いや、ね?いい天気ですね、と言われたら、会話下手かってなるじゃん。ネタだとしても、ほぼ初対面でそれはないだろう。
「……というかさ。今更だし、迷惑かも知んないけど、ちゃんと栄養摂ってる?流石に体が細すぎるし、それに体臭も酷いことになってるよ」
「あー、そうだよな」
急に真面目な顔をして何をいうかと思えば、そのことか。
実際、俺も栄養どころか霞すら食えないような状態だったから、健康的な細さではなく不健康な細さであると実感している。体臭に関しては言わずもがな。
「悪いな。ちょっとそういうのが出来づらい場所にいたんだ」
「おおっ。なんか、軍人っぽい」
軍人?俺が?いや、ないない。
どこでそう判断したのか分からないが、俺は一般人だ。TS娘が一般人かと言われるとそうではないが、一般人である。
「でもさ、あ、話変わるんだけど、TSして美少女ライフを満喫できないって、どうなん?」
辛いだけですが、何か?
いや、楽しい部分もあったよ、一応。でも、TSの関係しないところで色々あり過ぎて、TSは関係ないと思わなくもない。
だが、それは置いといて、もしかするとこの中佐、話の分かる人かもしれない。
「だよな。俺も満喫したいのにさぁ、やけに現実的なんだよ。TSってのは現実を度外視して遊びまくるのが楽しいのに、なんで現実味を帯びるかなぁ」
「分かる。TSはあくまで二次元よね」
やはり、こいつッ、話のわかる奴だ…!
俺はトイレで洗ったばかりの右手を差し出し、無意識に握手を求めた。中佐もそれに気づいたのか、フッと言いながら左手を額に当て右手を差し出した……。
「ちょっと待って、その手結構汚いんじゃ……?」
「さっき洗ったばかり」
仕切り直して右手を重ね、軽く握手をする。
ズキュュューン(ただの握手)
――――――――――――
―――――――――
「……ご主人様、何やってるんですカ」
「いや、その……」
今、ピンク髪の小さな艦娘に叱られている。
俺と中佐は船の前でプチパーティを開き、ポテチやジュースを散乱させ乗り場を汚してしまった。
それというのも、ここは風が強く、海に菓子が落ちたり、ペットボトルが飛んだりするため、ゴミの収集がし難くなったのだ。
「まぁ、海に落ちたゴミは漣が集めるとして、陸のものは片付けてくださいネ」
「はい。申し訳なく思ってま〜す」
「はぁ」
漣は額に手を当てて、大きくため息をつく。
しかし、漣ってこんな性格だっただろうか。大して話したこともないが、もっとはっちゃけた艦娘だったはずだ。
「それで、確か貴方は、二回目ですネ。久しぶりです」
「え?あ、はい」
二回目?三回目じゃなかったか?
一回目はα中尉と叢雲を探しに来て、二回目は二個目の通信機を貰うときに会った。三回目は今回である。
「というか、漣ってα中尉の艦娘じゃなかったか?」
「今はα大尉ですけど、漣はご主人様の艦娘ですヨ」
「そうそう、ザーナミはウチの艦娘」
ザーナミって漣のことか。分かるわけがない。
「それより、ご主人様が迷惑をかけませんでしたカ?」
「いや、全然」
「そうですカ。良かったです。ぁ、よかったら水しかありませんが、浴びますカ?少しは身も引き締まると思いますヨ」
おお、ありがたい。流石にこの体臭は一日では抜けないと思うが、少しでもサッパリしておきたい。
「ありがと」
「では、案内します。ご主人様はゴミを片付けといてください」
「ねえ、私の扱い酷くない?ねぇ?」
「後で大型建造させてあげます」
「ワーイ、ヤッター」
では行きましょう、と言われ、その小さな背中についていく。
この二人、仲いいな。
これは一次元だからセーフ