肥満体型の体に脂汗を流し、目は瞼から飛び出そうな程にこの銃口を見ている。
けれども、少しの理性は残っており、未だに冷静を保っている。
「き、貴様っ。その銃を降ろせっ」
もちろん俺も降ろそうとしている。だが、どういうわけか、びくともしない。
これはおそらく年増妖精のしでかしたものだろう。そう予想はつくが、流石にこれは駄目だろうと思い、年増妖精に止めるよう言おうとすると、
『すこしみておいてくださいまし』
少し…少しね。取り敢えず青妖精も止めに入らないのでいいのだろうと思う。青妖精は艦娘が大事らしいので艦娘の立場が悪くなるようなことはしない筈だ。
俺の立場はあまりない。故におそらく俺だけでも守れる。守る対象が分からないが。
「わ、私が悪かった。この島には二度と近づかないと約束しよう」
え、それは困る。β大佐が来なくなるのは構わないのだが、もしβ大佐が交友関係のあるものに、この島には注意するように言ってしまえば、俺が日本に帰ることが今よりも出来なくなってしまう。
「あ、金、金をやろう。いくらだ」
いえ、金はいらないです。使い道ないし。
……いや、ちょっと待てよ。ここで日本に帰らせろと言えば帰れるのではなかろうか。いやいや、それでは帰ったあとに何されるか分かったものではないな。でも、日本…。うーん、何か良い言い回しはないものか。
「昇級もさせてやろう。中尉、いや大尉でどうだ」
大尉…大尉!?そうか、その手があったか。
階級が上がることでこの島から脱出し、日本に帰れるような場所に行けるかもしれない。
よし、これだ。喋っていい?いいよね?少しは経ったよね?異論は認めない。
「あ、あの――」
――ばァんッ!!――
爆発したことによる熱さと衝撃を感じ、手に負荷がかかると同時に、カメラのフラッシュのような光に反射的に目を瞑る。
爆発?なんで?近い。俺?腕の衝撃。12cmたんそー砲を撃った?誰に?β大佐?暴発?死?
死…死!!?そう思って目を開けるとそこには、赤い縁の眼鏡をかけ、肩に届かないぐらいの茶髪を揺らし、大きく腕を広げ誰かを守るように立っている少女がいた。
その目は疑問や驚愕、憤怒が伺えて、その感情の対象は俺であることを知覚する。
何故、疑問。何故、驚愕。何故、憤怒。分からない。だから、その思考は破棄する。
それらよりも今は別に考えなければならないことがある。何故そこにいる
「…白露」
絶対に怒らせてはならないと思っていた艦娘に喧嘩を売り、しかもそれが俺の上位互換である白露――化け物であったことに戦慄し、今度は俺が恐怖するのだった。