死にたくない、というのは今までの自分本位な理由ではない。せっかく、白露――艦娘の方を向いて、歩み寄ろうと思えたのに、こんな呆気なく終わってしまう後悔によるものだ。
そして、空母というものは聞く限りでは間違いなく負ける。それは青妖精の発言からもわかることだ。
負ければ死がやってくる。最低限の文化的生活なんてものも有り得ない。
『提督…』
青妖精は何かを言おうとして、それでも言葉が出ずに押し黙ってしまった。
そうか……俺は心配されているのか。
心配されるということは、それだけ常軌を逸した言動をしているということだ。心を読める青妖精には、余計に多くのそういった言動を聞いているだろう。
俺は心配されるのは悪いことだと知っているため、俺が取るべき行動は、今のみっともない姿をどうにか取り繕うことだ。
だからといって、空元気にポジティブになるわけではない。勝てないものを勝てると言い、気合だ根性だと叱咤激励するのは自他に対して無責任だ。
じゃあ、どうするかというと、後悔しなければいい。
いつも、深海棲艦の襲撃はいきあたりばったりで何とかしてきた。その時には後悔していない。
ならば、同じ状況にすれば、心配されることも後悔することもない。つまり、今できることをする。
無論、そうすれば未来から目を背けられる、と言いたいわけではない。現在とその他とで正確に情報を区分けしているのだ。
そして、俺が今何をできるかというと、艦娘を指揮することができる。
しかし、俺一人では白露達が俺の言葉を聞くのには物足りない。
「妖精、俺は提督として、艦娘を勝たせたい。協力してくれないだろうか」
なるべく、他人に頼りたくないが、今回は青妖精に頼ることにしよう。
『…勝利条件を聞いておこうか』
おかしなことを聞くものだ。今までの俺の心を読んでいるなら、察しがつくだろう。だが、言葉にするというのも大事なことだ。
「全員生きて、朝日を拝む」
9日前の初めて深海棲艦と対峙した日、白露は、朝日を見れれば勝利だと、そう言っていた。水平線が広がるこの島なら、どこにいても朝日を迎えることができるだろう。
『うん。それなら、協力しよう。私も死んでほしいわけじゃあないからね』
よし、これで空母……おっとこれ以上を考えると、またループするからな。気をつけなければ。
取り敢えず白露達のところに行こう。そう思ったとき、白露達のところから鋭く乾いた音が響いた。い、いったい、な、何が起きたんだ…?