まぁ、ウダウダ考えていても仕方ないか。
そう考えて俺は、よく分からないことから目を逸らすことにした。
そもそも今は夜である。正確に言えば夕刻も終わる頃だ。この時間帯は寝る時間である。俺は良い子だからな。これを現実逃避といいます。
さあて、寝るか。と意気込んで家に行こうとするが、家が焼けたことを思い出し、思い止まる。
家がない。つまり、寝る場所がない。拠って、寝れない。いや、それはおかしいか。砂浜にでも寝転べばいい話だ。上着でも敷いておけば問題ないだろう。
「と、いうことで俺は寝る。お休み」
「ぇ、あの、ちょ、ちょっと待ってください。司令官!この朝潮、意見を伺って宜しいでしょうか!」
「や、別に、そんなに畏まらなくても……。まぁ、どぞ」
「近海の哨戒や遠征は行わないのでしょうか!」
「必要ないかなぁ」
「その理由を伺っても…?!」
何だったか。前に白露にも聞かれたことがあった気がする。そのときは、なんと答えていただろうか。確か…
「えと、ここは結構激戦区らしくて、よく深海棲艦が出没するらしい。そして、俺よりちゃんとした軍人が戦っていてもその深海棲艦が倒せないのなら、俺たちが戦ったところで負けるのは必然だ。だったら、下手に刺激しないようにするしかない、からだな」
まぁ、何回も撃退はしているため、若干その論が怪しくはある。だが、面倒くさいものと関わるのは面倒くさいので、なるべく関わらないようにするのは良い判断だと思う。
「意見具申、宜しいでしょうか!」
「え、あはい」
「ここは別に激戦区ではありません!この前の中規模作戦により深海棲艦の進行を止め、更には海域奪取もできました!」
「えっ」
あ、マジで?あれ、そういう感じのあれだったのか。
ということは、俺もとい川内が活躍していれば、それなりに俺も知られている可能性あり?
いや、まぁ、ないか。そもそも川内は低練度なので、球磨きならぬ装備磨きでもしていたのではなかろうか。無名の者が第一線に放り出されるなど、ないだろう。そこまで切羽詰まっているのなら、日本じゃなくて内陸の国にでも向かおう。
「なので、近海の警備も兼ねて近くに通りかかる艦娘を探すべきではないのでしょうか!?」
朝潮がズズイッと近づいてきたので、少し後ろに下がる。まさか、ネ級を前にしても退かなかった俺が、無意識に後退りしてしまうとは……中々やるな。まぁ、動いたら12cmたんそー砲が当たるため、動くに動けなかったのだが。
さて、真面目に考えよう。
朝潮がこの意見を言った理由はおそらく、同じ鎮守府の仲間を早く探したいからだろう。どこぞの名探偵のように見た目は子ども、頭脳は大人でもなければ、こういう状況は子どもには辛いはずだ。
発狂とか乱暴とかしていないだけ楽だ。だからといって、それらをしないという保証はない。なるべくこの均衡を保つ努力はすべきだろう。
そして、保つのに手っ取り早いのが、朝潮の意見を認める事だが、それはこちら側がマズい。
もし、朝潮を轟沈させてしまえば、δ提督とやらに悪印象を抱かれ、最悪こちらの一隻を渡さなければならないかもしれない。それだけは避けるべきだ。
よって、この両方を解決する方法は、白露達に探してもらうことである。しかし、それは個人的に嫌だ。
なので、明日考えることにする。
「よし、それは明日考えるから、今日は寝よう」
「いえ、それでは深海棲艦が…」
「問題ないだろう、たぶん。さっき、帰ったばかりだし」
「そう、ですか…?」
一応、納得したようなので、俺は上着を脱ぐ……って、着てないし。どこやったっけ?えーと、最後に見たのは…家?じゃあ、家に行……燃えてんじゃん。え?上着燃えた?むしろ、ズボンも燃えたくね?流石に、黒シャツと黒パンのみで過ごすのは、無法地帯過ぎませんかね。