え、マジか。いい人じゃん!……って、なるはずもないんだよなぁ。拘束されてるのに信頼するのはあり得ない。
おそらく、この男の言うことには裏があると考えられる。きっと、俺を捕らえることによって、この男にいい影響を及ぼすのだろう。
だとすると、俺が考えるべきは、俺への影響だ。いい影響か、はたまた悪い影響か。もし、被害が及ぶのであれば、それは避けなければならない。逆に、いい影響、若しくは今までと変化がないのなら、この男についていくべきだろう。
とはいえ、今この状況において、拘束されているのは事実。助けを呼ぶのには十分すぎる理由だ。
だから、助けを呼ぶ、では考えが足りない。この男が猿轡を外したということは、猿轡を外しても問題がないという事だ。つまり、周りに人がいないか、ここが防音なのか、のどちらかである。
故に、騒ぐのは非効率的である。つまり、助けに期待はできない。
「さて、では、少尉を無事に送り届けるために話し合いをしようか」
話し合い…ね。
おそらく、というか絶対にこの対話は対等には行われない。それは自分の状況を鑑みればすぐに出る結論である。
だから、俺は自分だけの利益のために話すべきではない。あくまで、相手の利益を考えた上で、うまく自分の利益に繋げる。現状、できる話し方はこれが限界だ。
とはいえこれは、この男の言う事に適当に相槌を打っていれば達成される。途中途中に、彼の逆燐に触れないように意見すればいいだろう。
「まず、君は基本的に、そこにいるだけでいい。あとは全て、こちらが上手くやる」
「はい」
終わったじゃん。話し合い終わったじゃん。え?流石にもう少しさぁ、何かあるじゃん?
「えと、えー。俺はその後、どうなるんですか?」
「私の頼れる者に一時的に身を寄せてもらい、その後は晴れて自由の身となる。このまま海軍に携わるもよし、社会に出るのもよし。君の欲するままに生きられる。無論、こうして海軍に無理矢理関わらせてしまったから、支援はさせてもらう」
うわっ、怖。いや、マジで怖い。
この男、取らぬ狸の皮算用のような言い回しをする。
おそらく、言っていることは事実だ。けれども、例えば、彼の頼れる者に身を寄せるらしいが、そこで自由だとは言っていない。その後の自由は保証されていても、その時の自由は保証されていないのだ。
これに関しては少し警戒しないといけないかもしれない。
「支援というのは、口止め料ですか?」
「ハハハ、包み隠さず言えばそうなるね」
俺の百八の必殺技のうちの一つ、バカなフリ。
これは、誰でも気づくようなことを勿体ぶって言うことにより、俺はこのぐらいのバカだと相手に錯覚させることができる。
これにより、この男の隠したいポイント――今回で言えば、自由に関して、俺は全く気づいていないと思わせることが可能だ。
この選択が吉と出るか凶と出るかは、俺の行動にかかっている。
「では、了承を得たということでいいかね?」
「はい」
主語言わないあたり、厭らしい言い方だ。でも、俺もそのおかげで返事ができた。だって、俺が今、了承したのは、支援を受け取ることだけだ。屁理屈?そんなもの知らないですね。