 ・W〇Y書店

 

「ハガレンならうちにあるでしょうが!!」

 

「やだやだやだやだ!!自分のが欲しいサラのやつがいい~~!!!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 と、すったもんだしつつ気が付けば日も傾いた頃合いに、俺たちは2人してようやく帰路についていた。

 

「キョージュ、俺ぁあんたはもうちっと落ち着いたやつと思ってたよ」

 

「いやぁ知的探求心こそが我が本能であるからして」

 

 なんか余計に疲れてしまった。来日外国人のテンプレのようなテンションしおってからに……

 

「つか重いんだけど。理系のキャパ考えてよ~」

 

「つべこべ言わない。ほとんどあんたのためのものなんだから。フローリングとかは俺が持ってるんだからさ~」

 

「へぇ~い」

 

なんてグダグダ言いながらも、キョージュはスーパー備え付けの荷台に積んだ荷物を押しながら車へ向かっている。(因みに結局買ったハガレン全巻セットと設定資料集にイラスト集がしっかり積まれている)

 

「こりゃもう夕飯も食ってくか。ハンバーガーでも食う?」

 

「いやあれ要するに肉のサンドイッチでしょ?パスパス」

 

「じゃーフライドチキン?」

 

「いやいや、どうせならもっとジャパニーズを感じられるものがいいよ。あれあれ、カツドォーン食べたいカツドォーン」

 

「どこで仕入れてくるんだそのネタほんとに……とりあえず荷物積み込んでからな」

 

「あ~~い……まあでも」

 

「なに?」

 

「……なかなかに楽しかったよ」

 

 唐突にそんなことを言うキョージュに、思わず足が止まる。気が付けば、自然と言葉が出ていた。

 

「いや、野郎のデレってまじキモイな。ごめんねなんか朝は」

 

「うん、僕も今君を無償にぶっ飛ばしてやりたくなったよ」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

side???

 

「え、うっそマジであれ?」

 

 駐車場を大荷物を押していく男が二人。一人は平凡そのもののフツーの人間。そしてもう一人、ぼさぼさの白髪をした外国人。ちらほらと視線を集めているが、おおよそホームステイか何かだと思われるのか、特にそれ以上の注目はない。

 

 外見(ガワ)は問題じゃない、重要なのはそのナカミ

 

「チョ~~~、美味しそうなんですけど♪」

 

 チラリと、深紅の舌が唇を舐めた。

 

 

 

 

 

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