補給途絶鎮守府   作:フユガスキ

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裁きの鉄槌を

 青妖精の言動に呆れつつ、β大佐の心配をする。β大佐の傷は叢雲や白露ほど酷いものではなく、走って転んだ程度の傷である。とはいえ酷い切り傷に見えるのは、服が身体の傷に見合わないほど裂けていて、泥だらけなのも相まって大げさに見えるからだろう。

 と、冷静な解釈をしている場合ではなかった。上手くして裁判を避け、それでいて日本に帰らなければ。

 

 β大佐に近づき、俺は心配しているというアピールをする。これは抜群に効果的とは言えない。ここからどう動くかで、相手の印象は変わるものだ。

 

「貴様がこれをやったのであろう?」

 

「いえ、これは妖精らが自発的に行ったもので、関わってないです」

 

 まずは責任を避ける。そもそも、妖精は俺に従っていることはないので、本当に責任はない。

 そして、ここで、俺にも責任があるなどと悪びれるのは悪手だ。小学生が許しを乞うときにするなら効果的だが、この言葉は責任が俺にあると言っているようなものなので、非常に危険だ。

 

「そう、か。あれは妖精がしでかしたものなのか。…まあいいだろう」

 

 しかし、俺は毎回これに失敗する。理由を問うと、言葉遣いが粗削りのため、もっと言葉を尽くせ、と答えられる。何故だ…。

 

『さて、艦娘はどう、と考えるかな』

 

 よし、後は直ぐにでも日本に……は?急に何言ってんの?昨日もそんなことを言っていたが、また聞くのか。

 β大佐はピクッと肩を動かし、こちらを睨めつける。な、なんだ?

 

「…艦娘は道具でない。価値など、存在しない」

 

 何故か、慎重に言葉を選ぶように、β大佐は話す。あれ?海上で道具というより、奴隷的な扱いをしていなかったか?

 それがこうも意見を変えているのは、可能性としては、改心したか、俺の認識が間違っていたか、の二択である。

 

 まあ、とはいえ、二択のどちらにせよ、今、彼は艦娘は道具であるという主張らしい。

 口では道具じゃない、価値がないなどと言っているが、価値云々の話をしている時点で艦娘は道具だと思っているのだ。

 

 どういうことかというと、もし、艦娘は道具だと考えているとするならば、それらは価値の高低で判断するだろう。もし艦娘が道具でないとするならば『価値がない』ではなく、『価値以外の何かしらで比べる』若しくは『価値などの指標を使わない』だろう。

 つまり、価値の話をしている時点で、艦娘は道具だと主張している者と同じ土俵にしか立っていないのである。

 

 喧嘩は同じレベルでしか起きない、というあまり知らない有名人の名言を一部引用させてもらうと、同レベルで考えていれば、それは同じ考えだということだ。

 

 と、説明口調で心の中で喋ったのには理由がある。

 それは、青妖精に伝えるためだ。俺は関わりたくない案件なので、そちらで解決していただくとありがたい。取り敢えず意見のみ言って逃げる作戦である。

 

「…おっ」

 

 などと思っていたら何故か左腕が――12cmたんそー砲が上がっていく。抑えようとしても俺の細腕の力では足りず、上がり切るとその砲口はβ大佐に向いていた。

 

『どうぐあつかいなんて、つかえないこあつかいなんて、わたくしだけでじゅうぶんかしら』

 

 β大佐は明らかに恐れの表情が浮かんでいる。

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