あれから、一年が経った。
数の減らない深海棲艦と戦い、一度だけ訪れた赤色海域に数々の鎮守府が敗れた。
鬼級姫級といった深海棲艦には改造を施した艦娘でさえも苦戦する。まぁ、雷巡という切り札がいるにはいるが。
「提督、どうぞ」
そう言って赤城は珈琲と菓子を盆に乗せて運んできた。書類を端に寄せ、朝の頭にカフェインを取り込む。
今では、艦娘の数も増え、資源の継続的な保持のために遠征に出してみたり、空母率いる主力艦隊で海域を広げたりと、この一年でだいぶ仕事が軌道に乗ってきた。
そのため、艦娘というものも提督というものも、それなりに仕事として定着してきた。あと二年もすれば、慣れてくるだろう。
「?」
ふと赤城の方を見れば、菓子に目が釘付けになっているのがわかる。
「たべるかい?」
「いいんですか!?……いえ、やはり……やはり、いい…です」
断りつつも目は菓子から外れず、俺が食べようとして爪楊枝を摘むとより一層執着の念が伝わってくる。
「…食べるかい?」
「貰います」
赤城は爪楊枝で菓子――間宮の羊羹を一つ口に頬張り、とても美味しそうに食べる。
「別に、この執務室に菓子くらいなら持参しても構わない。むしろ、それで効率が良くなるなら万々歳でしょう」
「流石にそれは……勝手場があれば良いのですが…」
「ふむ、じゃあつけようか。台所」
「いえ、お気になさらなくても」
「丁度、自分で夜食等は作りたくてね。夜に、鳳翔や間宮に邪魔するのは悪いから」
「別に気にしないと思いますが…η提督がそう仰るなら」
仕事は優秀だし、空母のまとめ役を鳳翔と共に担っているし、これぐらいの報酬は与えてもいいだろう。
どうやら赤城は、食いしん坊なのが欠点と思っているらしいが、完璧な人物の少しの欠点は可愛いものだ。むしろ、長所といえる。
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「ηさーん。歌はどんな感じ☆?」
ノックもせずに執務室に入り、明るい部屋に星を飛ばしてくるのは那珂である。
「あぁ、要望には添えたと思いたい所存だよ」
「どれどれー……うーん、曲調が随分と大人しめだね☆那珂ちゃんはもっと楽しい歌を歌いたいけど、ηさん的にはどんな感じ☆」
「偶には視点を変えて、新規を増やしたくてね。赤城さんに頼んでみたんだ」
「やはり、私にはこういうのは出来ませんね。加賀さんはそういうのに精通していますので、頼られては如何ですか」
「むむ…ダメだよ。バッテンだよ、赤城さん☆もっと笑顔で自信を持たないと☆」
「え?」
「那珂ちゃんは、この歌、歌うから☆いいよね、ηさん☆」
「まぁ、いいんじゃ――」
「振り付け考えてくるー☆」
輝く星は部屋を去り、自室へと帰った。
ふと、ある資源スポットへの遠征をしている艦隊の時間を見ると…那珂は今頃遠征のはずだ。
「…赤城、那珂を呼び出してくれ」
「はい」
作詞作曲はη提督。