「オヤ、ヒサシブリダネェ、シラツユ。フツカブリカナ」
いや、俺と会うのは10日振りぐらいである。
だが、俺を白露と言っていっているように、ネ級は俺を白露と見間違えている。
だったら、俺は白露と誤認させたままにしておこう。喋り方や仕草を白露に似せれば完成度は上がるはずだ。
「……話せるんですね。お茶でもどうですか」
「ハハハ、キンチョウデモシテイルノカ。ヘンナクチョウダネェ」
……似せるのって難しいな。もういいか、面倒くさいし。
「あの、その家……」
「アァ、コレ?ヨクモエルヨネェ。カンムスニシテハ、ヨクデキテイルヨネェ」
深海棲艦にしてはよく喋るなぁ。むしろ、話すのは初めてではないか?
しかも、あの夜には気づかなかったけど、結構女性の顔だし、サイドテールだし、随分と人間らしい。けれども、深海棲艦らしいところもあり、どちらにもなれなかったのか、それともどちらにもなったのか分からないが、どちらにせよ"生まれたて"な感じがある。
「よく、意思疎通なんて出来ますね。交渉しませんか?」
「ヘェ?カンムスノバカナアタマデ、コウショウナンテ、デキルノカ?」
やはり、多少上から目線で話しても、行動に対して興味があるあたり、とても子どもらしい。
「グギャ」
奇異な声を聞き、頭が一気に冷める。そういえば、ロ級から逃げ回っていたではないか。なら、ネ級と話している時間はない。
「シラツユ。ナニヲソンナニコワガッテイルノダ?ソイツナラカンタンニ……アァ、ギソウガナイノカ。ナラ」
凄まじい風圧と共に焼けるような炎が飛び出し、俺の横を過ぎ去る。
後ろに振り向けば、半分が消失してしまったロ級が光となって空に向かっているのが分かる。
「同士…討ち…!」
「ナカマジャナイサァ。ニンゲンデイウ、カチクテイドノヤツダカラナ」
……食うのか?
いや、まぁ、違うだろう。光を食べるとか、深海棲艦の雰囲気に合わないし、そもそも触れそうなものじゃないし。
「ナァ、シラツユ。ハナセルッテイイナァ」
「そうですね。随分と人間的な進歩だと思いますよ」
「アァ、ソノトオリダ。ココロッテイウモノヲモツノハ、ニンゲンシカイナイ。ダカラ、ワタシハココロヲテニイレタ」
「はぁ?」
曖昧な返事をする。
まぁ、言語野って人間しか持たないらしいし、あながち間違いではないのかもしれない。
「コレガナニカワカルカナ?」
そう言って二股の尻尾に置いて見せるのは、一匹のキモい鳥みたいなものだ。
「偵察機?」
「オシイ。コレハ、カンサイキダガ、テイサツキデハナクコウゲキキダ」
徐ろに二股の尾を伸ばし、キモい鳥を数十羽解き放った。
「ゼツボウノジカンダ、シラツユゥ!」