取り敢えず、目前の危機は去り、嵐も落ち着いてきた頃、朱色に染まる空を背後に神通達は帰ってきた。そう、神通"達"は、帰ってきたのだ。
「あの、大破と中破の艦娘が海に浮いていて、連れてきたのですけど、宜しかったでしょうか…?」
「どうだろうな。俺には分からん」
川内に目を向けてみれば、まぁいいんじゃない、とのことだった。
その艦娘の見た目は、大破してる方が魔女っぽいフードを被っていて、中破の方がリアル小学生の見た目だ。というか、中破してる方は艦娘じゃないんじゃ…?
そして、川内達とこの艦娘達をどうするかと話し合っていると、森の方から艤装をつけた白露が出てきた。
「あ、白露、どこ行ってたんだよ」
「ちょっと、鎮守府に用があってね。後、妖精さん達が燃えないように避難させてたり、色々」
おお…意外とまともな理由だ。
俺としては白露がばったりネ級と会敵してしまったらいけないと思い、そろそろ探しに行こうかと思い始めていたのだ。うん。決して、忘れていたとかじゃない。
「でも、提督。あたし、ちょっと怒ってるよ」
「え」
自覚ないんだけど。むしろ、怒られることなんてしていただろうか。
白露はズカズカと俺に近寄り、明らかに怒気を孕んだ言葉を放つ。
「提督、何回も言ってるよね?提督は艦娘が護る人だって。それなのに、何で提督がネ級の相手をするのかな。しかも、崖から落っこちるし……あたしがネ級から提督を護ろうと思って丘を登ってたら提督が落ちるんだから、本当にびっくりしたんだよ?」
あー、はいはい。心配、優しさの押し付けね。
そういうのは、見返りを求めないで自分勝手に思うから美徳なのであって、心配してると発言するのは本来はあってはならないものだ。
だからこそ、心配を押し付けるのはそういうところを理解してなくてムカつくが、押し付けがましいと言うと怒られることを俺は知っている。
よって、俺の行動を正当化するならば、
「俺は一応提督という立場にいて艦娘を統率しているが、この場所において提督というのは艦娘と対等な立場だ。だから、価値は同等だから、白露が死にかけるか俺が死にかけるかの違いで、そこに差異は存在しない」
実際そのとおりだ。白露が死んだとして、きっと俺はすぐに死ぬだろう。だって、戦力が減るのだから。
じゃあ、俺が死んだとして、白露はどうだろうか。きっとすぐに死ぬだろう。だって統率者がいないのだから。
全員がほぼ同じく死ぬのだから、価値は同じだ。だったら、ネ級が相当恨んでいる白露に戦わせるわけにはいかない。もし、俺が白露の場所を知っていたとしても、俺は同じ判断をするだろう。
「そう……だけどっ。提督はもっと、もっとさ、感情的になりなよ!もっと…理論とか価値とか難しいこと言わないで、体を大事にしてよ!」
「理論は大切だし、感情に従順だと自負もしている」
「そうじゃなくて…!もう、提督、大っ嫌い!」
非常に子どもらしく癇癪を起こし、平手打ちを俺の頬に叩き込む。
俺はリアクションを取ることもできずに、人智を超える馬力によって打ち出されたビンタを無防備に受け、海の上を数回ほど跳ねながら錐揉み回転で吹っ飛んだ。
脳震盪がヤバい。方向は分からない。けれど、首は繋がっている。
海に沈みながら吐瀉物を吐き出し、鞭打ちになった首を動かせずに段々と意識が遠のいていった。
ギャクじゃないです。シリアスです。