空に響いた音に焦燥感を募らせ、青妖精を連れて白露達のところに戻る。
そこに近づくに連れて川内の怒号が聞こえて、おそらく神通に対して怒っているのが分かる。
木々の間をのけて、そこに出てみれば、座り込んで川内を見上げている神通と、神通を怒る川内、そしてその修羅場にあたふたしている白露がいる。
状況的に川内が神通を叩いたのだろう。そう思って神通を見れば、少しだけ左頬が赤くなっている。
顔はだめだろ、顔は。と呟きつつ、白露にどういう状況なのかを説明してもらう。
「えっと、提督はちょっと分からないかもだけど、今からきっと深海棲艦の空母がやってくるから、それをどうするか話し合っていたら喧嘩になっちゃって…」
「なるほど…まぁ、分かった」
少し前の俺なら全く分からない状況だが、今の俺なら少しばかり分かっているつもりだ。
未だに怒っている川内に近づき、話しかける。
「Hey、センダーイ。ちょっとストップ」
「何、白つ、って提督じゃん。今、結構シリアスな雰囲気だったのに崩れちゃったじゃん」
こういう怒っている人には、雰囲気を読まずに話しかけるのが有効である。めっちゃ嫌われるけど。
「ね、提督はどっちが駄目だと思う?私は――」
「どっちも駄目だ」
食い気味に川内の話を区切り、自分の話しやすい場にする。正直、俺には戦略だの戦術だのはわからないので、どちらか片方を選ぶ事はできない。
それに、
「というか、姉妹喧嘩に他人を巻き込むなよ。家庭内のいざこざを他人に見せるなんて、みっともないって言われて終わりだぜ?」
家族内のものは家族内で処分し、他家の迷惑にならないようにする。これは基本だ。
「んで、何で駄目かって言うと、俺が提督だからだ。艦娘だけに考えさせて、出撃させるなんて、提督としてあってはならないことだからな」
白露に教わったことを言ってみたまでに過ぎない。けれど、普通なら、提督としての行動なんてしたことないのに提督を語るな、と言われるだろうが、白露、引いては艦娘の共通認識として、提督が自分達を管理する、というものがあるはずだ。
「ということで、まず、白露と川内と神通はそれぞれ分かれて島の3方向に向かってくれ。深海棲艦を見つけたら直ぐにここに戻り、俺に伝えること」
「…つまり、提督はこの状況で戦うって言うの?」
「そのとおりだ、白露。夜まで待って、夜になったら逃げよう。あくまでも怖いのは空母だ。そこをクリアすれば、あとは夜戦だ。それなら勝てるだろう?」
これは一つの賭けだ。川内が勝てると言うかどうか、そこに賭けている。しかし、ほぼ勝っていると言っても過言ではない。
多数決をしてまで夜戦をし、夜戦をしたいと日々言っている川内に拒否の選択はない。
「酷いね、提督は。けど、まぁ、分かったよ。やるだけやってみるさ」
そう言って川内は艤装を展開して、海に進んでいく。
やはり、川内は賢いな。俺の考えをお見通しのようだ。
白露はそんな川内を追いかけ、まだ方向言われてないけど大丈夫?などと言っている。
「さて、神通。いつまでも蹲ってないで、立ってくれ」
「…」
……さて、俺も気合入れるかぁ。
謎のツワモノ感