青妖精の近くで、フヨフヨと蠢く謎の光。青妖精が言うにはこれは純粋なエネルギー体だそうだ。
細々した説明は省くね、と前置きし、話を始める。
『このエネルギーを使うと艦娘に強化が施せて、資源を使って作り出した純度の高いエネルギーは、艦娘に比較的強力な強化を行えて……って、そうじゃなくて、取り敢えず、これを手に持って』
はい、と渡される。え、は、え?持てるのそれ?
若干疑いつつ、それに手を差し伸べると、よく分からないが手に乗った。
ただ、手に乗った感覚はない。けれども、手の上から別のところに移動しないため、おそらく手に乗っている。意味わからない。
『じゃあ、これを持って、白露さんを改装して』
改装…?改二とかと似たようなものか?
いや、どうやって?どうやって改装するんだよ。
「白露、改そ――ッ」
改装ってできるか、と問おうとした時、淡い光が一段と強く光り、海の向こうへと飛んでいった。
いったい、何だったのだろうか。青妖精は敬礼してるし…誰か説明してくれ。
《ふふ、いい感じにカッコいいね》
《あれ?何かあったのか?》
タイミングからして、おそらくあのエネルギーと白露が関係するのだろう。となると、導き出される答えは…全くない。
「え、妖精、どうなってんの?」
『提督が提督であるべき理由。または、艦娘が提督を必要とする理由、だよ』
俺の質問に答えてくださる?
いや、まぁ、俺が艦娘にとって必要なのは分かった。何故かは分からないが。
それはそれとして、どうなってるのだ、この因果は。
『提督が白露さんを改にしたんだよ』
「いつ?」
『さっき』
直近の出来事と言えば、どうせ死ぬんだから、と艦娘に悪態をついていたぐらいか。
まぁ、化け物呼ばわりする程、化け物ではないなと、ちょっとは反省した。いや、そもそも第一印象が悪いのが原因だ。つまり俺は悪くない。うん、そうだ。……今はどうでもいいな。
取り敢えず、毎度あり〜、だの、いっけぇー、だの独り言を言っている白露に、かけ声が出る程度には危機がなくなったと安堵を覚え、青妖精の奥の砂浜に目を向ける。
「光ってるな」
そう、何故か白く光っているのだ。先のエネルギー体が関係するのか、それとも全く別なのか分からない。
しかしながら、俺にはこの光に見覚えがある。川内にあった時のことだ。ドロップ艦娘、と呼ばれる者が出てきた前例があるので、今回も同じなのだろう。
《終わったよ》
通信機からそんな声が聞こえる。終わった、と言えば先程のは絶望を指し示す代名詞だったが、声の調子からして、「勝った」の終わったなのだろう。
…そうか、良かった。
…あれ?何で嬉しがってるのだ。きっと、嬉しいと思うことがあったのだろう。それは何だろうか。戦いに勝利したことだろうか。サッカー観戦や野球観戦で応援したチームの勝ったとき、戦ってもないのに嬉しがるアレだ。
つまり、俺は白露達を応援していたのだ。白露達に生きて欲しいと思っていたのだ。
あれだけ嫌っておいて、手のひら返しが早いなぁ。本当に。
何にもできないのに、過剰な力を手に入れて、優秀な者を有効に使えない。しかも現場で有効に使われる事もできない。それなのに、あれだけ愚かな挙げ句、こうして醜態を晒している。本当に、クズだなぁ。
《じゃあ、気をつけて帰ってこいよ》
一旦言葉を切り、集中する。
ハラワタが煮えくり返りそうになるほど、自分の愚かさに怒り、声が震えそうなほど恥ずかしい、けれども、それを表に出すほど、俺は子どもではない。
《白露》
《はーい!》
俺にとっては一種の宣言だった。
もう化け物ではなく、白露として、何のレッテルも貼り付けずに、真っ直ぐに見るための、誓いだ。
朝日の方向を向き、見据える。
10日前の俺に問おう。見た目高校生の女子――まぁ、川内とか、目の前の光る艦娘とか、いるが――しかも、見た目は同じで、怪力で、俺のサポートをする為に秘書艦を学び、厳しい親のような妖精らを味方につける美少女と、この小さな島で過ごすのは幸福だろうか。
答えは是だ。幸福に決まっているだろう。少なくとも、誰かわからない人と、無限に出会わないといけないことより、遥かに幸福である。
日本?帰りたいさ。帰りたいけれども、それまでは艦娘と過ごすのも悪くはない。
通信機の電源を切り、服のポケットにしまう。初めてこの服を服として使ったのではなかろうか。
「ウラァァアァ!」
叫びたい気分だったので叫んだ。
偶に漫画でこういうのを見かけるが、確かに気持ちいいものだ。いまズボンとシャツしか着ていないため、朝の風が気持ちいい。
そんなことを思っていると、丁度叫び始めたタイミングで光は消え、艦娘が顕になる。
「…あの、榛名さんじゃありませんが、私は、そんな提督でも大丈夫です…。あ、私は、軽巡洋艦、神通です。よろしくお願いします」
第4章完結です。作者的には1〜4章が第一遍ですかね。