童話の中にこんなものがある。
靴屋が休んでいると妖精がやってきて、靴を完成させてその後いなくなる、といった話だ。
もし、あの話が実話だったと言われたら、今の俺なら信じるだろう。なんと、部屋にダンボール3箱と赤いカーテンの窓があったのである。
「失礼しました」
俺は急な展開に驚き、ドアをそっと閉めた。
あれは、何なのだろうか。そこはかとなく遊び、先の尖った棒で魚を捕まえて帰ってくれば、無人島らしからぬ部屋があったのだ。
きっと、あれだ。疲れていたのだ。最近、変なタイミングで食べるものだから、体が疲れていたのだ。そうに違いない。
ガチャ、と音を立てて、またドアを開けると、中には先程と同じ部屋が広がっている。
「提督、白露が一番に入るんだよ?」
「あ、あぁ、分かっている」
また、そっ閉じをし、白露の方に振り返る。
そもそも、ドアすらまともになかったのに、なぜ、さも平然のようにドアを見ているのだろうか。
「白露、頬を引っ張ってくれないか」
「え?千切れるよ?」
「加減を知れ」
使い物にならない白露から目を逸らし、自分で頬をつねる。わぁ、ほっぺ、柔らかい。…じゃなかった。うん、痛い。
というか、10日も風呂に入ってないのに、男の俺より肌の質がいい。どういうことだ。
「提督ー、まだですかー」
「すぐ開ける」
まぁ、いいか。ていとくは、かんがえるのを、あきらめた。
どうせ、白露が先に入るのだから、俺に害はない。
「じゃ、入っていいぞ」
「いっちばーん!」
「失礼します」
「提督、ありがとねぇ」
最後に川内が入ったのを確認し、俺も入る。
やはり、部屋の中にはダンボールと窓があり、どちらもここでは手に入らないものだ。
窓枠に近づき、そこから外を見渡す。
いたって普通の風景だ。ダンボールの中身も確認するが、三つとも空箱だった。
『そういえば、提督は知らなかったね』
「妖精は知っているのか?」
『もちろんさ。これは、私の仲間がやったことだからね』
「仲間?」
『そう、名前は特注家具職人。それなりに数の少ない妖精だよ』
「そうなのか」
特注家具職人。名前からして家具に関することだ。ダンボールや窓を家具と呼ぶかは分からないが。いや、ダンボールは家具ではない。
まぁ、いいか。ダンボールは保温性があるため、多少の寒さには重宝する。だか、ここは南の島だ。あまり意味はない。
他にダンボールの使い道といえば、仕分けができるぐらいだろうか。
「…それくらいなら、ダンボールじゃなくて、紙とボールペンが欲しいところだな」
文字媒体の優秀さは、その機能が無くなることによって実感できるものだ。