補給途絶鎮守府   作:フユガスキ

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2話ぶりの提督視点です。


悪夢さながら

《ネ級…重巡ネ級…elite》

 

 漣との別れ際に運良くもらった例の通信機により、艦娘と提督的に共同して戦うことが出来た。

 この、何故か――いや、まあ、理由は解るのだが――何故か厄介払いされ、情報の少ないこの島で、遠距離で話せるというのはとても利用価値の高いものだ。

 

 それ故に、ただでさえその大事なものを海に落とした前例のある川内に通信機を持たせず、まだ前科のない白露に旗艦として持たせたのだ。

 

 そこで、1、2隻とは思えない量の爆発音のあとに聞こえてくる名前は、俺と白露、少なくとも俺にとっては悪魔的存在だった。

 ネ級、忘れもしない。あの二日目の夜には、偶々中破であったから見逃してもらえた。けれどもそうでなければ、俺らは確実に死んでいただろう。白露しかまともに戦えない頃にとっては、最悪の深海棲艦である。

 

 しかもエリートらしい。字面からして強そうだ。

 

『どうかしたのかい?』

 

「いや、なにも」

 

 きっと白露たちでは敵わない。川内というのが、あの軽巡ホ級と同程度の力だったとして、多く見積もっても駆逐艦2人分といえる。

 そうなると、白露が3人で束になって戦っているぐらいということだ。

 

 重巡は軽巡より強いという青妖精の情報から、高く見積もって互角ぐらいではなかろうか。

 敵いそうもない。しかもそれは万全なときに、だ。敵艦を何隻も倒したあとであれば、それは万全とは言えないだろう。

 

『小さな嘘はつくべきではないよ』

 

「ちょっと待ってくれ」

 

……死にたくない。白露達が沈めば次は俺の番だ。怖い。恐ろしい。

 

『白露さん達が沈みそうなのか。じゃあすぐに撤退させないと』

 

 さて、恐怖というのは何種類かある。

 その内俺がこの島で体験した恐怖は、まずは得体の知れない恐怖だろう。

 例えば、幽霊だったり、お化けだったりがこれに当たる。何故か俺の体が白露だったのが、その恐怖だ。

 

 次に物理的な恐怖を味わった。艦娘と呼ばれるものの怪力や、深海棲艦からの砲撃や雷撃がそれに当たる。

 

 他にも生物的な恐怖――人間ならば死んでいるだろうと思えるほどの傷や、それらが瞬時に治ること――等もあるが、今回は真新しいものだ。

 名付けるのならば、理解できるからこその恐怖、だろうか。

 

 理解できるからこその恐怖。それはネ級という深海棲艦の強さを知ってしまったが故に、どうしても希望が抱けない。

 四面楚歌、八方塞がり、八方美人…最後のは違うな。つまりは抜け道がなく、死への一本道ということだ。

 

『…早く。なんで言わないんだっ』

 

……いや、まだだ。まだ手札をすべて切ったわけではない。今の状況では死ぬという、それだけだ。

 

 まずは目的として、生き延びることを設定しよう。そして、脅威となる敵と、自分の使える手札を並べて、どう目的を達成するかを考える。

 

 艦娘は手持ちにいない。あるのは通信機と青妖精ら。通信機からは、精々、いつ沈むかの情報ぐらいしかないと想定して、ネ級がこの島に来る前に島を脱出すれば問題ないだろうか。

 

 しかし、どうやって…?

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