友人との約束
ある防衛学校を去る時の、友人――θとの会話を思い出す。
あれはまだ、俺たちが若く、艦娘を知らないときだった。
―――
「俺は海自に行くが、θはどうするよ?」
「ん?あぁ、そうだな。陸自に行くことになっている」
「そか」
田舎から出て、一緒に防衛学校に入学した。ずっと一緒だった友人とも今日でお別れだ。また、既に偉くなっているζにも、そろそろ会えるだろう。
「全く、浪人はするものじゃないな。一歳差の奴に追いつかれてしまう」
「海外に行ってんだから、留年って言うんだぜ?」
「どっちでもいいが、俺は賢くなかったから仕方なかったのだ。対して、ηは頭も体もスペック高いからな。羨ましい限りだ」
「まぁ、イケメンは何でも出来るんだな、これが」
「顔については言ってないだろうに」
笑い合って、θを見やる。この束の間の休息が終われば、直ぐに訓練の毎日となる。
「まぁ、お互い、頑張っていこうや」
「今日は結構、普通もとい異様な喋り方をするのだな」
「…俺、普通にいいこと言ったと思うんだけど」
「いやなに、小粋なジョークだ。貴様が真面目なことを言うものだから、つい、な」
―――
そんなことがあってから約10年余。
俺はそれなりに階級も上がり、そろそろ結婚を考えねばいけない年になった。
そんなとき、この世界に激震が走った。
海から突如として現れた黒い何か。所謂、魚雷のような見た目をしたものや、人のなり損ないのような見た目までいる。種類としては多くないが、未知のものであることに変わりない。
最初の港への侵攻はζ少将が応戦していたが、対応はしきれていない。
それぞれ防衛のための道具を持ち、侵攻を止めようとしたが、勢いは止まらない。
絶望していたその時、ある一般人がこの港にやってきた。
巫女のような服に身を包み、金色の角のような物を頭につけ、その華奢な体格に見合わない大きな武器を操っている。
「フフフーン、ワタシが来たからには、もう大丈夫デース!英国からの帰国子女、金剛!ここに見参しまシタ!」
超弩級戦艦の火力、目に焼き付けるネー!という掛け声とともに、誰もが想像できなかった爆発を起こし、自分たちにとっては奇跡のような結果を作った。
「さあ、貴方方はここから離れ、港にいる人たちの安全の確保を!後はお姉様と私に任せて、大丈夫です」
気合、入れて、行きますっ。と元気よく駆け出し、先の彼女と同様に大きな武器を動かしている。
この場の光景に呆けていると、後ろから部隊長が話しかけて来た。
「お前らァ!いつまで、ボウっとしてるつもりだ!さっさと動けェ!」
部隊長の相変わらずの怒鳴り声と共に、皆が動き出す。
「まず、資料を配る。話を聞きながら目を通せ」
そう言って送られてくる資料に目を通す。そこには陸自の移動経路が書かれていた。
部隊長曰く、空と海が潰れたため、陸で一般人を輸送することになったらしい。そのため、海自も出来るだけ動員するようにしたらしい。
――――――――――――
―――――――――
あの黒い何かの数が減り、危険度が少なくなった。
そうすると、自衛隊の中にも多少弛んだ空気が流れ込み、今回の事件の噂話をする。
「あの物騒なもの持っていた娘、可愛かったよなぁ」
「何でも、キリサキとかいう人の娘なんだと」
キリサキ、知らない名だ。
兎も角、未知の武力を持つ者が現れ、自衛隊は疎か米国でも相手にならないという状況は、確実に世界中に一波乱が起きる。
もしかしたら、世界恐慌をも超える財政難に苛まれるかもしれないし、正義のヒーローに翻弄されるかもしれない。
ただ、確信を持って言えることは、戦争が起きるということだろう。
平和だの非武力行使だのを言っていられなくなった。実に…実に、楽しくなってきた。