提督となって一年と数カ月。戦時中だというのに、恥ずかしながら、赤城を好きになってしまった。
まず、仕事ができる。
上司を立てられるし、書類捌きも上々、艦娘としても一流、仲間の特に空母の結束も固い。仲間の関係も良好という、これ以上ないほどの部下だ。
そして、美人で性格もいい。
艦娘全般に言えることだが、赤城はドストライクだ。普段の真面目な雰囲気も、弓を射る凛とした姿も、その後の気の抜けた表情も、一つ一つの所作も、全部がいい。もちろん、大食らいなところもだ。
褒めるべき点が兎に角多い。だから、理想像にとても近い女性だと意識してからというもの、この歳で青春の空気に触れてしまった。
「…報告します。深海棲艦の主力艦隊は壊滅。被害は球磨、北上、島風大破、雪風中破、加賀小破、赤城…轟沈です」
「…」
轟沈?おかしいな。戦略は完璧だったはずだ。なのに、なぜ…。きっと、聞き間違いだろう。
報告書に目を通すと、字はぼやけて黒くなっている。ほらな。こんなにも小さな字だから読み違えたのだ。ハハハ…ハァ。
「あ、あの。…どちらに行かれるのですか」
目に浮かぶ涙を拭き、木製のドアのところまで行きドアノブに手をかける。
工廠とだけ伝え、加賀に自由にしてよしと言う。工廠の道の間、すれ違う艦娘に若干引かれながら、せめて大の大人が泣き崩れないように、弱々しく足に力を入れる。
赤城が出た資源の量は覚えている。我ながら資源の量は潤沢な方だ。いや、むしろ、他の鎮守府に頭を下げてでも資源を調達しよう。
「あ、あの提督。そろそろ、資源が…」
「海域の攻略はしない。最低限、奴らを追い返すだけでいい。明石は中のところに行き、遠征班を3艦隊分組んで、遠征に向かわせろ」
「は、はい」
赤城以外の新規の艦娘はすべて解体し、装備も貯めていたものをすべて廃棄し、何回も建造する。
そろそろ、建造回数も1000回の大盤に乗ろうかというとき、ようやく我に返り、散乱した工廠を見渡す。
このηは結構理性的な人物だと自分で評していたが、自暴自棄になるぐらいには感情に流されやすいようだ。
もう止めようか。
ここで鎮守府が壊滅するより、長い間かけて赤城に会える機会が増えたほうがいい。…言ってみたものの、気休め程度にはなった。
「航空母艦、赤城です。空母機動艦隊を編成するなら、私におまかせくださいませ」
赤城…!やっと、やっと会えた。
いや、まずは、同じ赤城なのかを確かめよう。
「…赤城、君は、覚えているか。君は、艦載機に殺られたことを」
「え…はい、もちろんです。もう、慢心はいたしません」
ちゃんと覚えていた。同じ赤城だ。
そう思うと、どこか心のタカが外れ、思いの中に沈ませていた想いの丈が津波のように涙腺に溢れてきた。
「俺は、このηは、この名に誓って、もう君を沈ませたりしないっ。だから、どうか、ずっとそばにいてくれ。そして、守らせてくれ…ッ」
「それは…もちろんです。私は艦娘ですから、そばにはいます。だって、艦娘は提督に背中を預けていなければ、まともに戦えませんから」
「そうだ…そうだな。俺は、君を守る。だから頼ってほしい」
「はい。この赤城、命はη提督に預けます」