R1の本名が龍城丸と分かった今、俺のやるべきことは、
「ちょっと、丘の方に行ってくる」
「え、あの、ちょっと待ってください!」
え?俺は今から家に行って、焼失してないものを探したいのだが……。
俺に待ったをかけた朝潮の手には水入りの500mlペットボトルが握られていた。
「これ、飲みませんか?」
「あぁ……いや、後で、な。すぐ戻るし」
そう言って、丘に行こうとすると、万力のような力で腕が握られた。痛い。
「え、えと、朝潮ちゃん?」
「これ、飲んでください」
ええ…面倒くさ。
「いや、それ海水でしょ?そうじゃないとしても、ここらへんに転がってたなら不衛生じゃないかなぁ」
「いえ、抜かりありません!未開封の飲料水です!」
まぁ、いいか。別に飲むだけだ。大したことではない。
俺が手を差し出すと、朝潮はペットボトルの蓋を開けて俺に手渡した。
俺は朝の乾いた喉にその水を流し込み、だいたい4分の1ぐらいでいったん口を離す。
「よし、朝潮ちゃん、飲んだから行ってくる」
「は、はい」
朝潮と別れ、森をすり抜け丘を登り、焼け崩れている家の前に来た。まずは中がどうなっているのか見たいので窓から中を見る。
不幸中の幸いというか、家の中には殆ど何も入れていなかったので、足の踏み場もないほどではない。ただ、二階が崩れて一階に落ちているので、足を怪我しないよう細心の注意を払うべきだろう。
ボロボロになっている壁を無理矢理破り、部屋の中に入る。すると、部屋の片隅に白く目立つ布上のものがあった。提督服である。
「すげぇなこれ。焼けないのか」
多少炭がついているものの、破れた箇所は見つからず服としての機能は果たしている。
「うっ……」
何の前触れもなく、突如として睡魔が襲ってきた。だんだんと瞼が重くなり、立っている状態が維持できず横たわる。
何でこんな眠いのか。おそらくはこの部屋に理由がある。
この部屋は焼けて一日も経っていない。焼けるのには酸素が必要だ。この2点を組み合わせると、酸素の少ない部屋だということだ。
これと睡魔との因果関係は酸欠である。俺は酸欠になり眠くなった。
そうだとすると、この状況は芳しくない。早く、外に出なければ……
俺はそこで意識を手放した。
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急に意識が覚醒し、目を開け周りを見渡す。
白い長机に白い椅子。窓には遮光性の高いカーテンがかかっており、若干暗めの雰囲気を醸し出している。
俺の体は椅子に縛り付けてあり、手と足は動かせない。というか、何処も動かせない。
「目を覚ましたかね。少尉」
後ろから声をかけられるが、首も動かせないため誰が言っているのか分からない。猿轡もされているため、声も出せない。
取り敢えず、体を揺らしてみようとするものの、椅子が軋むだけだ。
「そう、警戒しなくてもいい。ほら、これも外そう」
そう言うと、俺の口から猿轡を取り、俺を喋れる状態にする。
「……そう言う貴方は警戒しまくっているようですが?」
俺が嫌味も込めて言ってみると、笑って誤魔化された。
まず、この状況は何なのだろうか。話している相手は男性だと分かるが、具体的に誰なのかは分からない。
「俺には、貴方のような知り合いはいないんですけど、どなたかとお間違いじゃないでしょうか」
「いやいや、間違ってないさ。私はただ、君を日本に送りたいと思っている者だよ」