どうやって逃げきれば…そもそも逃げ場は?…海に出れば、α中尉に会えれば…方法は?…艤装…ない…妖精の不思議パワー…これだ!
――パンッ
唐突に何かの弾けたような軽い音がする。
そちらを見れば、どこか怒っていそうな青妖精と普段通りな年増妖精がそこに立っている。
『まずは、艦娘を助ける。考えるのはそれからだろう』
艦娘を助ける…?なぜ?
そもそも俺は無力だ。人を助けることはできない。それに俺にそれをするメリットがない。
それよか、なぜ俺は死んでもいいのだ。
青妖精は何もかもにおいて艦娘を優先する。それこそ俺が死んでも構わない、とでも言うかのように。
もちろん、強弱という土俵において、俺は艦娘に劣っており、この島での存在価値は低い。
けれども、俺がそこに行ったとして何が変わろうか。
無駄に俺の死体ができ、精々、魚の餌になるぐらいだ。
それを犠牲だと、艦娘に対する誠意だと言うのだろうか。
「艦娘を助ける?そんなことできるわけ無いだろう。白露達は俺を助けてくれているんだ。逆らえないから、守りたいから、理由は様々だろうが、そこに俺が助けられるものはない」
『違う。助けるのだから対価として、艦娘を沈ませないことが提督には必要だ』
「何を言っているんだ。助けてもらうというのに、対価が必要なのであれば、それは実績が残らなければ意味がない。だから、まずは助けたという結果が不可欠だ」
『そうじゃない。提督はここに残って、最後まで艦娘に前を向かせなければならない。けれども今回は勝てそうにもないから、艦娘を一旦後ろに下げろ、と言っているんだ』
「下げようが何しようが、ネ級と戦うことに変わりはない。むしろ3人がここで死ぬより、白露達の意思を汲み取って、一人でも助かるほうがいい」
意思を汲み取る。何ともウザったい言葉だ。
きっと頭に血が上りすぎたせいで、まともに思考できていなかったのだ。
青妖精は黙り込み、俯いてしまった。
瞬間。カッと顔を上げたかと思えば、月光の中で少しばかり赤く揺らめいた。
『いい加減にしろ人間。私もやっと信じられるかと思えば、…まったく。…人間一人程度なら、廃人にできるが、試してみようか』
暴力、だろうか。その言葉が嘘か真か分からないが、おそらく、あのβ大佐をあそこまで萎縮させた謎の力だろう。
怖い、怖いが、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている人間に、普通の判断というものはできない。こういう時は、体が普段よりいい動きをするし、気も大きくなって、なんだってできると思える。
それに、我慢強さには少々自信があるのだ。なんたって俺は長兄だから。
クッ殺的な展開?いえいえ、来ないです。ケンゼンなので。