補給途絶鎮守府   作:フユガスキ

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安寧のじかん

 何故か本当の意味でお礼参りされた後、そこには元からそうであったように、静けさが戻っていた。

 一つ驚いたのは、俺達があの夜に会った漣は俺の知っている漣じゃないことだ。どうやら、あの漣はサキ中佐の漣らしく、α中尉の漣より言葉が分からなかった。

 

 と、他人のことを思い出すのはここまでにして、今日の主役に何か声をかけなければならない。

 

 今日の主役――神通は、今朝現れた艦娘だ。そして、俺の新たな艦娘でもある。

 

「神通ー、不貞腐れてないで、こっちゃ来い」

 

「姉さん、私は不貞腐れてません。ただ、私は必要なさそうな提督ではなく、話し相手になる妖精さんと話しているだけです」

 

 川内曰く、神通は責任感の強い艦娘らしい。自分が頼られる事は多く、だから当たり前に、本当は誰かに頼るべきことをやってしまう。

 そこを他人に強要しないところは良いんだけどね、だそうだ。

 

 いや、これ、どう見ても我儘だろう。

 基本的に俺は、責任感が強い人と、自己中心的な人、というのは同じだと思っている。他人から見て、ある仕事を一人で出来ているならば、責任感の強い人と呼ばれ、出来ていなければ、自己中心的な人と言われる。

 だから、根本的に、仕事を一人でやっていることに変わりはないので、似たようなものだと俺は思うのだ。

 

 そういった意味で神通は次女として標準的であると言える。

 次女、次男、それぞれに言えることだが、どちらも多少我儘だったり、世話好きだったりする。長男長女は弟妹よりも先に 挑戦 をしなければいけないため、失敗が多い。だから、それを見て育つ弟妹は、兄姉より優秀かつ世話好きなのだ。

 

 そして、よく考えてみれば、この島には長男長女しかいない。妹は神通が初だ。

 だからこそ、我儘は我慢するという当たり前が効かない初のケースであり、妹属性には非常に、兄としての、という思考が働く。

 

 とはいえ、別家庭にまでそれを持ち込むわけにはいかないので、ここは自重する。

 

「ほら、立って立って。二水戦の筆頭がそんなんでどうすんの」

 

「二水戦…そうでした。姉さん、ありがとうございます。私達は切り込み担当。その覚悟に比べれば、この程度造作もありません」

 

 とてつもなくディスられている気がするが、きっと言葉を間違えただけだろう。うん。

 

「あの…軽巡洋艦、神通です。よろしくお願い致します」

 

「あぁ、よろしく」

 

 神通と挨拶を終え、さて、家を造るか、と言おうと思っていたら、神通は言葉の弱々しさとは裏腹に、俺の体に穴が開きそうなほど、こちらを見ていた。

 

「あの、一つ気になっていたのですが、なぜ提督はシャツ一枚なのでしょうか。女児として、横乳が見えるのはどうかと思いますが」

 

「いや、男だから」

 

「え」

 

 川内と白露は盛大に笑い転げていた。

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