「は、はは…」
これは、本当にスコールじゃないか。それも、とても強いものだ。
海は荒れに荒れ、風は強く雨粒が横殴りに襲い来る。これでは転覆の危険すらあるだろう。
この状況であれば、空母は置物と言ってもいい。残りは中破の軽巡へ級eliteを沈ませればいいだけだ。
しかし、その力は私には残っていない。
提督がこの雨を予期していたのは驚きだが、それでも、逃げてないのだとしたら、一手足りない。最初から逃げていれば、私らが犠牲にならなくても逃げれていたはずなのに…。
「川内姉さん!遅れてすみません!」
おかしいな。神通の声が聞こえる。
神通は責任感が強く、頑固だ。だから、私を助けに来るなどありえない。
そもそも、神通と提督だけを残したのは、神通がいれば逃げ切れると思ったからだ。提督は逃げることを選択すると、そう思ったからだ。
「姉さん!聞こえてますか!白露を連れてあの島に帰ってください!」
「それは!提督の指示!?」
一際強い風が吹き、発した音が宙で消える。全く、こうも風が強いと、まともに喋れない。
ふと、妖精さんの声が聞こえ、へ級に目を向ける。へ級はこちらに砲を向けて、発射する寸前――
「シッ――」
急旋回して左に回り、落ちた妖精さんを空中で掴みつつ、砲撃を避ける。
「違います!私が全体的に捉えて、一番間違いのない選択です!!」
何を言っているんだ。一番間違いがないのは、2分前に逃げる事だ。それが状況的に一番正しい。
「それに!手の届く位置は助けたいです!」
助ける?…そうか。助けるなんて言葉は、提督が使うはずがない。ということは、本当に神通が考えたのだろう。
けれど、妹の考え方は、大抵姉より深く考えていないのが常だ。
神通は私を助けたいと言っているが、助けることができないかもしれない。そんな力もないのに、強がって言っている。そうだったら、私がここで逃げて、良い未来など訪れないだろう。
けれども、優先順位を間違えてはいけない。一番上は国民、次に提督、次に私達だ。この場合、この状況で、最も正しいのは、何だ。
島には提督と、深海棲艦……がいる。
「ありがと、神通!ここは任せるよ!」
「はい!!」
マズいマズい。マズいマズいマズい。
やっぱ、神通は何も考えてない。深海棲艦は島にいるのに、護衛がいなくなってしまえば、提督が狙われるのは必然。
これを神通に説明していたら、時間がなくなってしまう。けれども、戦力にならねば意味がない。この2つを満たすには、白露を曳航する。これしかない。
「白露、引っ張るよ」
「あれ?川内さん?深海棲艦は?」
「それは後で」