何かアレだ。言う事言ったら、冷静になってしまった。冷静になると、それはもう色々とやらかしたなと、思います。はい。
まず、普通に考えて、朝潮は助けるためにここに来てんじゃん?即ち、助けてるんじゃね?ということだ。いや、もう、支離滅裂過ぎてヤバい。ホントに恥ずかしい。
けれど、朝潮は何を思ったのか、なるほどぉ!とやる気に満ちている。それでいいのか、朝潮よ。
「司令官、ではこの朝潮はどうすればよいのですか!?」
泣き腫らした目を拭い、頬に涙の跡を残しながら詰問してきた。いや、冷静に考えたら無理難題過ぎて、具体例は思いつかない。
「そうだな。その妹を連れて、逃亡でもすればいいんじゃないか?」
「逃亡したあとは?」
「きっと、孤児院に入れられるだろうな。そこで成長して…」
「艦娘に成長はありません。それに、人権だってありません」
ええ…?日本の法律って機能してなさすぎでは?
いや、まぁ、致し方ないか。死ぬ前の情報ですら、艦娘は噂だったのだ。法律などに艦娘が乗っていたら、法学部の連中から情報がだだ漏れである。
「あ〜、じゃあ、他の鎮守府に行くとかは?」
「δ少将がすぐに見つけるでしょう」
そうだろうか。
なんとなく、少将という階級になってくると、色々と裏で闇取引だったり殺人だったりしていて、君は知りすぎたと言いながらブルジョワな酒を嗜んでいるイメージだ。
だから、色々なところから反感を買っていて、事あるごとに少将という階級から落とそうと策を練る人が多い。その人のところに行けば、少なくとも好待遇を受けることができると思う。
「そうかぁ。じゃあ何も思いつかないな」
「司令官……見損ないました」
いや、まあそうだろうね。
あれだけ啖呵切っといて、現実味を帯びた方法がないのだ。
ようは気持ちの問題!と、言うのは簡単であるが、それは流石に考えを放棄しすぎている。
「けど、朝潮、勇気をもらったので、大丈夫です!」
えぇ…何この子。この状況で冗談とか言えるの?
何か後ろの窓からいい感じに光が差し込んでいたり、先程まで無かった風が吹いてカーテンが捲れたりして、カッコいいんだけどね?普通に考えて、絶望的な状況でここまでポジティブにはならんでしょ。
少なくとも、家族を大事に思っているならば、勇気を貰えば大丈夫だと言えない。それこそ、先の朝潮のように泣きじゃくって半狂乱になる方が正当である。
でも、俺がそこまで口を出せるわけじゃない。
怒って視野が狭くなって、価値観を押し付けて経験を否定していた俺では今はない。今の俺は割と冷静で、この場に相応しい言葉を投げかけられる。
「勇気で人が救えたら……まぁ、アンパンの顔のヒーロー等は置いといて、基本的に勇気で何かできるわけじゃないだろ。行動を起こすことは出来ても、行動が決まってないんじゃ――」
「ここ4日で理解しましたが、司令官って純粋に捻くれてますよね」
今までの他人行儀が嘘みたいな言葉を投げかけられる。え、4日?
はてなマークを頭に3つほど浮かべていると、朝潮は徐ろに耳に人差し指を押しあて、
「通信機を傍受してみました」
「え、いつ?」
「そうですね、時期はβ司令官……いえ、今は違いますね。その人と、ある研究所の話……結果的に、捕まった頃、若しくは、神通さんがドロップする前と言えば分かるでしょうか」
それは、もしかして、2つ目の通信機のことでしょうか。あれはポケットにしまってあった気がするけど……ってそんなことはどうでもいい。
えっと、え?そんなに前から俺はこの船に乗る予定だったの?
「あ、ついでに白状しますと、司令官が急に倒れたのは朝潮が原因です。ペットボトルに睡眠薬入れたんですけど、結構時間が掛かって驚きました」
驚きました、じゃねぇよ。え、この娘、怖っ。形振りなさすぎてヤバいんですけど。