ボール遊びも終わり、川内と神通は木陰に戻ってくるものの、白露は依然として遊ぶ気があり、次は海に行こうなどと言っている。
「提督、あそこまで先に泳いだら勝ちね」
「いや、どこだよ」
「じゃあ、相手の足が見える位置まで速度が落ちたら負けね」
「俺、結構泳げたよ?」
「あたしが、一番だから!」
まぁ、泳ぐぐらいならいいかと思い、腰を上げる。
無論、この体で泳いだことなどないので、本当に泳げるかは些か疑問ではあるが、カナヅチでないことを祈るだけだ。
「位置について、よーい」
川内の合図とともに、海に駆け出す姿勢となる。
ここで、俺は勝負する気などないことを言っておかねばなるまい。
俺は水浴びがしたいだけだ。ただ、それに白露との勝負が重なっただけである。
別に勝とうが負けようがどうでもいいので、適当に泳ぐ。むしろ、早く終わらせることを重視している。
ただし、白露とてただ勝って喜ぶわけではなかろう。接戦に勝つことが目的なのだ。
故に俺は白露が満足できる程度に泳がせ、適度に負けることが要求される。
先に、俺は速い、と宣言しておいたことで、こちらが本気であるかのように見せることはできた。よって俺は最初は早く泳ぎ、島から少し離れたぐらいで負ければ良いのだ。
「ドン!」
「うおぉらぁあ!」
「えっ」
さて、これには必勝法がある。
早く終わらせることを目的とした俺は、初見殺しで勝つのが一番良い。
走りの時点で白露を追い抜き、先に海に飛び込む。これにより勝ちが確定する。
「もう一回、もう一回!」
「…で、勝ったらなんだっけ」
「そんなこと言ってないよ!?」
「ケチくさいこと言うなよ」
「大人げなっ」
ふむ、流石に駄目か。では、元のプランを実行するとしよう。
「じゃあ、先に海に浸かっておいて、合図で泳ぎだそうよ」
「まぁ、いいだろう」
ズブズブと海をかき分けて歩き、胸のあたりに水面が来るぐらいで止まる。
川内が仕切り直して合図を出し、それと同時に泳ぎ始める。まずは、潜水だ。泳ぐのはこれが一番速い。
「!」
胸が、胸があって泳ぎづらい…!
なんだこれは、邪魔すぎるではないか。水圧がすごい。
浮上、浮上。
海面に出ると、白露は頭一つ分後ろにいることが分かる。よし、接戦は作り出せた。後は少しずつ速度を下げて、時々上げればいいのだ。
よし、そろそろ島も見えづらくなってきたな。ラストスパートっぽいのをかけに行くとする。
そして、予定通り抜かされて、波も高くなってきたところで白露と俺は水面から顔を出している。
「いっちばーん!」
「あーあ、負けた負けた。速いなぁ」
「ふふーん!」
流石にここまで来ると疲れるので、波に揺られながら少し休憩する。
「ギッ」
やべっ、つった。足と胸をつった。あ、ヤバい。衣服が重い。ブラとシャツ、着てくるんじゃなかった。
「あー、提督、ちょっと待ってね」
「いや、待つとかモゴゴ、ぺっ、無理モゴゴ」
すると、白露は体ごと海の上に立ち、俺を引っ張り上げた。艤装を展開したのだ。
所謂、お姫様抱っこで運ばれ、島へと着き、まずは足を伸ばす。
よし、よし。足は慣れてきた。けど、胸ってどうやるのだろうか。何となく筋肉を伸ばしてみて、試行錯誤しているといい感じに治った。
「シャツはいいとして、ブラジャーの耐久力高いな」
「まぁ、艦娘用だし、砲撃とかでないと簡単には破れないよ」
運動するときは適度に体を温めてから入ろう!