動き回るのは完全に妖精らに任せてる。俺の役目はあくまで的。囮ではなく的である。
囮とは逃げる逃がすの信頼関係があればできることで、誰かが戻ってくればその関係は信頼ではない。信頼関係とは期待外れでも落胆しなければしないほど強くなる。
その式が成り立つならば、俺は白露に勝手に期待をかけて勝手に落胆するだけである。だから、囮ではなく的である。
物理的なもので見ても、攻撃手段がなければ引きつけることもできず、囮にすらならない。しかし、的となれるのは、俺が相手にとって倒すものだからである。
海の上を大きく右回りに滑っていると、左から光と大きな音が立て続けに来た。しかし砲弾は俺が数秒前にいた場所に落ちる。
「なんであっちは俺の場所が分かるんだ?」
そう愚痴りたくもなる。なぜなら、見えるのはそこら中の闇だけ、相手の体が見えることなどない。もし、艦娘の目が人間と同じならば、なぜわかるのだろうか。
推量として1つ目は艦娘と同じように妖精に似たものがあること。2つ目は電探を積んでいること。最悪としては視認していること。
2隻が同時にいた数秒を見ていたなら、あくまで追いかけるのは死にかけのほうだろう。妖精を持っているならこちらも結構近づかないとわからなかったため、この距離でわかるとは思わない。
電探を積んでいた場合、2隻いた事はわかっても近くに攻撃する必要がある。電探がどのくらい情報を持てるかわからないため、推量でしかない。
「でも、」
でもきっと、ずっと俺の後ろを撃っているところを見るに、白露の速さでなれていると考えるべきだろう。これなら、再生可能な白露を利用すればどうにかでかるかもしれない。
白露は絶対轟沈させてはいけないが、逆に言えば相手の弾薬が尽きるまで耐えきれば轟沈させることはなくなる。そこからあとは簡単だ、この島に残る必要はなく、この艤装を使って出ていくだけである。
しかし、この世はそんなに甘くない。それをよく知っているのは俺自身だっただろう。
「あっ」
海面を滑る用の艤装に至近弾を受け、足が海面から浮き上がり26ノットで転げる。その速度で当たれば水面は固くなり、おそらく足と腕の骨が折れた。
まともに泳げない状態、浮くことだけでも精一杯の状態。止まってしまった的に当てることは難しくない。そして、最期の砲撃が響いた。
『ようせいさんがーど』『ようせいさんばりあ』『とまるんじゃねぇぞ…』
「――――」
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そろそろ5分経った。相手は中破でまともな攻撃ができない。ほぼカスダメのため、安心して動ける。重巡といえど、流石に勝てるだろうか。
「提督ー!」
そう言って近づいてくるのは白露だ。
「じゃ、逃げるよ!妖精さん、魚雷八本を扇状に投射ッ」
そして、最高速度で島に帰った。