ネ級は地面に這いつくばり、泥を被りながら怨めしそうにこちらを見上げた。
「クチクカンノクセニ、ワタシヲナンドモ、ナンドモ、フミニジリヤガッテ…!シズメェ!」
叫びとともに、二股の尾がウネウネと動き、砲を縦横無尽に発射する。所謂、乱射というものだ。
木に坑が空き、焼き崩れる家は尚の事燃え、地面は抉れる。このままでは俺にあたってしまうのも、そう遅くはないだろう。
けれど、銃というのには砲身がある。
砲身より中に入ってしまえば、攻撃が当たることはない。
蛇を掴むときは、首を抑えるのがいいように、武器は持ち手の部分が一番弱い。そのため、ネ級のすぐそばにいた俺は、もう少し近づけば当たることはないだろう。
「……キタァッ!」
「ぅ、オゴォ!」
尻尾の部分というのは、見ての通り身体よりも太く、それこそ丸太で叩かれるような痛みがあるだろう。
尻尾は弧を描くように俺にぶち当たり、俺は燃えている家を通り越し、更に高い丘の端まで転がった。
「ゥあぁ……ぁ」
高く吹き飛ばされたため、頭から落ちるのは必然だった。そのため、どうにかして頭を守ろうと、後頭部に両手を添え、腹筋を使って頭を上にしようと試みるも、ほぼ水平に落下した。
めちゃくちゃ背中が痛い。踵も痛い。腰も痛い。けど、頭は守りきったと評価している。
「フフ……カンムストイエド、ギソウヲツケナケレバ、コンナモノカ」
力の入らない体の首を掴み、ネ級は易易と俺を持ち上げる。
苦しい。息がしづらい。離せ。ホント、マジで!
「ソウアバレルナ。マルデ、ニンゲンノヨウ……ウン?」
そう言って、ネ級は俺の体を宙に浮かしたまま、割と女性的で綺麗な造形をしている顔に近づける。
形のいい小さい鼻を使いスンスンと俺の匂いを嗅いだかと思えば、俺の顔を両手で掴み自分に引き寄せ接吻した。
は?何?え、ちょ、本当に待って。百合ですか!?え、明らかに百合展開だよね?でもなぁ、中身が男だし、百合っていうのは見るときが尊いものだからなぁ。
「!」
ネ級はキスでは飽き足らず、舌まで口の中に入れてきた。え、何?本当にそういう感じ?
いや違う。ネ級が舌と共に入れてきた丸っこいものがある。おそらく、狙いはこの異物だ。
ネ級は口を離し、俺の拘束を解いた。
「オエ…」
俺は泥だらけの地面に手を付き、ネ級に喰わされたものを吐き出す。
形を見ると、白露たちの食べていた弾丸に似ていることが分かる。
「ヤハリ、オマエハニンゲンカ。ナラ、コレイジョウハナスヒツヨウモナイ。シズ……イヤ、シネ」
まだ、死ぬわけにはいかない。動け、俺の体。
ヨロヨロと足を動かし、頼りない足取りで走る。
ネ級の顔を見れば、そんな俺が滑稽なのか、笑いに笑っている。そんな顔ができるのも、今のうちだけだ。
今の俺でもやろうと思えば一息で崖の端まで行けるギリギリのラインを踏むと、今までの頼りない足取りを止め、ほぼほぼ四足歩行のように走る。
崖の下は海だ。運が良ければ死なない。
死ななければ、海を潜ってネ級に攻撃されないようにできる。100%死ぬよりかは、ある程度死ぬ確率が少ない方を選ぶべきだ。
そうして俺は、崖から身を放り出したのだった。