夜の海は真っ黒で目隠ししているような感覚がある。そういう場所だと考えることに集中できてしまう。
なぜ、俺は怒られたのか。なぜ、俺はここにいるのか。なぜ、俺は白露を助けようとしているのか。なぜ、俺はあの島につれてこられたのか。
考えるというと語弊を生んでしまうだろう。実際には考えてはおらず、ただ、醜く自分を追い詰めているだけである。そのことには気づかない。
爆発するような光が見えた気がした。その後花火のように遅れて音がやってきた。その一瞬の光で妖精らは判断したのだろうか。
『しらつゆさんが』『たいはしてる』『おれはおこったぞー』
白露の姿は見えないが、妖精達がそう言っているならそうなのだろう。ふとすると、目と鼻の先に白露の顔があった。
「て、提督?…なんで?」
来たのか。そう続く言葉が出る前に敵側の砲撃が始まる。俺は咄嗟のことに動けず、目を瞑った。
『ようせいさんがーど』『ようせいさんばりあ』『ひかりのせんしにやどりしそのたましいの…ヒデブッ』
「ガッフ」
狙いは正確で、不思議パワーのバリアをも容易く貫き、近くで爆発した。しかし、火傷もなければ、ただ飛ばされたような衝撃があっただけ。
「だ、大丈夫、かな…」
白露が庇っていた。見れば腕は一本なくなり、腹からは腸がたれている。今の衝撃で背中にもひどい傷ができ、血がたれている。
「白露、お前もう戻れよ」
俺としては気づかったつもりだった。同情や共感というものを断っていた俺が、気遣ったのだ。相当疲れていることが分かった。
「それは、てい…提督のためになれないから、かな。まだ、た、戦える。護れるよ」
だから逃げて、と押す手には力がなく。勝って守るではなく、囮になって守るということだろうか。それでは助けに来たのに本末転倒だろう。
「いや、俺は…」
本当にそうだろうか。本当に俺は助けに来たのだろうか。妖精に追い出されてそれを隠すために助けに来た、という口実ではないのだろうか。
「勝て、ないよ。…確かに勝てない。でも、あたしの任務は、…お国を護ること」
また、砲撃が始まった。しかし、全部外れていき、ダメージはない。
「提督、にげて」
白露に懇願される。きっと泣いてはいない。内臓が壊れたとき、泣くと痛くなる辛さは分かる。でも、ここで逃げることのできるほど、俺の肝は座ってはいない。
もっと打算的に考えろ。白露が逃げなければ、俺が逃げれる。俺が逃げた場合、その先に行き着くのはなんだ?孤独死か餓死だろうか。
白露が逃げた場合、俺はここに残ることになる。足が壊れてないところを見るに、回避をし続けたのだろうか。ならば、あの島までもそう長くはかかるまい。
あの島には「バケツ」がある。完全復活の後、助けてもらうことも可能だろう。問題は白露を逃がせるかどうかと、戻るまで生き残れるかどうかである。
「よし、白露、5分で行けるか?」
「島まで?お、往復ならもう少し…」
「分かった、未来のことは考えんなよ。過去か今だけ考えて、帰ってこい」
フラグ的な意味もあるが、単純に任されるときはこうした方がいい。心配が消えれば、行動は早くなるから。
「…」
無言で走っていく白露を見送ったあと、おそらく敵のいる方に体を向ける。
「さて、避けるか、死ぬかか」
『てきじょうほうかくてい』『じゅうじゅんです』『うそだぁ』
「重巡ってのは?」
『ちょーつよい』『やばいくらいつよい』『うそだどんどこどん』
えっまじで、あんだけ啖呵きっといていうのあれだけど
「白露、まじ早く帰ってきて」
『じゅうじゅんねきゅう』『きょりをあけろー』『なん…だと…』